高温の温泉水をチビチビ飲むために作られたカップがある
チェコ

こんにちはライターの新田です。私は5月17日~24日にかけて、チェコ共和国政府観光局が主催するプレスツアーに参加しました。渡航費、宿泊費、移動費等はチェコ共和国政府観光局のお世話になりました。

そこで訪れた、あまり日本人旅行客には知られていないチェコのスポットを紹介します。1回目は温泉で有名なカルロヴィ・ヴァリです。しかし、カルロヴィ・ヴァリの温泉街は日本とは大きく異なります。

どのような温泉でしょうか。早速、見ていきましょう。

カルロヴィ・ヴァリへのアクセス方法


チェコの首都プラハからカルロヴィ・ヴァリへは鉄道、バスでアクセスできます。ただ、バスのほうが速く、本数も多いのでおすすめです。所用時間は約2時間15分、本数は1時間に1本~2本です。

カルロヴィ・ヴァリ行きのバスはプラハのフローレンツバスターミナルから発車します。途中、地下鉄A号線が乗り入れるフラドチャンスカーとプラハ国際空港に立ち寄ります。

カルロヴィ・ヴァリの観光地へ行かれる方はカルロヴィ・ヴァリ・トルジュニツェ(Karlovy Vary, Tržnice)で降りてください。

カルロヴィ・ヴァリ・トルジュニツェ

なお、帰り(プラハ行き)のバスはカルロヴィ・ヴァリ・トルジュニツェには止まりません! そこから10分ほど歩いた所にある、鉄道駅(カルロヴィ・ヴァリ・ドルニー駅)に併設のカルロヴィ・ヴァリ・バスターミナルから出発します。くれぐれもお間違えのないように!

カルロヴィ・ヴァリの温泉は「飲む」温泉


カルロヴィ・ヴァリはチェコを代表する温泉保養地です。

しかし、日本の温泉街とは大きく異なり、人々は湧き出る温泉水を独特の形をしたカップ使ってチビチビと飲みます。これがカルロヴィ・ヴァリの温泉スタイルです。

カルロヴィ・ヴァリの町並みを歩くと、このように温泉水が湧き出ています。温泉水の水温は場所にもよりますが、多くは50度から70度ほど。素手で触ると「熱い!」と感じるはずです。

温泉水は身体に良いとされています。ただし、やみくもに飲んでは逆効果! ベストな方法はカルロヴィ・ヴァリにいるスパドクターに相談しながら飲むことです。

私もさっそく、温泉水を飲んでみることにしました。まずは、独特の形状をしたカップを購入します。

このカップは高温の温泉水をチビチビ飲めるように工夫されています。また、厚みが薄いので、ポケットに入れることもできますよ。

ドルジニー・コロナーダ

ほとんどの温泉水は源泉を雨から守るために作られた建物、コロナーダの中で飲めます。日本では味わえない優雅な気分で温泉水が楽しめます。

ただ、温泉水はハッキリ言うとおいしくありません!(おいしく感じる方もいるでしょうが)鉄分を多く含んでいるため、独特の味がします。

私はムリーンスカー・コロナーダにある8つ目の源泉を試しました。苦味のある独特の味ですが「飲めない」という味ではありません。いかにも「体に良さそうな」味です。

色々飲んだ結果、一番飲みやすいのがムリーンスカー・コロナーダの温泉水、反対に少し飲みにくいのがサドヴァー・コロナーダの温泉水のように感じました。

夕食で食べたクネードリキとダック料理

私はこの温泉水を飲んでから、1時間後にヘビーなチェコ料理を食べました。しかし、全く胃もたれもなく、翌日もスムーズに旅を楽しめました。きっと、温泉水が効いたのでしょう。

町並みはウィーンに似ている?


カルロヴィ・ヴァリは温泉以外にも楽しみ方がある保養地です。温泉水を飲みながら、周辺の建築物に注目してみましょう。

どことなく、オーストリアの首都、ウィーンに似ていませんか? 実はチェコは長年、ウィーンを首都とするハプスブルク帝国に支配されました。また、カルロヴィ・ヴァリが最盛期を迎えたのは19世紀のこと。

この時代はウィーンも大きく成長しました。カルロヴィ・ヴァリがウィーンと似通うのも無理はないでしょう。

サドヴァー・コロナーダ

それを代表する建築物がサドヴァー・コロナーダです。写真からも見てわかるとおり、とても優美で繊細なデザインをしています。このコロナーダを設計したのはウィーンで活躍したフェルナーとヘルマーです。

彼らはウィーンのコンツェルトハウスやウクライナ・オデッサのオペラ劇場など、ヨーロッパのあらゆる建築物を設計しました。

ムリーンスカー・コロナーダ

そして、先ほど紹介したムリーンスカー・コロナーダにも注目してみましょう。こちらは昔の宮殿を思わせるデザインをしています。

19世紀、ヨーロッパでは昔の建築物をモチーフとするデザインが流行していました。ムリーンスカー・コロナーダもこの流れのひとつ。ルネサンス様式をベースとしたネオルネッサンス様式で建てられています。

ホテル・サーマル

現代建築が好きな方はドヴォジャーク公園の近くにあるホテル・サーマルに注目しましょう。このホテルは社会主義時代の1975年に建てられました。この丸型のデザインがどことなく宇宙船を連想させますね。

地元の方はホテルのデザインを「醜い」と言っていましたが、私は個人的に気に入っています。ちなみに、ホテル・サーマルでは毎年7月にカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭が開催されます。映画好きな方はチェックしてみましょう。

偉人の足音と名残が垣間見られる町 


上左:ロシア語 上右:チェコ語

ところで、カルロヴィ・ヴァリを歩くと、他のチェコの都市では見られない文字に気づくはずです。いや、気づいた方は相当鋭いです! それが、こちらの文字です。

一見するとギリシャ文字のようですが、これはロシア語です。カルロヴィ・ヴァリではロシア語を多く見かけます。なぜ、これほどロシア語が多いのでしょうか。

実は、カルロヴィ・ヴァリはロシア人のお気に入りの保養地なのです。18世紀、ロシアの近代化に貢献したピョートル大帝が2度、カルロヴィ・ヴァリを訪問しました。

それ以降、多くのロシア人政治家、文化人がカルロヴィ・ヴァリを訪れるようになったのです。カルロヴィ・ヴァリにはピョートル大帝が訪れたことを示す碑文がありました。

レストラン「エレファント」

また、ドイツの偉大な詩人、ゲーテもカルロヴィ・ヴァリを気に入ったようです。ゲーテはワイマール、ローマと並んでカルロヴィ・ヴァリを「住みたい町」にリストアップしていました。これはゲーテが誕生日を祝った「エレファント」という店です。

このように、カルロヴィ・ヴァリには教科書レベルの有名人がたくさん訪れています。歴史好きな方にとってもたまらない場所といえるのではないでしょうか。

カルロヴィ・ヴァリ

この記事を書いた人

新田浩之

新田浩之鉄道&中東欧旅行研究家

1987年生まれ。神戸市在住。専門は鉄道と中東欧です。国内では鉄道系イベントの取材、国外では中欧、東欧、ロシアの歴史スポットを訪ね歩いています。チェコアンバサダー2018

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