フランスでも人気のハマムを現地からレポートします
フランス

パリでもマルセイユでも、ハマムはとてもポピュラーな存在です。

「Hammam」という看板は、パリより多く見かけるぐらい……と言うと、「移民が多い街だから?」と訊かれるんですが、別にそういう理由ではなくて、スパやスチームバスなどの施設は、地中海気候やライフスタイルにより合うのかもしれませんね。

 

Sushiがフランス人たちの嗜好で広まってブームになったみたいに、クチコミで知られるようになって、どんどん取り入れられたようです。
ハマム原型そのままというよりは、スパやエステをうまくアレンジしたマルセイユのハマムをご紹介します。

ハマムって?

Hammam(ハマム、ハンマーム)というと北アフリカや中東のローマ式公衆浴場という翻訳になるんですが、一般的にフランスでは、スパに近い存在として知られています(フランス語ではHは基本的に発音しないので、アマムと呼ばれています)。

 

モチロン、本場そのままのスタイルのところもありますが、各国料理がそれぞれの国に合うように馴染んでいるみたいに、ハマムの看板を掲げていても、現地の空気はそのままに、フレンチスタイルにアレンジを加えられているのは、Sushiブームの広がり方と共通する部分あるかも。

地中海繋がりの隣国イタリアやスペインとは、食や文化に共通するものがあって親しみを感じられるフランスですが、海を挟んで向こう側の大陸の、少しだけ離れた北アフリカの国々とは、そうしたものが異なるからこそのエキゾチックさがとても惹かれるようです。ヴァカンス先として親しまれてもいるし、食や習慣もどんどん伝わって、定着してきています。

 

最新スタイルのハマムはカスタマイズできる

というわけで、マルセイユのランドマークのひとつ、Stade Vélodrome(スタッド・ヴェロドローム)オレンジ・ヴェロドローム・スタジアムから程近い、最新スタイルのSPA NEGRESKO スパ・ネグレスコをご覧ください!

 

2年前にオープンしたばかりなんですが、すぐにクチコミで予約は連日満杯に。今では、マルセイユで1番評価の高いことで知られています。利用者の中には、旅行者も目立ちます。

 

ハマムを組み合わせたウエルネス全般を提案しているのは多くの他の施設と同じなんですが、ここならの特徴がいくつかあって、とくに魅力的なのは、大きなバスターミナルもあるメトロの主要駅から徒歩1分(車なら駐車場もあり)という地の利の良さに加えて、利用スタイルが自分でカスタマイズできること。

 

伝統的なハマム施設だと、ハマムだけか、ゴマージュ(古い皮膚の角質を取り除く美容法)やマッサージが一連のセットになっていて、うんとシンプルかたっぷり時間を掛けての両極端だったりしますよね。

でも、ここでは、組み合わせ内容や時間の幅が何通りもあるので、自分の好みとライフスタイルに合うものを選べるんです。

 

そして、使用するオイルやケアの基礎化粧品の取り扱いメーカーが複数あって、どれも馴染みのあるもの。

家での毎日のケアの延長にプラスアルファした、集中トリートメント時間としても続けられるんですね。

 

ハマムもたいていのスパやエステも、自社製品(または提携品)だけでしか置いてないですよね。このスパでは、自分で好きな香りや素材、そして、マッサージの種類(欧州で一般的な施術式だけでなく、ハワイのロミロミや東洋の指圧もあります)を選べます。

 

ゴマージュは、欧州スタイル。本場ハマムや韓国のあかすりのような力強いタイプではないので、スチームサウナ&スパ・マッサージと表現してくださいね、とお店の方から。

こちらが、ハマム。

温度は50℃、湿度は100パーセント!です。

 

一般的な日本のサウナは90℃±10℃、湿度は10パーセント±10と聞くので、温度はうんと低め、湿度はマックスですね。この数字を聞いて面白いと思ったのは、日本はからっとした暑さのサウナが好まれていて、フランスでは湿度じっとりの暑さのスパが好まれているらしいこと。

 

でも、よくよく調べたら、日本でもスチームサウナというのが存在していて、それは、このハマムと似ていること、そして、フランスでも年々ポピュラーになってきている岩盤浴は、日本のサウナに通じているんです。

東と西の果てとはいえ、いろいろな生活習慣で似た視点・共通している価値観は、そこここにありますね。

 

 

ゴマージュ? それとも、マッサージ?

