昭和初期の名建築がもうすぐリニューアル休館。「神戸市立博物館」の今見ておきたいポイントとは
日本

昭和10年竣工写真

日本に居ながらちょっと外国気分が味わえる 異国情緒ただよう街、神戸。神戸市立博物館は旧外国人居留地内にあり、旧横浜正金銀行(現 三菱東京UFJ銀行)神戸支店ビルを転用して開館した、とても素敵な佇まいの博物館です。

そんな神戸市立博物館、実は2018年2月5日から2019年11月まで、1年半あまりをかけての大規模なリューアルのため休館します。現在リニューアル前最後の展示となるボストン美術館の至宝展が開催中。

休館前に見て欲しい、神戸市立博物館の小さなヒミツをちょこっとお伝します。

もともとは2つの施設だった博物館

1_文化財リスト
神戸市立博物館は神戸市立南蛮美術館と考古館を統合して1982(昭和57)年秋に開館しました。基本テーマは「国際文化交流、東西文化の接触と変容」。地域の歴史を伝える貴重な資料を展示しています。

館蔵品には六甲山南斜面で発見された、国宝 桜ヶ丘銅鐸(どうたく)をはじめ、重要文化財の織田信長像や聖フランシスコ・ザビエル像、伊能忠敬の地図 伊能小図(西日本図)など「あっ、これ知ってる!」というようなものもたくさん。

コレクション数はなんと約70,000点(2016年4月現在)です。

昭和の名残を残す名建築

昭和10年竣工写真
博物館の建物は、元は銀行だったものを転用しています。旧横浜正金銀行 神戸支店ビルは日本人初の英国公認建築士である桜井小太郎の設計で1935(昭和10)年に竣工しました。こちらは桜井氏が引退前に手がけた最後の作品で、昭和初期の名建築と言われています。
3_建物写真
正面にはパルテノン神殿に代表されるドリス様式の円柱が立ち並び、国の登録文化財にも指定されています。シンプルですが荘重な建物です。

内装で一番当時の姿を残すホール

4_ホール
もとは銀行であったこの建物。当時の面影を一番色濃く残すのが、外観とホールです。開放感ある吹き抜けのホールは銀行時代は業務室でした。「客だまり」と呼ばれる待合と業務カウンターがあったところです。
5_天井
当時の面影を残すホールの天井を見上げてみてください。よく見ると繊細なギリシャ風デザインの装飾が見えます。

そのまま残る金庫室のなごり

5_金庫
銀行といえば金庫ですよね。金庫室はいまでは展示室として利用されています。1階部分にあり、分厚い扉は外され、そのなごりのみを残して居ます。
6_金庫室
写真の濃いグレーの枠部分が扉がはまっていた部分です。さすが分厚いですね。解説文もついているので合わせて楽しみましょう。

発見された建築当時の青焼き

7_青焼き
リニューアルの際の整理でこの建物の建築図面「青焼き」が発見されたそうです。青焼きには設計者である桜井の印鑑の他に昭和10年に建物に手を加えた際の日付なども残されています。これも貴重な資料ですね。

震災の傷跡も

8_エレベータ前
1995年に起きた阪神・淡路大震災。神戸市立博物館のある場所は震度7を記録した激震地区でした。十分な強度をもって設計・補強されていたので、建物自体は致命的な損傷をうけずに済みましたが、博物館開館時に増設された新館との連結部分にはズレが生じました。

写真のエレベータ前が少し坂になっているのがおわかりでしょうか。これがそのズレの名残です。こちらは強度に問題はないため、今のところリニューアル後もそのまま残される予定だそうです。

国宝もあり 充実の常設展

9_銅鐸
常設展では国宝桜ヶ丘銅鐸(どうたく)の実物が展示されています。(事情によりレプリカ展示の場合もあります。)国宝ともなれば、なかなかじっくり現物を見る機会もないのですが、ここではゆっくりとガン見できます。

