0泊3日で、熱田神宮と伊勢神宮をお参りすることができる
日本

先日往復夜行バスを利用して0泊3日という強行軍で名古屋の熱田神宮と、伊勢神宮外宮・内宮及びその周辺をまわってきました。

新たな発見も多く、これにより自分の行動範囲が広がったと思います。そこで皆様にも今回の体験をご紹介したいと思います。

きっかけはテレビで紹介された「弾丸ツアー」

皆様は「伊勢神宮弾丸ツアー」と呼ばれる旅行プランがあるのをご存知でしょうか。

テレビでも紹介されていましたが、東京をバスで夜出発して翌早朝に伊勢に到着し、伊勢神宮外宮・内宮及び周辺の主要ポイントをまわり、その日の内に東京に帰るというツアーです。

費用については「9,980円より」となっていますが、日程を見るとほとんどが4列の通常シートで14,800円、足もとがゆったりした「楽々シート」で17,800円です。

伊勢神宮は何といっても日本の神社の頂点に君臨する存在であり、御朱印集めにはまった者としてはぜひ訪れたいところですが、東京からだと金と時間の両面でそう簡単に行けるような場所ではありません。

その点で0泊2日という短時間でしかも安くまわれるとは何とも魅力的ツアーではないですか。

怒りが思いがけないアイデアを生みだした。


本気で申し込むつもりで説明文をよく読むと、「女性1名の参加が多いため、男性に関しては、隣席が女性にならない申し込みに関してのみ受付可。(例:男性2名参加、ご夫婦で参加等)」とありました。

どうやら男性1人では受け付けてくれないようです。ここで「ふざけんじゃねえ」という気持ちになったのが今回の強行軍を思い立ったきっかけでした。

腹立ちまぎれにいろいろ調べてみると、東京~名古屋なら夜行バスがこの時期何と2,000円台からあることがわかりました。

夜行バスで4列はきついので3列シートの便にしても4,000円台で行けそうです。名古屋着なら熱田神宮にもお参りできます。0泊3日の強行軍ですが、やってみる価値は十分にありそうです。

そうと決まったら、自分でも驚くくらいの勢いで手配を済ませてしまいました。横浜シティーエアターミナルを夜中の0時半に出発し、名古屋には翌朝の6時過ぎに到着しました。

強行軍のスタートは早朝の熱田神宮


まずお参りするのは熱田神宮です。名鉄で神宮前駅に移動して7時に熱田神宮の東門の前に立ちました。

熱田神宮は三種の神器の1つである草薙剣を御神体とする神社です。第12代景行天皇の時代に剣は東方遠征に向かう日本武尊(ヤマトタケルノミコト)に託されます。

日本武尊は遠征の帰路に立ち寄った尾張で結婚したのですが、剣を尾張に残したまま伊勢に戻ることなく死んでしまいました。そこで妻の宮簀媛命が社地を定め、剣を奉斎鎮守したのが熱田神宮の始まりです。


熱田神宮の拝殿です。熱田神宮の本宮は伊勢神宮と同じ神明造です。

明治26年までは尾張造という独特の建築様式だったものを変更しました。そこには何としても伊勢神宮と同格になりたい熱田神宮と、これを阻止したい伊勢神宮の間の綱引きがあったようです。

尾張と言えば織田信長ですが、桶狭間の戦いに際して戦勝を祈願し、お礼に奉納された信長塀が現在まで残っています。土と石灰を油で練り固め、瓦を厚く積み重ねています。

熱田神宮の御朱印です。熱田神宮のように格が高い神社の御朱印は実にシンプルです。

熱田神宮
愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1
公式HPはこちら

神明造の迫力に圧倒された伊勢神宮外宮


熱田神宮のお参りを終え、伊勢神宮を目指して近鉄で宇治山田へ移動しました。

さすが私鉄としては日本最長の路線網を持つ会社だけあって運賃表がでかい! 日頃見慣れた東急のものとはまるで違い、駅を探すのも一苦労でした。

名古屋に戻るまでに外宮と内宮、猿田彦神社、そして伊勢神宮別宮の月讀宮、倭姫宮、月夜見宮の御朱印を頂くことを目標としました。(赤線を引いています)

