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本物の旅人のための旅Tips

県民ならニヤっとする、福岡が舞台の小説を5作品厳選しました。

百瀬、こっちを向いて。

読書をする、それは「自分の知らないところ、行ったことのないところに行ける」こと。自分はその場から動かなくても頭の中だけで本の世界を旅することができる、これってとてもすごいことだと思います。
 
まとまった時間が取れず旅行ができない時には、頭の中だけでも違う土地に旅をさせてみませんか?
 
今日は、福岡を旅している、もしくは福岡が舞台になっている小説5選をお届けします。福岡旅行の前の予習としても、おすすめしたい小説ばかり集めてみました。

1.逃亡くそたわけ


逃亡くそたわけ (講談社文庫)
第133回直木賞候補作、かつ第27回野間新人文芸賞候補作のこちら。作者の絲山秋子さんは、このあと第134回芥川賞を受賞されています。そんな芥川賞作家が、九州を縦断する小説を書いているんです!
 
物語の始まりは百道浜の病院から。主人公が友達「なごやん」を誘って病院を脱出し、南へ南へと逃げていきます。樋井川を横目に見ながらよかトピア通りを渡り、福岡タワーと福岡ドームを振り返りながら始まる旅。
 
名古屋出身であることを隠して東京に憧れるなごやんと、生粋の博多っ子である主人公のかけあいがとても楽しい小説です! 会話も地の文もほとんど博多弁。博多を身近に感じることができますよ。
 
本の最後には、二人がドライブした道の地図が描かれています。百道浜から始まって薩摩半島の端っこで終わっているので、本当に縦断したんだな!ということが実感できます。

2.君の膵臓を食べたい


君の膵臓を食べたい(双葉社)
大ベストセラーになったこの作品。人気に火がついてコミック化され、2017年夏には映画化が決定しています。この作品では主人公たちが住んでいる県などは明らかにされていないのですが、二人が一緒に旅をする土地こそ、福岡なんです。
 
新幹線を降りて改札を出たらラーメンの香り、学問の神様に会いに行って梅が枝餅を食べる、掘りごたつでモツ鍋を食べる……などなど、福岡県民ならニヤッとしてしまう描写がたくさん出てきます。
 
名称こそはっきり書かれないものの、二人が泊まった夜景の綺麗なホテルってヒルトン福岡シーホーク? 遊びに行ったのはキャナルシティ? と、そこを知っている人なら分かる書き方がされていて、読んでいてとても楽しくなります。
 
2人が辿った旅順をなぞる聖地巡礼、なんていうのも面白そうですね!

3.百瀬、こっちを向いて。


▲百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)
こちらは短編集ですが、表題作『百瀬、こっちを向いて。』の舞台が福岡です。大学卒業間近の主人公が福岡に帰郷してくるところから、物語が始まります。彼が数年ぶりの天神をブラブラしていると、懐かしい先輩に偶然ばったり。昔話に花が咲いて、語られるのは二人の故郷・久留米での思い出です。
 
筑後川の土手で転んだ時についた傷、グループデートで待ち合わせてご飯を食べた西鉄久留米駅、みんなで見た「ほおづき市」とその時の彼女の謎めいた行動。その行動の理由が明らかになるラスト近くは必読です。そして、彼が故郷で待ち合わせている本当の約束相手とは?
 
この小説はミステリじかけになっていますが、同時に青春小説でもあります。自分のことを「人間レベル2」「薄暗い電球みたい」と称する、気弱な主人公の初めての恋。みずみずしい表現で、学生時代のことを思い出してしまいますよ。

4.悪人


悪人(朝日新聞社)
妻夫木聡さん主演で映画化されて話題になった『悪人』。この小説は、国道263号線の描写から始まります。読み進めていくと、地元民なら「そうそう!」と言いたくなるあのあたりのコンビニの様子、道の起伏、周辺の環境が手に取るように分かります。早良街道、室見川、三瀬峠などたくさん地名が出てくるので、文字を追うだけでドライブしている気分に。
 
また登場人物の出身地の久留米や、勤め先の福岡市内の様子もたくさん描かれています。しっかりと取材がされていることが分かる一冊。
 
そしてこの話は、後半は逃亡劇になります。そのため内容もロードムービーを彷彿とさせる描写が増え、犯罪を告白する男とそれを聞く女がイカを食べる呼子(佐賀)のお店が一つのクライマックス。二人が人目を忍んで数日滞在する灯台は長崎にあるので、全編を通して福岡・佐賀・長崎をふんだんに味わえます。
 
小説を読んでどういう場所なのか気になったら、映画を観てみるのもおすすめです!

5.もしも、私があなただったら


もしも、私があなただったら
主人公は49歳。故郷である福岡に帰ってきて、親が残した米穀店を廃業してスコッチ・バーを始めたのが6年前のこと。会社組織の横暴に耐えられず脱サラして心機一転、福岡に帰ってきたつもりが、実はその時一人の女性に心残りがありました。そして、ある10月の晴れた日、6年間交流がなかったその女性からいきなり「いま福岡空港に着きました」と電話があって……。
 
彼の生まれ育った場所で、スコッチ・バー「ブランケット」を開いたのが大名小学校正門前という設定です。ここ、福岡を知る人なら「立地がいい!」と叫びたくなる場所なんです。2000年頃からオシャレな街として注目されている大名の移り変わりを感じながら、彼らと一緒に大濠公園を散歩したり脇田温泉に入ったりしている気分を味わえる、のびのびとした大人向けの小説です。

もちろん、他にもたくさんあります

お気に入りの作品は見つかりましたか? ここでは5つだけ挙げさせていただきましたが、福岡、そして九州を舞台にした小説は、他にもたくさんあります。旅に出る前の予習として、そして旅に出られない時の心の栄養として、小説を読んでみませんか?

小説を読むのが好きなので、今回5作品選ぶのが楽しかったです! 自分が住んでいる県や好きな場所が本に出てくると嬉しいし、作者さんが近県の出身だとつい気になってしまいます。

この記事を書いた人

きまや

きまやライター

80年生まれ、太宰府市出身、福岡市在住。地元大学の日本語日本文学科卒。猫と文学と甘いモノと麺類をこよなく愛する、主婦兼ライター。福岡にしか住んだことがなく、行ったことがある海外はイギリスとフランス。これから国内で行きたいのは、あらゆる文学記念館!