白雲山鳥居観音は、広さが約30ヘクタール(東京ドーム6.5個分)ほどあります。現在の埼玉りそな銀行初代頭取が、30年以上もの長い歳月をかけて築きました。まだ、山全体が迷彩色のような紅葉ですが、赤と橙のグラデーションの紅葉狩りが見ごろ直前の寺社仏閣巡りをご紹介します。
鳥居観音の攻略法はふたつ
鳥居観音の参拝は、ハイキング気分で山歩きする方法と、バイクやクルマに乗ったまま専用道路で山道を上がっていく方法があります。参拝には、大人(中学生以上)200円、子供(小学生以上)100円、バイク300円、クルマ500円の入山料が必要となります。
ほとんどの人はクルマを鳥居前にある駐車場に停めて、歩いて参拝してしるようです。
インターネットで調べても情報の少ない参拝方法なので、あえて紹介しますが……。荒削りの山道を、鳥居観音のシンボルになっている山頂救世大観音まで歩くと、体力のある人ならば約40分、ゆっくり歩いて約60分で着きます。徒歩のみでしか参拝できないルートの仁王門から玄奘三蔵塔(げんじょうさんぞうとう)まで歩いてみましたが、運動不足のワタシばかりか20代の若い人でも5分ほどで息が上がるような、階段の少ない山道が続きます。
あまり知られていませんが、バイクやクルマなら約1kmの専用道路が整備されているので楽チンなのですが、道幅が狭く、すれ違いするための退避スペースは数えるほどしかありません。
想像を超える急こう配の坂道には、ヘアピンカーブもあります。急な上り坂ばかりなので、軽自動車や坂道発進が得意じゃない人のクルマが立ち往生することも少なくありません。どちらが良いか、自己判断が必要です。
前置きはこれぐらいにして、いざ出発です。ちなみにワタシは、想像通りクルマで参拝します。入山料をセルフで、奉納金入に500円納めます。入山料が高い印象があると思いますが、奥武蔵の険しい自然を切り開いた参道を通ってみれば、いかに有り難いか実感できると思いますよ。
徒歩ルートの最初は本堂から
本堂には、ご本尊の聖観音が祀られています。参拝のために、境内にお邪魔するご挨拶をしましょう。
中央入口のガラス扉には、直径1.5mの大法輪と、四隅に梵字が描かれています。本堂に向かって右側に、水かけ観音や地蔵堂があります。左側には、お守りなどの販売所と、奉納所があります。
本堂から歩いて8~10分ほどで、仁王門につきます。本堂もそうでしたが、急峻な坂に建てられているものが多く、見上げる角度がキツイので首が痛くなるかもしれません。もったいない話ですが、屋根などの装飾は観えないものが多いようです。
屋根があるものの風雨に晒されてしまうためか、仁王像は首から下がガラス張になっていてよく観えません。お顔だけ拝見!