伊勢神宮の祭典は「外宮先祭」と言って、まず外宮から先に行う習わしとなっており、お参りも外宮からまわるのが正しい順路とされています。

外宮の豊受大御神は内宮の天照大御神のための食事を司る神であり、そこから転じて衣食住・産業の守り神でもあるとされています。第21代雄略天皇の時代に、丹波から等由気大神を伊勢に招いてお祀りしたのが始まりです。

外宮の内部はこのような配置となっています。

防火のための堀川が流れ、火除橋が掛けられています。ここが神域の入り口です。参道を進むといきなり広大な空き地が出現して驚きましたが、こちらは古殿地(こでんち)といいます。

ここは前回の遷宮まで御殿が建っていた場所で、正宮と同じ広さがあります。伊勢神宮では式年遷宮のために正宮も別宮も全て隣接した場所に同じ広さの古殿地があるのです。中央にあるのは「心御柱」を納めた覆屋です。

宮内に3カ所ある別宮をお参りした後、いよいよ伊勢神宮外宮の正宮に向かいます。

正宮の拝殿で、ここが撮影可能なギリギリの場所です。拝殿の脇に出ると神明造の社殿が連なる姿を見ることができるのですが、迫力ある姿に圧倒されました。

伊勢神宮外宮の御朱印です。「外宮之印」という朱印と日付だけ。熱田神宮よりもさらにシンプルです。

伊勢神宮外宮
三重県伊勢市豊川町279
公式HPはこちら

五十鈴川で身を清めた伊勢神宮内宮


外宮のお参りを終えて次はいよいよ今回の旅のメインイベントである内宮のお参りです。外宮からバスに乗るとテレビで何度も見たあの場所にたどり着きました。

伊勢神宮内宮は三種の神器の1つである「八咫鏡」を御神体として祀った神社です。八咫鏡は代々宮中で祀られてきましたが、第10代とされる祟神天皇の時代に安定した地を求めて各地をまわり、最終的に伊勢にたどり着きました。

有名な宇治橋です。こちらも式年遷宮の度に架け替えていますが、20㎝の厚みが20年間で平均8㎝減るそうです。

宇治橋の全体像です。この角度からの姿は珍しいのではないでしょうか。

内宮はこのような配置になっています。

五十鈴川手洗場です。五十鈴川は式年遷宮に必要な1万本以上の木材を輸送する手段として重要な役割を果たしていますが、一方で聖なる川として身を清める場でもあります。

ということで五十鈴川の清流で手を清めます。

いよいよ内宮の正宮まで来ました。階段から上が撮影禁止です。拝殿から横に移動すると奥まで見渡せるのは外宮と同じです。

奈良や京都の寺院は木材に漆を塗るなどして長持ちさせるように工夫していますが、伊勢神宮は古代より建替えを繰り返すことでその姿を現代まで残してきたのです。

日常から切り離された空間に独特の様式で建てられた社殿が連なる、何とも神秘的な光景にしばし立ち尽くしました。

江戸時代の人々は「一生に一度はお伊勢参り」というほど伊勢に憧れましたが、現代人も一度はお参りしておいた方がいいと強く思います。

伊勢神宮内宮の御朱印です。日本の神社の最高位である伊勢神宮内宮の御朱印はこれでいいのです。

伊勢神宮内宮
三重県伊勢市宇治館町1
公式HPはこちら

「おかげ横丁」で伊勢うどんと赤福を味わう

念願だった伊勢神宮内宮・外宮のお参りを終えましたが、帰りのバスは名古屋駅前23時55分発車予定なので時間はまだ腐るほどあります。

取り急ぎ「おかげ横丁」で腹ごしらえしました。

伊勢うどんの「ふくすけ」です。

有名な「赤福」本店です。

おかげ横丁
三重県伊勢市宇治中之切町52
公式HPはこちら

猿田彦神社から月夜見宮までひたすら歩いた


お腹を満足させたところで「弾丸ツアー」においてはオプションとなっている猿田彦神社にお参りしました。

御祭神である猿田彦大神は「みちひらき」の神とされています。天孫降臨の際に瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を出迎え、高千穂までご案内したのが猿田彦大神です。

