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    知床で野生のヒグマに出会う方法、知ってますか?クルーズ船で本気で探してきた
    日本

    知床のヒグマ

    突然ですが、世界自然遺産の地である北海道・知床で野生のヒグマに出会う方法、ご存知ですか?
    知床といえば大自然。北海道の大自然といえば、ヒグマ。木彫りの熊が有名なこともあって、一般的な知識を総合すると、
    「まあ、適当に知床に行けば、会えるんじゃない? いっぱい生息してるだろうし」
    という結論に至るのはそれは当然かもしれません。
    しかしよく考えてください。大自然を探索してたらばったり会えちゃいました、という偶然の出会いが歓迎される相手ではありません。そんなかんじでばったり会っちゃったら、たぶんただでは済みません。そしてヒグマの側も、基本的には人間と出会わないように暮らしているもの。なので熊よけの鈴などで人間の存在を知らせながら登山したりするわけです。

    では、もし……私たちのような一般的な観光客が「ひと目でいいから、知床で野生のヒグマを見てみたい」と願ったら、どんな方法をとったら良いのでしょうか。人間のエゴを全開にした願いごとではありますが、そこは世界的な観光地としての知床の実力の見せどころでもあります。
    二年越しの願いを叶えることに成功した私の試行錯誤を、ご覧ください。

    知床歩いてたら会えるかも……と思ってたのは私です

    初めて知床の地に足を踏み入れたのは、春先のことでした。
    当時気合を入れてカメラレンズを新調した私は、もう野生生物をパシャパシャと撮りまくる妄想が止まらず、鼻息荒く知床五湖の地上遊歩道の散策に出向いたわけです。
    その様子については、当時書いた知床「地上遊歩道」の記事でご覧いただけると幸いです。
    知床五湖
    雪化粧をしたままの知床連山と、その姿が映る湖面、岸辺には水芭蕉が顔を出す。静寂の中には風の音と鳥の声しか響かず、人間の存在がどんどん小さくなっていく、そんな場所です。だからこそ、手を叩いて音を出し、ヒグマに自分の存在を知らせる必要がある……そんなちょっとサバイバル感も出るのが地上遊歩道の散策でした。
    そうしてようやく実感として気づくのです。
    こんな地上でヒグマなんかに出会ったら、本当に死ぬわ、と。

    そうか、クルーズという手があるのか

    そこで第二の手段を発見したのです。地上がダメなら、海に出ればいいじゃない。完全に安易な気持ちです。クルーズ船で知床岬までいくことにした当時の記録も記事として残っておりますので、ぜひ参考までにご覧ください。
    知床岬
    先ほどご紹介したい当時の記事には、私、こう記していました。

    肝心の、ヒグマ。
    遭遇率95%以上とのことでしたが……
    なんと、この日、ものすごい遠くで、うずくまって寝ているヒグマしか見ることができませんでした……。
    逆に何も見れない日は珍しいのではないかと思います……。
    これはもう一度、知床に行かなければならないということだと思っております。
    ちなみに、秋になると、ヒグマが鮭を捕る姿を見ることができるそうです。そういうワイルドなヒグマに出会いたかったなあ、なんて、春先に行っておいて恐縮ですが、そう思うばかりです。再度訪れるべき確固たる理由ができました。

    ヒグマだってそれは野生生物だもの、冬は冬眠するし、秋になったら鮭を捕りに海に出るんです。そう、秋なら! 秋ならきっとヒグマに高確率で会える!
    ……というわけで、今年の秋。

