こんにちは! 南米ボリビア在住のZICです。
世界的観光地となったウユニ塩湖のおかげで日本でも知名度が急上昇中の国、ボリビアですが、豊かな資源や文化を持つ国でも知られます。
今回、その資源にまつわる悲しいボリビアの歴史をご紹介したいと思います。私たち人間にとって欠かせない貴重な天然資源、水を巡ってボリビアのコチャバンバという町では国内紛争が起きました。
それは水戦争として今も語り継がれています。天然資源はいったい誰のものか? もし、当たり前のように使っている水が使えなくなってしまったら? 深く考えさせられるテーマです。
ボリビア第3の都市、コチャバンバ
水戦争の舞台となった、ボリビア第3の都市コチャバンバ。標高2,500mに位置し、年間を通して温暖で涼しい気候にあるので、観光客や外国人移住者にも人気の町となっています。
フルーツや野菜の栽培が盛んにおこなわれていて、ボリビア国内に野菜を出荷していることでも有名です。新鮮な食材が手に入るためグルメの町とも知られます。
日系人が多く住むという情報もあります。一度は訪れてみたいのどかな町です。
コチャバンバの水戦争! その始まりとは?
事の始まりは1990年代の終盤に、コチャバンバの水道事業を取り扱っていたSEMAPA(コチャバンバ市営水道局)が民営化されたことにあります。
実は、1960年代頃からコチャバンバの人口は爆発的に増え始め、公営の水道事業会社であるSEMAPAだけでは市民の水供給が追い付かないという事態になっていました。
都市部から離れた集落では水道が利用できず、井戸水を掘って飲み水を確保していたという話も。水道施設の老朽化も進み、適切な水道サービスを受けられたのは市民の50%ほどであったというデータもあります。
公営の水道会社では到底市民に対する水道サービスをカバーできない、それこそが水戦争の始まりでした。
始まった水戦争! 水を取り返すための市民の戦い!
公営の水道事業ではとても賄いきれなくなった為に、国はコチャバンバの水道サービスを公営ではなく民営化することを決断。
アメリカの大手建設会社ベクテル社の子会社になるトゥナリ社にコチャバンバンの水道の経営権が託されました。すると、トゥナリ社は水道サービス向上の為のダム建設を理由に法外な料金を徴収。
市民の所得に応じての値上げでしたが、貧困層からは10%、富裕層に至っては200%の値上げ。市民の支払う水道料金は一気に倍以上に値上がりしました。
当然支払えない家庭も出てきますが、料金を支払えない家庭には容赦なく水道サービスを遮断。水道を利用できない家庭がコチャバンバで続出しました。
水道民営化により、お金を持つ者しか水を飲めなくなってしまったコチャバンバ。当然、市民の怒りは爆発。2000年に市民がデモやストライキを決行。数百万人のボリビア人がコチャバンバに集まり抗議しました。
そして同年4月に行われた大々的なデモで死者9人、重傷者100名を出す紛争のような事態になりました。そのデモにより水道民営化は撤廃され、再び水道事業は公営サービスによるものとなり現在に至ります。
現在、コチャバンバでは普通に水道を利用できるようになっています。もちろん山岳地帯で水不足に悩まされることもあり、2週間に一度断水があるようですが、各家庭には地下や屋根に貯水タンクを備えていて対処しているようです。
当たり前のように利用できる水道水が、企業の利益重視のサービスによって利用できなくなったら? いったい水は誰のものなのか? 深く考えさせられるテーマです。
そんな悲しい歴史を乗り越えたコチャバンバ。この町の人々には水戦争に打ち勝った強さがあります。