そのため猿田彦神社は物事の始まりの際に道標となってくれる神様とされています。

次いで伊勢神宮の宮域外の別宮である月讀宮・倭姫宮・月夜見宮をまわりました。別宮とは正宮の『わけみや』という意味で、正宮についで尊いお宮のことです。社殿は神明造で、正宮と同様に式年遷宮の際に建替えます。

月讀宮は社殿が4つ並んでいます。(手前から伊佐奈弥宮、伊佐奈岐宮、月讀宮、月讀荒御魂宮)式年遷宮のための古殿地は社殿の奥にあります。

月讀宮(つきよみのみや)は天照大御神の弟である月讀尊を祀っています。太陽を象徴する天照大御神に対して月を象徴していて、同じ兄弟でも乱暴者のスサノオと比べるとまことに静かな存在でした。

次いで伊勢神宮の創建者である倭姫命(ヤマトヒメノミコト)をお祀りしている倭姫宮です。

八咫鏡を安定してお祀りできるような場所を探して伊勢まで巡幸したのが倭姫命です。伊勢神宮の他の別宮の創建は奈良時代以前というものばかりですが、倭姫宮はぐっと新しく何と大正12年の創建です。

最後は月夜見宮です。

これまでまわってきた月讀宮と倭姫宮は伊勢神宮内宮の別宮ですが、次の月夜見宮は外宮の別宮で、月夜見尊と月夜見尊御荒魂を御祭神として祀っています。ちなみに月讀宮の御祭神である月讀尊と月夜見宮とは同一神であるとされています。

伊勢神宮周辺で頂いた御朱印です。

猿田彦神社
三重県伊勢市宇治浦田2-1-10
公式HPはこちら

まだ時間があったので夫婦岩を見に二見ヶ浦にも行ってみた

月夜見宮のお参りを終えたのが15時半でした。猿田彦神社からひたすら歩いたためもはや足がガクガクになっていましたが、帰りのバスまではまだ時間があります。

そこで夫婦岩で有名な二見興玉神社にも行ってみることにしました。伊勢市駅前のバス乗り場をくまなく調べましたが夫婦岩方面に向かう路線はないようで、JR東海の参宮線を利用することにします。

二見興玉神社は夫婦岩の沖合700mの海中に沈む興玉神石(おきたましんせき)を拝む神社です。

興玉神石は東西216m×南北108mの霊石で、「みちひらき」の神である猿田彦大神の化身とも猿田彦大神が立たれた場所ともいわれています。この興玉神石を拝むための鳥居の役割を果たしているのが夫婦岩です。

二見興玉神社の御朱印です。こちらが今回の旅のゴールで、この後は名古屋に戻って帰りのバスに乗りました。

二見興玉神社
三重県伊勢市二見町江575

最後に締めてみたら驚くほど安上がりな旅だった

結局今回の強行軍に要した旅費をまとめると、

・夜行バス代8,500円(行き4,000円 帰り4,500円)
・名鉄名古屋~神宮前往復 460円
・近鉄名古屋~宇治山田 1,450円
・外宮~内宮 バス 430円
・伊勢市~二見浦 JR 210円
・二見浦~名古屋 JR 2,170円

合計 13,220円

これだけの交通費で東京を出発して名古屋・伊勢を駆け回ることができました。伊勢神宮弾丸ツアーと比べ、費用面でも内容面でも上回ることができたと思います。

とっさに思いついた企画ですが実に興味深い結果となりました。このやり方で今後も日本各地に行ってみようかとも思っています。

この記事を書いた人

鶴間正二郎

鶴間正二郎

徳島県出身。いまどきMT車にこだわる車好きだが、鉄道好きでもある。善光寺御開帳の際に御朱印の美しさにはまり、現在各地の寺社をせっせとまわっている。最近では厚木基地に離発着する飛行機の撮影に挑戦を始めた。

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