さて、顧客同士が顔をあわせないで過ごせるように時間調整への気配りは万全で、私が案内されたときも、この通り。

 

セルフサービスで飲み物をいただきながら、一息つけるスペースです。

写真中央に映っている鏡のような立て板には、水がシルク布のように流れていて、とてもいい雰囲気。

 

向かって左側はふたり用の部屋。右側にはひとり用が続きます。

フェイス・ボディ・足だけのマッサージ付きのメニューもあるし、その種類も所要時間もいろいろ。

お部屋の広さやリネン類の色は同じですが、使用メーカーによって、それぞれの個室が決まっています。

ウエルネスの基本はリラックス。華美過ぎず、シンプル過ぎず、とても居心地いい空間です。

 

アンチ・エイジングは歳に逆らうことではない?

ケア製品のメーカーによって部屋が異なるので、エステも充実。それぞれ個性豊かです。

FILORGAは、日本ではまだ馴染みがないままですが、フランスのパラファーマシー(薬と化粧品を両方扱う店)ではどこでも扱っている製品で、アンチエイジングとターマルケアに長けていることで知られています。

 

老舗の大手化粧品メーカーのように独自のサロンは持っていない代わりに、こうしたサロンでの専門の部屋があるんですね。

 

アンチエイジング、とカタカナで書くと、なんだか若さを求めてあれこれ策を練っているようなイメージ漂います(よね?)が、クラランスの保湿クリームの記事でも書いたように、毎日のジョギングみたいに続けることで健康な肌作りを促すもので、このメーカーは、パラファーマシーに月1度専門家が来て、商品説明やケア相談に乗ってくれることでも知られます。

 

私も1度、肌チェックを受けて、「これが必要なはず」と美容液ミニサンプルをいただいたんですが、使い心地よかったです。

 

ふたりでの時間も楽しめます

さて、そんな風に、メーカー指定できるひとり部屋のほかに、友人同士やカップルで一緒の時間を愉しめるふたり部屋もあるのも、ここの特徴です。

並んでおしゃべりしながら同時にそれぞれ施術を受ける……。イメージ的には、リゾート地での過ごし方でしょうか。

 

喧騒の街・メトロの出口から、徒歩1分でのリラックス空間。流行るはずですね。

 

新しい自分を見つけられるかも

さて、そんなわけで、表から扉を入ってすぐの受付の左右双方にずらりと並ぶのが、各社製品。

 

こちらから尋ねなければ、購入を勧められることもないんですが、訊けば、いろいろ教えてもらえます。

 

ここでしか扱っていないのはパイヨ(PAYOT創業1875年の老舗メーカーですが、一般流通はしていないまま。でも、一方で、世界中に輸出もされているんです。そちらも一般小売はなし。ちょっと興味深いですよね。。

そして、パラファーマシーには置かれていないもののデパートなどにコーナーを持っているのは、この黄色い容器のデクレオール(DecLéor) というメーカー。

 

アロマの特性でリラックス効果を促すラインで、ターマルケアではよく知られています。ロレアルが経営母体で、日本でも展開していたようなんですが、2017年12月で販売終了になってしまいました。

 

定着しなかったのは、湿度の違う日本では、香りが濃く感じられるせいかもしれませんね。

高品質のナチュラル成分だからこその特質。たとえば、ラヴェンダーにはいくつか品種があるんですが、デクレオールではもちろん、最もピュアで高品質なものを使っているそうで、その分、香りのインパクトが強くなります。

個性いろいろ、選択肢も様々……。全ての人が同じように感じたりしないのをわかっているフランス、このサロンならではの品揃えです。

 

顧客同士、完全にプライベート・スペースとして利用できます

さて、受付時間は、顧客ごとにずらしてあるので、ロッカールームでも顔を合わすこともありません。地上階で、チェックインと支度を済ませて、サロンやハマム、設備のある上階へ。

 

16歳から高齢の方まで、女性だけでなく男性の顧客も少なくないのは、そのサービスの視野の守備範囲の広さと、この細やかな心遣いだからこそのようです。

 

日焼けサロン設備も?

スパとは別の一角、地上階にあるのが、タンニングマシーン。

フランスの女性達は年齢にかかわらずヴァカンス焼けしていると言われていますが、ちょっと待って……よく目を凝らしてみてください。

ヴァカンス先に到着している時点ですでに小麦色の肌の人、目立ちませんか?

 

太陽の陽差しの下に無防備に肌をさらすのが危険なのは、よく知られています。でも、夏ならではのこんがり小麦色になるのが好きな人は、水着を取り替えてても、肩や背中のあいた服を着ても、まんべんなくきれいに色づいているように、そして、間違っても皮が剥けてきているなんてことのないように、キッチリ努力しています。

 

たとえば、きれいに日焼けするのを促すサプリもよく知られているし、日焼けサロンを利用する人も。
だから、このスパ・ハマムにも、専用の個室があるんです。

無造作に髪を束ねたり、そう手を掛けていないナチュラルイメージ強いフランスの女性達ですが、こんな”素顔”もあるんです。

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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