中央アジアの山岳国キルギスは、天山山脈が横たわる大自然が美しい国。夏にはそこかしこに花が咲き誇り、まるで絵本のような景色が広がります。
そんなメルヘンチックなキルギスの標高3,000mの大草原に広がるソンクル湖畔で、遊牧民が暮らすユルタ(移動式テント)に宿泊してきました。
草原のスケールに圧倒される!
こんな標高の高いところに、こんなだだっぴろい草原があるなんて!
細い山道を車に激しく揺られながら上っていった先に現れた壮大な景色を見て、まず最初にそう思いました。その広大さは、「東京ドーム何個分だろう?」などと考える気にもならいほどスケールが大きく、ただただ圧倒。
到着したのはちょうど夕暮れ時で、赤く染まり始めた空に浮かぶ雲の間から太陽の光が草原に射し込み、なんだか現実離れした天上の楽園のような光景。
高地で空気が薄いため、気付かないうちに高山病か何かが悪化して「本当に天国に来たりしなければいいけど……」と思いつつ車を降りました。
いざユルタ(移動式テント)へ
受け入れてくれる遊牧民の人たちと挨拶し、今日泊まるユルタへ入ります。
移動式のテントとはいえかなり広い空間で、天上の高さも十分。今夜はこの中に3人で泊まることになり、ゲスト用の折りたたみ式ベッド(寝具つき)が3つ置かれました。それでもまだまだスペースはあり、3人だと逆に隙間だらけで寒々とした感じ。
もうすぐ日が沈んでしまうので、とりあえず外に出て夕暮れの景色を見に行きました。キャンプからちょっと離れたところある湖に、太陽が傾いていきます。大きな湖はまるで海のようで、遮るものが何もない絶景にしばし見入ってしまいました。
絶品! キルギス料理に舌鼓
キャンプでは、遊牧民の人たちが手を洗う水や食事の用意を始めていました。地面には羊の皮が干されていたり、燃料となる家畜の糞があったり、エーデルワイスの群生があったり、普段日本ではあまり見かけない非日常的な光景にカメラのシャッターが止まりません。
やがて食事の用意ができたとの知らせがあり、ワクワクしながらダイニングユルタへ。
そこにはきちんとテーブルクロスがかけられたテーブルが設置され、綺麗に盛られたサラダやお菓子などが置かれていました。そしてメインの「ドゥンダマ」というじゃがいもと牛肉、野菜のキルギス風の煮ものを食べてみると、これがとっても美味しい!
まさか、電気も水道もガスも通っていない大平原の真ん中で、こんな美味しい料理をいただけるとはかなりの感動ものです。
満点の星に包まれて
食事を終えるとすっかりあたりも暗くなり、今度は夜空に満天の星が広がりました。標高も高く空気も澄んでいるため、主要な星座はもちろん、天の川もくっきりと天を流れているのがわかります。
夏でも夜になるとぐっと気温が下がるので、肌寒い中での星空鑑賞でしたが、誰にも邪魔されることなく気が済むまで堪能しました。
ユルタの中へ入り寝る準備。寝具は用意されていますが、暖房もなく寒いのでフリースなど持ってきた服を着込んで寝ます。このとき、防寒と乾燥防止を兼ねてマスクをして眠ったのですが、これがとても効果を発揮し熟睡できました。
心地いい朝の風に吹かれて
そして朝。高山病の症状もなく絶好調だったので、夜明けと共に起床して日の出を拝み、近くの小高い丘の上に上ってみました。
周りが平原なので少し登るとみるみる景色が広がっていきます。下から見ると「小高い」感じの丘だったのですが、実際登ってみるとけっこうな斜度があり息が切れます。
のんびり草を食む馬たちの傍らをぜーぜー言いながら横切り、やっと頂上に辿りつくと、360度に広がる絶景が見渡せました。眼下には、ソンクル湖と朝日に色づく草原がどこまでも横たわり、今登ってきた丘の向こうには雪を抱いた山々が顔を覗かせています。
この光景は一生忘れないだろうなと誰もいない丘のてっぺんで、草原に吹き渡る爽やかな風を浴びながらしばらく足下に広がる光景を眺めていました。