鳥居観音の開祖、平沼彌太郎の母の恩重堂です。鳥居観音の最初のお堂で、親孝行の息子が母親の遺言を実現させたものです。
直径5mの地球の上に立つ観音様なんて、ディズニーランド風のコラボなのか?テーマパークでも観たことがありません。これまでの仁王門や恩重堂などは日本の寺社仏閣ならありそうな建物ですが、平和観音の世界観がとてもシュールです。
前を歩く女性3人グループは、狭い峰の上にあるらせん階段を、「怖い!怖い!」と叫びながら登っていました。
それぞれの峰に立つ建造物を望むことができる平和観音からの眺めは、彼女たちの目に入ったでしょうか? 疑問です。左から、「玄奘三蔵塔(げんじょうさんぞうとう)、大鐘楼(だいしょうろう)、納経塔、救世大観音」を望み、鳥居観音のスケールの大きさを感じさせます。徒歩の山道は、平和観音から約15分歩くと、左にある玄奘三蔵塔まで続いています。
バイク・クルマ専用ルートの最初はインパクトの強い玉華門
タイの雰囲気が漂う玉華門の白い門柱は、小学校の理科の授業で使うような磁石の形をしています。これは、タイのチェンマイのお寺の様式を取り入れたものです。
専用道の中でも一番急峻な坂の途中にあるため、クルマを停める人はほとんどいません。通り過ぎるドライバーさんたちは、みんな目を丸くしていました。運転に自信のない人は、決して真似をしないでください。
紅葉が川沿いの玉華門から山頂に続く、見どころたっぷりのエリアに入ります。
ヘアピンカーブの狭い峰にある大鐘楼(だいしょうろう)です。場所が場所だけに、クルマを停めるには勇気が必要です。
峰を走る専用道の両側が、モミジに覆われています。移動するたびにモミジの色彩が変化して、紅葉狩り感を味わえるエリアです。
鳥居観音で一番の紅葉狩りスポット
専用道の途中にある「玄奘三蔵塔(げんじょうさんぞうとう)」前の駐車場です。塔のスグ左側から上って来たのですが、急坂のためあまり道路が見えません。
塔の周りの間近でモミジを楽しむことができるエリアは、北野武監督映画「Dolls」の撮影シーンに使われました。自分の出世のために別の女性と結婚しようとする西島秀俊と、それを知ったショックから精神を病んでしまい、認知症のような状態になる菅野美穂が歩いているシーンを飾りました。
真っ白な玄奘三蔵塔と真っ赤なモミジは、それぞれがお互いに映える関係にあり、「Dolls」のなかで演じられるふたりの恋愛ストーリーにピッタリだったのかもしれませんね。
玄奘三蔵塔には、「西遊記」に出てくる三蔵法師の霊骨が祀られています。
ドラマ『西遊記』で難路天竺を旅行する、夏目雅子演じる三蔵法師のイメージとはぜんぜん違う玄奘三蔵法師像です。
奥武蔵の山奥にいることを忘れてしまうような、真っ白な彫刻と真っ赤なモミジ。
山の峰にある狭い場所にも関わらず、見応えのある玄奘三蔵塔エリアです。ダジャレのように聞こえるかもしれませんが、ゆっくりしたいのは山々ですが、山の夕暮れは早いので、先を急ぎましょう。
ガンダーラ遺跡から発掘されたものを参考にして、造られた納経塔です。
10,000巻の般若心経を始めとして、多数の写経が収められています。
鳥居観音のシンボル的存在の救世大観音
専用道路を突き当りまで進んだ所にある救世大観音。麓からも観える大観音は、基壇の高さが10m、中央大観音の高さが23mあります。土日祝日(冬期を除く)には、大観音堂内を拝観することができ、高さ27mの展望台からは、奥武蔵の山々を一望できます。救世大観音の胎内拝観料は、大人ひとり(中学生以上)200円、子供ひとり(小学生以上)100円が必要です。平日の参拝だったので、大観音堂の展望台は、次回の楽しみです。
3体の巨像が並ぶデザインは、日本中探しても他に観たことがありません。峰に立つ大観音足元のスペースからは、青空をバックにすると、更に大きく観えます。柵も無いうえに狭く、ベストショットを撮りたいがために、カメラを覗きながら上ばかり見ていると、崖から落ちてしまうかもしれません。
大観音足元の入口柱は、ギリシャのクレタ島にある、クノックス宮殿の逆さ柱のデザインが取り入れているようです。
近くで観ても遠くから観ても存在感のある大観音ですが、足元から観る眺めも引けを取らないと思いますよ。
ココまで秘境とも言える超急坂を上がってきたのですが、下りは別な恐怖を感じました。鳥居観音は気軽に辿り着けない紅葉狩りスポットですが、ユーラシア大陸の寺院巡りしているような感覚になります。紅葉狩りするなら、玄奘三蔵塔の周りがイチオシです。
入山時間:午前9時から午後4時まで
※12月中旬~3月中旬まで、路面凍結のため専用車道は閉鎖になりますが、歩道は利用できます。