何のために作られたか、いまだ謎の銅鐸

9_銅鐸展示室
弥生時代に作られたとされる銅鐸。古事記や日本書紀などの文献にも全く登場しないため、何のために作られたのか未だにはっきりと分かっていません。

銅鐸の用途は日時計、入浴用の湯沸しなど諸説ありますが、農耕祭祀の祭器というのが有力な説のようです。
10_銅鐸アップ
銅鐸に描かれている単純な線の落書きのような文様。なかなか味があって面白いです。じっくり眺めて古代のロマンに浸ってください。

常設展示室は写真撮影もOK(一部例外もあり)。古代の祭祀に使用されたとされる銅鐸。撮ってスマホの待ち受けにすれば、古代のパワーにあやかれるかもしれません。

リニューアル後はこうなる!

11_リニューアルパース
リニューアル後はどうなるのでしょうか。わかりやすく情報を伝えるための再構築として、展示スペースの集約が行われます。

具体的には、現在1・2階にわかれている神戸の歴史の展示を1階に集約。さらに2階には銅鐸の展示室に美術や古地図の展示室などコレクションを生かした展示が集約されます。

1階スペースを無料開放

12_トムセン邸写真
現在チケットを購入しないと入ることのできない1階が無料開放スペースに変わります。さらにライブラリカフェやミュージアム機能などを南側に集約。市民や観光客が利用しやすい空間になる予定です。

そして窓を開放感あるガラスに変え、今より明るく。もとが銀行という建物の性質上、外から見えづらかったものを、まちに開かれた博物館というテーマでより入りやすい空間に改装します。

現在1階に展示されている異人館 旧トムセン邸は特別室として建具などをライブラリカフェの一部に使用する予定なのだそう。レトロモダンな建具や家具どのように利用されるか楽しみですね。

トイレや授乳スペースなども改良され、散策の合間に立ち寄りやすい、親子でも利用しやすい博物館に生まれ変わります。

リニューアル前 最後の展示も見逃せない!

12_看板
無料スペースもできて、気軽に立ち寄れるスペースになるリニューアル。どんな空間になるのか、ちょっと楽しみですよね。でも休館はもう少し先、最後の展示も素晴らしいのでぜひ足を運んでみてください。
13_展示
リニューアル前最後の展示となる「ボストン美術館の至宝展」には古今東西の至宝80点が集結。

コレクションの形成に寄与したコレクターやスポンサーの活動にも光を当てたという日本のみの限定企画で、古代エジプト美術から現代アート、ツタンカーメンからアンディ・ウォーホルまで幅広い珠玉のコレクションを堪能できます。

ゴッホの自信作がペアで来日

14_ゴッホ
こちらはゴッホの友人 ルーラン夫妻を描いた作品。もともとペアの作品ではないのですが、夫妻揃っての来日、展示室で静かに私たちを迎えてくれます。南仏アルルでゴッホと家族ぐるみで交流したルーラン夫妻。優しい眼差しに画家の親愛の情が表れているようですね。

100年後の人々にもまるで生きている人物が目の前にいるような感覚を与えたいと考えていたゴッホの自信作を日本で見られる……幸せですね。

170年ぶりの里帰り! 巨大涅槃図も

14_涅槃図
さらにはボストン美術館でも過去一度しか展示したことがない、英一蝶の幻の巨大涅槃図も約170年ぶりに初の里帰りを果たしています。

170年前といえば江戸時代! 今回の展示のために約1年かけて修復されたという巨大涅槃図。ガラス越しではありますが近くで見られますので、鮮やかな色彩と細やかな表情を感じてください。

特別展 ボストン美術館の至宝展 東西の名品、珠玉のコレクション
兵庫県神戸市中央区京町24番地 神戸市立博物館
営業時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
※展示によって変更あり。公式ホームページ等で確認を。公式HPはこちら

この記事を書いた人

Sige.

Sige.トラベルライター

フリーのイラストレーター・デザイナー。 愛媛県出身。大阪市在住。 今は大阪在住ですが、学生時代から長く京都に住んでいたので、京都の情報も多数。 パンダと新幹線が好き。仕事柄、美術館やギャラリー巡りも大好物です。 京都・大阪など関西の情報を中心に面白い事・ものの情報をお届けします。

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