「グリニッジ天文台」ってどんな場所?小高い丘から放たれる光線とは
イギリス

ロンドンの東のはずれに小高い緑の丘がある。そこはテムズ川とロンドンの街を見渡すことが出来て、何とも心地がよい。天気が良ければ芝生に寝転がり、気が向けばジョギングできるぐらいの広さがある。

ただここは、ただの丘ではない。外国人旅行者も相当出入りしている。それは当然、ここは世界遺産にも登録されているグリニッジ(Greenwich)なのだ。

グリニッジ天文台は、グリニッジにある

飛行機ができるよりずっと昔、テムズ川の港町として栄えたグリニッジ。その丘には、7つの海を支配した大英帝国が定めた、グリニッジ標準時(Greenwich Mean Time, GMT)の基となる英国グリニッジ天文台がある。ここが当時の世界の時間の軸だった。

日本では、グリニッジから9時間前に進んだ兵庫近くの時間を日本時間と定めており、日本人とも無縁の場所ではない。日本時間の略称はJST(Japan Standard Time)だから簡単なのに、なんでUKはGMTなのか、頭文字から全然想像できなかったがこれで分かった。グリニッジは地名なので、日本なら「兵庫標準時間」と言ったところか。

天文台は赤レンガ


© Copyright David Dixon

天文台は、入場可能。ピッカピカの研究施設という感じではなく、赤レンガで、やはり歴史を感じさせるイギリスの趣がある。敷地内には、天文学や航海術に関する道具を集めた博物館があり、歴史や星の好きには人にはたまらない。


昔は夜空を眺めて星座を言い当てることも出来たのに、すっかり判らなくなってしまった。昼寝で寝そべったまま、星の出る夜まで待ってみよう、と言いたいところだが、残念ながらこの丘で夜空の星を眺めることは出来ない。ロンドンの公園の例にもれず、日没とともに係員さんが閉門し、施錠をしてしまうためだ。

天文台の醍醐味は、夜

でも、広い公園に沢山の人がいるため、その作業には時間がかかる。もうちょっと、もうちょっとと粘ってみる。マズイ、遂に女性のおまわりさんが「帰りなさい」って言いにこっちに歩いてきている。よし、万事休す! 丘を下まで一気に疾走だ! 多分こんなことで撃たれないだろう。

大都会なので、無人島の様な満天の星空に出会うことはいずれにしてもできない。

ではなんで、撃たれるかなーと思うくらい粘っていたかというと、天文台からグリニッジ子午線を通る光線が夜空に描かれるからだ。

「あー、これが世界の時間の基準の線なのか」そうやってただ感動していただけ。日本時間の線なんて見たことも考えたこともなかった。でもこうやって、世界の中心線を可視することが出来たのである。
Greenwich observatory laser
photo by WIKIPEDIA COMMONS

でも頭をよぎったのは子午線だけではない。

あのスタジオジブリの傑作映画「天空の城ラピュタ」で主人公の女の子、シータの首にかけられた飛行石がラピュタの方角を指して光を一直線に放つ、その光景とダブって見えてしまったからもう仕方がない。

天空の城ラピュタ
 
かつての英国が、この地で天文学と航海術を発展させたのだから、冒険ファンタジーアニメと背景もしっかりマッチしてしまっている。完全に妄想が入っていると思ってもらってもいい。でも想像力があった方が人生は楽しいというのが持論だ。

日々、都会の喧騒で忙殺されていて、1日この丘に来ると、なんだか昔ながらのねじ巻き式腕時計のズレた針をリセットするような、すっきりとした、すがすがしい気持ちになるのである。

グリニッジ王立天文台
公式サイトはこちら(英語)

この記事を書いた人

ノマダー(野間駄, Noma Daa)

ノマダー(野間駄, Noma Daa)

なまえ:ノマダー (漢字の表記:野間駄, 英語の表記:Noma Daa,) 日本産。日本列島では走り足らず世界に駆け出し、気がついたら海外の大学を卒業。環境が肌に合いイギリス、スペイン等、欧州各地を転々。ノマダー(スペイン語で遊牧民)として暮らし、遠目から世の中を観察し、独り言をいう日々。趣味は駄じゃれで日夜を問わず周囲を寒くして地球温暖化を抑止している。野間馬は遠い親戚。「空想(Fantasy)」のスペシャリスト。

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