フランス人は春まで滑る!南仏アルプスのスキー・ヴァカンスとは?
フランス

さて、フランスでは、スキーの季節が続いています。

というよりも、ますますいい雪がついたところ。今年は、いつもよりさらに降雪開始が遅かったのと何度も繰り返してくれているので、スイスやイタリア国境の方まで足を延ばせば、まだまだ4月の春休みまでたっぷり滑れそうです。今週もまた降っていると、ニュースで見たばかり。

 

日本での桜の開花と同じように、年によって多少降雪量や時期タイミングがずれるので、11月からはテレビの天気予報に、雪情報が加わるぐらい。すべての人がそうというわけではないけれど、スキーはフランスでは国民的スポーツのひとつ。そういえば、いくつものスキー用品有名メーカーはフランスでしょう?

冬休みは通称”スキー・ヴァカンス”

学校の林間学校でスキー!も、昔からの定番のひとつ。でも、有無も年も学校や先生によるので、いつそうなっても困らないように、怪我しないようにと、私の周りでは、子どもが小さいうちから身につけさせるようにしている家庭が多いです。

転ばぬ先の杖というより、怪我しない転び方を覚えさせておく。SNSへの取り組みと同じスタンス

そんなわけで、我が家も毎年、冬休みに1週間から10日間の”山ごもり”が習慣。

子どものため?……いえ、自分たち自身にも必要なリラックス時間だから。結婚しても、子どもを持っても、生活・スタイルを変えない(人が多い)と言われているフランス。実は、そうできるベースがいろいろ揃っているんです。

まず、約6週間ごとに2週間の学校休暇があること。そして、勤め人の多くは年5週間の有給休暇をとれること。

そして、クリスマス休みと春休みの間に、もうひとつ冬休み(通称スキー・ヴァカンス)があるんです。一家揃って1週間単位で出掛ける家庭もあれば、ママンだけ子ども達と2週間行きっぱなしでパパは週末だけ、という例も。

 

南仏アルプスへは、マルセイユやニースからなら車で気軽に日帰りも出来る距離だし、空港や主要駅から大きなスキー場へは、シーズン中にはシャトルバスも出ていますから。

フランスのスキー場のほとんどは南仏。それも、プロヴァンス・コートダジュールのすぐ北側。

そう、夏も冬もヴァカンスには南下する人が目立つフランス、なんです。年中温暖なイメージの南仏ですが、実は、冬は水道が凍るほど冷え込みます。そういえば映画や小説で、と気付かれる方もいるかも。

そして、意外と知られていないけれど、フランスのほとんどのスキー場は南仏。大きな山脈がいくつもあるのは、この地図を見ればひと目でおわかりいただけるはず。

ね?

ゆっくり山の空気自体を愉しむのが、フランス流。リフトが動いているのは、基本は9時ー17時

でも、スキーだけを目的にというよりは、山の時間自体を愉しむひとが多いので、宿泊するスタイルが主流です。

 

そして、そうなると1番ポピュラーな滞在スタイルは、1週間単位。たいていが”土曜午後~翌土曜朝”の設定になっていて、1泊だけや週末だけと比べると、かなり格安。ホテルや民宿も賃貸物件も、鍵の受け渡しやお掃除手配が土曜の半日だけで済んでしまうからという、昔ながらの合理的なシステム。

 

リゾート賃貸物件なら、ワンルームからシャレーと呼ばれる一軒家までと様々。1人での滞在もできるし、友人達とシェアする愉しみ方も。子どものスキースクールは月曜から金曜にレベル別グループレッスンがあるので、子どもを送り届けてしまえば2~3時間の自由時間に。フットワークよく親自身も楽しめてしまうというわけです。

 

クラブと呼ばれるリゾート施設も、身一つで行けば何もしなくて考えなくていいし、便利で人気。1週間単位での(食事メニューやアクティヴィティの)プログラムが予め用意されていて、一人旅ならマイペースにも、色々な人と交流も楽しめます。

家族連れにとっては、保育園やベビーシッターサービスがついているのが、とても重宝。食事の支度をしなくていいのと、送迎0分な分、自宅にいるときよりのんびり。

塾より家庭教師がポピュラーなフランスならではの個人レッスンも人気。

我が家でも、息子が7歳のときから毎年、同じコーチに教わっています。朝、その日教わったこと・注意点に気をつけて、午後親と滑る、の繰り返し。学校の勉強みたいですよね。親子のいいコミュニケーションの時間でもあります。

リフトの営業時間は、基本的には午前9時から午後5時まで。ナイター営業はしていないんですが、曜日ごと、ジャンプ回転のデモンストレーションや松明滑走、花火大会など、いろいろなイヴェントが用意されています。

 

もともとこのスキー場を選んだのは、マルセイエーズのママン仲間達のアドヴァイスで。

夫も(もちろん私も)南仏出身ではないので、スキーといえば、シャモニーや大きな観光地しか知らなかったんですが、子どもに始めさせるには、目の届くところ・すぐに部屋に戻れる距離がいいと、大きすぎず小さすぎないSauzeという村を教えてもらいました。

