マレーシアには「サトゥ・マレーシア 」というスローガンがあります。直訳すると「マレーシアをひとつに」という意味になります。
マレーシアは多民族国家のため多くの文化が存在します。このスローガンには、それぞれの文化を大切にしながらも、国として融合しようという意味合いが込められているようです。
そんなスローガンに関係なく、マレーシアには国民の心をひとつにしてしまうスポーツがあります。
バトミントンです。バトミントンは民族の違いに関係なくマレーシアで愛されるスポーツです。
大人も子どもも大好きなバトミントンについてご紹介します。
民族によって好きなスポーツが異なるマレーシア
日本にも野球好き、サッカー好きの人が多いという国民性があります(私自身、海外に出て初めて、「野球好き」というのは特殊な国民性であることに気づきました)。マレーシアでも民族によって好きなスポーツが異なります。
もともとマレーシアはマレー民族、中国系民族、インド系民族の3大民族に加え、原住民、移住民などで構成される多民族国家です。そのため、食べ物を始め、暮らしそのものの文化が異なります。
そうなるともちろん、民族によって好きなスポーツが偏っても不思議ではありません。
サッカーが好きなマレー民族
例えば、多くのマレー民族はサッカーが大好きです。マレー民族が固まって住んでいるエリアにある公園には、必ずと言っていいほどサッカーグランドがあります。
しかも、結構立派で本格的。大きなグランドがある場合が少なくありません。そんなグランドでは夕方近くになり、涼しくなると、若者や子どもたちが楽しそうにサッカーをしている姿を見かけます。
ローカルが集まるカフェ(ミノムショップやママッショップなどとも言います)に行くと、サッカー中継が放送されていることも珍しくありません。大きな試合になると、大画面でサッカー中継を見る為だけのために客が集まって来るという光景もよく見かけます。
上の写真は、空港のフードコート内でとった写真ですが、ここでもサッカー中継が放送されていました。マレー民族のサッカー好きをうかがうことができた瞬間です。
バスケットが好きな中国系民族
中国系の若者は、バスケットが好きです。中国系の人が固まって住んでいるエリアの公園にはバスケットコートが必ずと言っていいほど備え付けられています。
バスケットコートにはやはり、中国系の若者が集まり、バスケットをしています。普通の子でも意外と上手いので驚きます。
マレーシア国民全体にしめる中国系民族の割合は、25%だと言われています。そのためか、カフェなどでバスケットの試合中継が放送されているのを見かけたことはあまりありません。
公園を見ただけで地域性がわかる?
この地域性の違いはあまりにもはっきりしている為、公園を見ただけで、ここはマレー系が多く住むのか、中国系が多く住むのかを見分けることができます。これほどまでに分かれるのか、と興味深く感じます。
ちなみにマレーシアでは野球ができる公園を見かけたことは一度もありません。そのため野球グラウンドがあるというのも、日本の国民性だということがわかりました。
バトミントンは別格!
これほどまでにはっきりとスポーツの好き嫌いが分かれている中で、なぜか「バトミントン」だけは別格です。大人も子どもも性別も関係なく、多くの人に愛されるスポーツなんです。
どうしてバトミントンがここまでに愛されているのかは分かりません。バトミントンはインド人によってペナン島に持ち込まれ、瞬く間にマレーシア中に広がったと言われています。
今では世界ランキング1位になったことがある選手がいる(現在は2位)など、世界でもトップクラスの選手が存在するほどになっています。
オリンピックで盛り上がるのはバトミントンだけ?
日本ではオリンピックシーズンになると、どことなくみんなそわそわしてきて、開催を楽しみにしています。メディアでも大きく騒がれ、盛り上がりを見せます。
でもマレーシアではオリンピックシーズンになってもほとんど盛り上がりを見せません。冬季オリンピックに至っては、その存在を知らない人もいるほどです。
このように、マレーシア人はオリンピックに対してクールな反応を見せるのですが、バトミントンだけは別格! バトミントンの試合だけは、どこに行っても放送され、話題になります。
そして「バトミントンの試合が終わればオリンピックは終わり!」というムードになります。これは私がマレーシアに来て驚いたことのひとつです。
スポーツ用品店では、バトミントン製品が充実!
マレーシアのスポーツ用品店では、手に入るものが限られています。クアラルンプールほどの都会に行けばある程度のものは手に入るのですが、少し離れた場所に行くと、良質のものが手に入りにくいことがあります。
そんな中でもバトミントン用品だけは別格! スポーツ用品店の半分以上をバトミントン製品が占めているのではないかと思われるほどに、充実度が半端ありません。
ラケットやシューズなど本当に色々なものが手に入ります。日本で買うよりよっぽど買いやすいのではないかと思うほどです。
大体どこにでもバトミントンコートがある!
このようにバトミントンは、マレーシア人ならどんな人でも楽しむスポーツなので、住宅街やコンドミニアムの中にバトミントンコートが整備されています。
何人かの仲の良いグループでバトミントンコートを借り切って、思い思いにプレーします。
この時、興味深いのが、違う民族が入り混じってプレーしている光景を見かけるということです。大抵、マレーシアでは民族ごとに固まって行動しているのを見ることが多いのですが、バトミントンではマレー系、中国系、インド系の人が同じコートでプレーしている様子を目撃することがあります。
これはマレーシアでは珍しいことだと思います。それほどにみんなの心をつひとつにしてしまうスポーツだということです。
主婦や子どもを侮るなかれ!
私も地元の友人にバトミントンに誘われることがあります。
実は私の通っていた高校はバトミントンの名門校。部活に入っていない人でも体育の時間で徹底的にバトミントンの授業を行います。私もバトミントンが好きなので喜んで参加しました。
ところが、参加してみてびっくり! 主婦や子ども達も普通に可愛らしく羽を打ち合っているようなレベルではないんです!
みんな本当にすごいんです! 元バトミントン部?選手?と思ってしまうほどにスマッシュをビュンビュンと打ってきます。
「もう50才を過ぎて体が動かなくなってきた〜」と言いながら機敏な動きを見せる主婦パワーは素晴らしいです!
「この人は本当に普通の専業主婦なの?」と目を疑ってしまうほどにかっこいいプレーを見せてくれます。中にはスカートを履いて競技を行う主婦まで……。
こんな格好なのに強いのですから驚きです。
スポーツが比較的得意な夫は、普通の主婦とようやく張り合えるほどのレベルです。
男性陣のバトミントンはもはや参加することもできないほどに、すごいスピードのスマッシュが連続しています。
それでもなんども参加するうちに、みんなについていけるようになってきます。そうすると夫は地元の子ども達から一言「だんだん上手くなってきたね!」……完璧に舐められています。
みんなを楽しくするスポーツ
このようにバトミントンは、マレーシア中の人に愛されるスポーツです。マレーシアのみんなと仲良くなりたいのなら、バトミントンをすればいいのではないかとさえ思うほどです。
その際は、相手が本格的に打ってくるということを忘れずに、生半可な気持ちで参加しないことをくれぐれもお勧めします。