城も燃やす!「ラインの火祭り」は戦争のような花火大会
ドイツ

「ラインの火祭り」というパワーワードに満ちたお祭りは、ドイツで5月から9月にかけて行われる花火大会の総称です。ライン川やその派生のネッカー川で行われる、日本で言うなれば隅田川の花火大会。川べりで見て良し、船上で見て良しの夏の風物詩です。

ですが、その経歴は「火祭り」の名に恥じない血なまぐさいもの。城も橋も豪快に火炙りにする、ドイツならではの歴史あるお祭りを楽しみましょう!

何でそんな物騒な名前なの?

「ラインの火祭り」は、ドイツ語ではRhein in Flammen。直訳すれば「火の中のライン川」、炎に包まれしライン川です。ドイツ語名の方が物騒ですね。

この名前の秘密を、人気の観光スポット「ハイデルベルク」と合わせて解いてみましょう。現在でも古城の美しさで有名なハイデルベルクは、中世を通して最重要拠点、堅牢な都市として名を馳せていました。

その頑強な城壁が破られ、ハイデルベルクの街が陥落したのは3回。一度は三十年戦争の最中フランス軍に、二度目はナポレオン軍に、三度目はプファルツ継承戦争による内乱で城が焼けています。その度に町は火の海になり、町人は虐殺され、略奪と貧困が蔓延る大惨事になったそうです。

特にナポレオン軍侵攻の影響は絶大で、ライン川周辺の古城はことごとくナポレオンに破壊されています。ハイデルベルクを含む各都市の「火祭り」の日程は、大体ナポレオン軍に落とされた日を基準にしています。

でもそんなの関係ねえ

意外と深刻な歴史を持つラインの火祭り。では死者を送るしっとりとしたお祭りなのか……と言えばそんなことは全くありません。

城が燃えてイェーイ! 橋が落ちてイェーイ! 花火が上がってイェイイェーイ!! の楽しいお祭りです。流石に歴史が長すぎて、ナポレオン軍に関係者を殺された人は来ていないようなので一安心。花火の手順は歴史に沿っていると思しく、時間になると町中の電気が消灯。旧橋(Alte Brücke)の炎上。ハイデルベルク城の陥落(炎上)、後は花火がドカーン!といった流れです。

ハイデルベルクでオススメの鑑賞スポット

打ち上げ花火そのものは、ハイデルベルクでは旧橋(Alte Brücke)とその近辺で上げています。

人気の鑑賞スポットは観光名所でもあるAlte Brücke周辺。旧橋周辺で見上げる花火はすさまじい迫力です。旧橋から水面に向かって打ち出す水上花火めいた演出もあり、これは旧橋周辺でなければ良く見えません。

涼を求めるなら、川へ


クルーズ船からの花火鑑賞もあります。ディナーやライブを合わせた船もあり、大人気。ハイデルベルクを流れるネッカー川は、花火大会の夜には船でいっぱいになります。船上から花火を眺めたい場合には、事前にサイトで予約するのがオススメです。
ネッカー川クルーズのサイト

あの城を燃やすのは貴方

しかし、ただの花火なら隅田川でいいでしょ?と言われかねませんので、ハイデルベルクでのお勧めは何と言っても城の炎上シーンです。

城のほぼ真下にあるAlte Brückeの辺りから見上げると、炎がめらめらと揺らぐ風景まで再現されている事が分かり、「城が陥落した……もう終わりだ……」という当時の町人の絶望感を垣間見る事が出来ます。しかし、橋からでは近すぎて、城の全景を眺める事が出来ないのが大欠点。

花火の全てを楽しみたいなら、オススメはこれもハイデルベルクの観光名所である「哲学の小道」です。平時からハイデルベルクの美しい町並みが一望出来る「哲学の小道」なら、城も橋もしっかり視認できます。

橋周辺ほど混みあわないので、ゆっくりと花火が見物出来るのもありがたいですね。周囲には何もないので、しっかりビールやおつまみを買い込んでから坂を上りましょう。

何よりこの「哲学の小道」周辺。実はナポレオン軍が大砲を設置し、ハイデルベルク城を狙い撃ちにした必殺スポットなのです。

ここからなら城がよく見えるどころか、よく燃やすことすら出来ますね。私たちがハイデルベルク城を燃やしているぞ! イェーイ!ぐらいのノリで花火を眺めるのにもピッタリのスポットです。

ラインの火祭りの楽しさは伝わりましたでしょうか?

2017年のハイデルベルクでは、花火大会は6月3日、7月8日、9月2日の3回開催される予定です。いずれも気候がよく緑の美しい、ハイデルベルク観光のベストシーズン。素晴らしいハイデルベルクの町並みを観光した後は、是非ラインの火祭りで町が炎上する様子も想像してみてくださいね。

もっと知りたい! ドイツが炎上するところ

これからドイツにお越しになる皆様、ドイツが舞台の小説なら、皆川博子さん作の『聖餐城』はいかがですか? こちらはドイツ三十年戦争が舞台。凄惨城の間違いでは?と疑いたくなる程、聞き覚えのある町が炎上して人が片っ端から死にます。つらい。ハイデルベルクも陥落します。隅から隅までつらい。つらすぎて読む手が止まらない。

ドイツ炎上と言えば第二次世界大戦中のベルリン空襲などがクローズアップされがちですが、まだまだ燃えている町はあります! ドイツに来る直前に読むと食欲が無くなってしまうかも知れませんので、元気がある時に是非ともオススメしたい小説です!

この記事を書いた人

華酉

華酉ライター/中世マニア

北海道生まれドイツ暮らし。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材です。その特性を活かし、日系企業ドイツ支店のお堅い正社員として貿易に励んでいます。 訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす為、より強い城を求めて各国を放浪中。いつ剣と弓の時代が訪れても良いように、皆様にも選りすぐりの歴史情報をお届けします。

ピックアップ

ピックアップをもっと見る

チャンネル

チャンネルをもっと見る