息子はアトピーや食物アレルギーがあった時期なので、オフィス・ド・ツーリズムに電話して相談したら、親身に考えてくれて教えてくれたプチホテルが、ファミリーゲレンデ至近のこちら、Hôtel Les Flocons。暖房も調整が利くし、食事も融通を利かせてもらえることに。

レストランやバーだけの利用客でもFree Wifiを利用できるここのサロンは、居合わせたもの同士、ゲレンデや抜け道などなど、とてもいい情報交換の場になっていました。

壁には、フランスではよく見かける”無料交換できる本棚”(あなたの不要な1冊を置いて行って、お好きな本をご自由にお持ちください)も。フランス人の多くが読書好き、寝る前にベッドで読書する習慣のひとは相変わらず多いようです。(映画でも、よく見かけるでしょう?)

その翌年は、もう少し山の上のほうの、そのままゲレンデに出られるクラブに滞在。コーチとの相性がよかったので、そのままここで毎年過ごすことにしてからは、ゲレンデ前のリゾート・アパルトマンを。オフィス・ド・ツーリズムのサイトでは、オーナーから直接借りられるリストもあります。

もちろん日帰りでも!手ぶらでも。半日から長期まで、必要な用具レンタルいろいろ。

ところで、もちろん、天気予報を見ながら、急に決めて日帰りすることも。レンタルスキーや用具一式、買ったり借りたりできる店は何軒もあって、予めサイズがわかっていたらネット予約も出来ます。

この店は、いつも利用しているところ。子どもは毎年サイズもレヴェルも変わるので、重宝。私も、板は借りています。データを残してくれてるので、何も言わなくても必要なタイプを出してきてくれるのが、嬉しいところ。使ってみてちょっと……と感じたら、持っていけば、気軽に替えてももらえます。こちらが、この店のマダム。

小物なんかは、街で買うより種類も豊富で、お買い得だったりもするんですよ。

朝一番!はこんな感じ。早起きがちっとも辛くなくなる秘密。

さて、記事冒頭の写真に見えるゲレンデは初心者や小さな子ども用。そのてっぺんの裏側に、下からは見えない、大きな山並みがいくつも広がっています。毎朝、リフトを2つ乗り継いで、計20分ほど。上の写真の山の向こう側まで行くと、広がっているのはこんな景色。

高速リフトは6人乗りの1基だけ。ロープウェイなどはありません。

ニーズが多いからといって宿泊施設を乱開発したりスピードアップしたりはしないかわりに、混雑緩和の方法は、昔ながらのフランス全土を3つのグループに分けて、1週間ずつ学校休暇開始をずらすシステム。だから、近代的ではない代わりに、ゲレンデが混雑したり、リフト待ちに何十分もということがないんです。

頭を空っぽにして、心と胃袋をいっぱいに! スキー・ヴァカンスの醍醐味、山の美味しい時間。

これが、オフィス・ド・ツーリズム。Free Wifiが使えます。

たいていのアパルトマンにはインターネット環境がないので、朝一番やお昼休みには、ここで仕事をささっと済ませるひとたちも。有給休暇が十分あるといっても、1週間丸々仕事から離れられる人ばかりでもないのは、どの国も同じ。

このオフィス・ド・ツーリズムの建物の傍らのスペースには、チーズとソーセージを扱う店や、スープや名産品の店が週に1度(2度の週も)出るのも愉しみ。

たとえば、この(写真中央の)骨付き生ハムの大きな塊は、1本50ユーロ!

チーズとソーセージ類だけでも、この通り。

パン屋さんもすぐ正面にあります。昔ながらのごつごつしたパン・ド・カンパーニュや大きな塊の白パンは形もサイズもよく見ると不揃い。量り売りなので、好きなサイズを選べます。

朝一番に買いこんでサンドウィッチにして出掛けて、山頂付近や木陰でピクニックランチもいいし、ゆっくり陽射しを愉しみながらのゆったりランチも。カフェ・ビストロや窯焼きピザの店がいくつもあります。

 

私達がいつも利用しているのは、この店、LE CABANON

一旦、山頂まで行って、少し迂回して数百メートル滑り降りてきたところにある2軒のひとつ。どちらも予約しないと席の保障はありません。

まずは、メニューと一緒に、南仏名物のオリーヴペースト・タプナードが運ばれてきます。こちらは、サービス。

お料理は、麓の評判のお肉屋さんから取り寄せているサーロインや特産ハム・ソーセージ類、地元で獲れるジゴ(編集部注:羊のもも肉)も。名産のチーズを中心にした山の料理、そして、粗挽きの大きなハンバーガーが人気。お野菜は、自家農園でオーガニック栽培されたこだわりのもの。

フランスでのランチは、デザートもお約束。手前のおばあちゃんのレシピのクレームブリュレは、グラタンぐらいの大きさがあるんですけど、不思議とすんなり入ってしまいます。

こちらがオーナー、2代目です。この笑顔に送り出されて、午後のスキーへ。街でのよけいな悩みごとはどこかに吹っ飛んで、心も胃袋も満ち満ちています。

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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