ジェットコースター気分も味わえるマルセイユの観光車プチ・トランの魅力
フランス

蒸気機関車型の電気自動車、Le Petit Train Touristique (プチ・トラン)。

機関車型の観光自動車自体はフランスの各街町にあって、ガイドブックなどでもすっかりお馴染みです。

でも、Marseille(マルセイユ)ではバラエティに富んだ道選び、そして、変わる速度……と、ひと工夫されてテーマパーク気分もたっぷりの、ちょっとした名物コースがあるんです。

プチ・トランって?

Le Petit Train Touristique (プチ・トラン)は、フランス各地・観光名所なら必ずある乗り物で、町の名所を周ってくれます。所要時間も料金もまちまち。

 

直訳すると”小さな列車”ですが、蒸気機関車の形をした電気自動車なので、普通の車道を走って行きます。3人掛け5列ずつの座席、3両編成という基本スタイルはたいていの街で同じで、マルセイユでは、海の色ともプロサッカークラブのOMの色とも思える水色と白の配色。

観光用によく見かける2階建ての大型バスはフランス各地にもあって、いくつものポイントで乗り降り自由なんですが、このタイプは、折り返し点ぐらいでしか降りられません。

 

でも、細い路地でも入って行けるし、見ての通り、カートのようにオープンなまま走るので、テーマパークの乗り物に近い感覚なのが楽しいポイント。だから、別モノとして普及・定着しているんですね。

 

車体の色や所要時間・料金はさまざまですが、どこも町の中心地ですぐに見つかる場所で発着していて、マルセイユの街ではヴュー・ポー港に。

カヌビエール大通りを背にして、向かって右手に進むと、徒歩で5分ほどのところに小さなスタンドと出発待ちのプティ・トランが見えてくるはずです。

 

この小さな小屋がチケット売り場です。遠くからでも目に付くので大丈夫。こんな笑顔で迎えてくれます。

舗道の反対側には、あるビストロやブティック(メゾン・ド・パスティスも)のアーケードが連なっているし、ヨットが連なる港沿いのこの舗道は幅広くて心地いいので、あっという間についてしまう感じ。

 

マルセイユの常設プチ・トランは2コース。イベントに合わせて無料で運行も

さて、ここからの発着は2コース。旧市街の見所をぐるりと案内してくれるものと、丘の上のノートルダム大聖堂への往復(もうひとつのコースは、港から船で往復できるフリウル島にあります)。

 

旧市街はすぐ目の前に広がる地区ですが、坂道の多いマルセイユ。これでぐるりと周れてしまうのはとても便利。

途中で絶景ポイントでは少し停車してくれるので、降りて写真も撮れます。どうしてもゆっくり見たい場所を見つけたら、コースが終わってから改めて行くという方法も。

 

チケットは、往復セットのつづりで大人8ユーロ、子ども(3歳―11歳)は4ユーロ。

学年ではなくて、年齢でという価格設定なのがフランスの特徴で、多くの交通機関や映画館などと同じです。

 

 

おすすめは丘の上のノートルダム大聖堂・コース

マルセイユのヴュー・ポー港から丘の上のノートルダム大聖堂へと周回するコースは、ちょっと他では体験できないスグレモノ。ただのゆるゆるした観光カートではないんです。

 

風光明媚な海岸線沿いのをゆったり豪快に駆け抜けて行ったかと思うと、岩場の谷間へ曲がって……。

今度は、細い坂道をうねうね駆け上がり(全部車道です)、帰途はのんびり発車したかと思うと、とたんに急斜面の坂道をゴーッと下ったり。

ハイライトポイントの様子を写真でご紹介しますね。

 

まずは、この海岸線を抜けてきます。以前フランス1治安の悪いマルセイユを公共交通で楽しむという記事で、83番のバスをご紹介した時の逆周りです。

あの中の写真に出て来るプチ・トランの、まさにあの位置から振り返ると見えるのがこの景色。

右側に見える3つのトンネルのようになっている橋桁下から眺めた写真も同じ記事で。橋を渡った向こう側が、Fausse Monnaie。

 

そして、こんな風にヘアピンカーブを曲がって、行けども行けども地中海。2車線の右側通行の車道をそのまま走っていきます。だから、右側に座っている方が愉しいけれど、高所恐怖症の人はハラハラするかも。

 

ちなみに、この日の気温は正午で6℃。前日までのミストラル(南仏名物の北東突風)が雲を吹き飛ばしてくれているお陰で、空は澄み渡っています。風はやんだので、静かな地中海。季節ごとに色を変えるのも楽しみな風景なんです。

さて、そんなヘアピンカーブを曲がった先には・・・

しばらく、広めの車道で緩やかなカーブが続くので、見渡す限り広がる地中海。潮風がさらりとしているので、夏でもべたべたした感じにならないので気持ちいいんです。

 

だから、この街で暮らしていても、何度も楽しんでいる人は案外います(私も)。

 

住宅地を抜けて、細い歩道のすぐ脇を滑りぬける

さて、この先は小さな浜辺部分からもう1度カーブに進む代わりに、左に折れて崖下の道へと一気に入っていきます。

ごくごく普通の、昔ながらの住宅街です。ちょっと愉しいでしょう?

写真のために人通りの少ない日曜の午後にしましたが、平日は、人も車も行き交う、生活観たっぷりの場所です。

 

着きました!この車両は25分後に出発します

停車場は、この大聖堂のすぐ下。階段を数十段上がるだけで中に入れます。その足元は360℃ぐるりと回っていけるので、マルセイユ中が見渡せます。地中海の向こう、イフ島やフリウル島、そして、コート・ブルーまでもたっぷり。

そんなふうに、ただパノラミックな景色を眺めるだけなら、この車両に戻ってくれば25分後(お昼と夕方それぞれの最終は20分後)に出発。

 

そうでなければ、大聖堂をゆっくり見学してから、後続の適当な時間を利用すればいいんですが、先着準で満席になったら次を待たないのが難点。

 

フランスでは、メトロもバスも、並ばないで、扉が開いたらわっと乗るのがアタリマエで、先に待っていたとしても乗りそびれることもあります。混雑時には、来るときに乗ってきたものをそのまま利用するようにと薦められることもあります。

 

さて、帰り道は長い急勾配の坂道を……

前述で”ジェットコースターみたい”と表現したのは、この帰りのコース。

 

大聖堂のすぐ下から、住宅地の最初の角を曲がる辺りまでの数分間は、ごくごく静かに徐行していきます。

そして、この急勾配の坂道に出た途端! がーっと勢いよく走っていくんです。

 

(※プチ・トランに乗っている状態では、ちゃんと写真には収められないので、これを撮るためだけに出掛けました。徒歩でも足腰に自信があれば、港から”45分ほど”で上れるし、市バス60番でという方法もあります。)

 

この先左を曲がって下りの坂道なんですが……これが下りた先から見上げた写真。

そんなに急に見えませんか? でも、両サイドの建物の階数が、どんどん減っている様子からご想像くださいね。

 

そう、よくスキーでも、リフトに乗っているときはどうってことなさそうなのに、上に着いて、「さぁ、滑ろう」と下をむいた途端、その角度に唖然!ということ、ありますよね。

まさにあの世界です。

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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