    本気の「ヒグマウォッチングコース」に乗船

    ここで知床のクルーズ船事情について、まとめておきましょう。

    大型船か、小型船か

    船上から知床半島を眺める選択肢として、大きく分けて2種類あります。
    まずは大型船。大型船は知床観光船 おーろらが就航しているのですが、小型船に比べて揺れが少なく、水しぶきを浴びる危険性も少ないです。一方、「大型」ということもあって小回りが利かないため、断崖近くまで接近することはできません。
    一方の小型船は、まったくその逆。波の状況によってはけっこう揺れますし、人によっては酔ってしまうかもしれません。しかし、小回りが利くので崖と崖の間を縫うように入り込むこともできたり、ヒグマを見つけたら方向転換したりなどの融通がかなり利きます。
    ……ヒグマを全力で探したい場合、どちらに乗船すべきかは一目瞭然ですね……!
    知床クルーズ
    今回乗船したのはこちらの小型船、ゴジラ岩観光さんの知床半島ウトロクルーズです。たまたまですが、後ろに写っているのが、大型船のおーろらです。

    知床岬まで行くのか、野生動物を見るのか、硫黄山までなのか

    次に悩ましいのが、クルーズ船のコース選択です。どのクルーズ船の業者を選んでもだいたい3コースが用意されています。こちらのゴジラ岩観光さんのコース案内図がわかりやすいので合わせてご確認ください。

    一番距離が短いのが、「硫黄山コース」。所要時間1時間程度、お値段も3,000円台と割安です。コース名のとおり、「硫黄山」あたりまで……つまり、その硫黄山から湧き出るお湯で形成される「カムイワッカの滝」まで航行して引き返すルートをとるのですが、主に「滝や断崖絶壁を見たい!」という方はこちらで十分かもしれません。圧倒的なスケールの柱状節理の岩肌を眺めると、自然の広大さに吸い込まれそうになります。

    「カムイワッカの滝」からさらに「ルシャ湾」というエリアまで足を伸ばすのが、「ヒグマウォッチングコース」。ルシャ湾は、岩がごろごろと転がり、ヒグマなどの野生動物も海に出やすい地形になっているので、「ヒグマのメッカ」なんて呼ばれています。所要時間は約2時間、お値段は5,000円台です。

    ここまで来たからには知床のすべてを見たい! なんなら国後島(北方領土)まで見たい! という方は、「知床岬コース」一択です。私も最初にクルーズに乗ったときは欲張ってこのコースにしました。ルシャ湾を越えて、ついに見えてくるのが、風が強すぎて草木が育たない、岬の先端です。所要時間約3時間、お値段は8,000円前後となります。

    カムイワッカの滝
    さて、私はカムイワッカの滝まで船をサクサクと進めました。「ヒグマウォッチングコース」を選択しても、「硫黄山コース」と同様に、「フレペの滝」などの要所に立ち寄って、船長の説明を聞くことができます。
    しかし今回の私の乗船目的は、ただひとつ。
    野生のヒグマ、あなたに会いたい。

    ヒグマの前に、天然記念物「オジロワシ」に遭遇

    運が巡ってきていると言って良いかもしれません。国の天然記念物に指定され、絶滅危惧種ともなっている「オジロワシ」が、なんと目の前の岩にとまっているではありませんか。
    オジロワシ
    ……翼を広げるとなんと2mもあるとのことで、その迫力を見たい……のだけど、優雅に羽を休めている関係で、羽ばたく姿は見ることができませんでした。
    オジロワシ
    毛づくろい。

    秋は鮭の遡上シーズン! ルシャ湾にもヒグマは狩りに来るはず!

    いよいよルシャ湾に突入……の前にあとひとつだけ!
    知床は秋。鮭の遡上シーズン真っ盛りなわけですが、実は鮭の遡上自体はこの地域に来ればまったく珍しくありません。通りかかりの川を見ると……
    遡上する知床の鮭
    鮭。黒くて細長いシルエットはすべて、鮭です。
    遡上する知床の鮭
    よく見ると力尽きた鮭もちらほら。もう川にびっしりと、鮭が詰まっているのがこのシーズンなのです。
    知床の鮭とカラス
    こんなちょっと辛い光景も、実はそこかしこで見ることができます。こうやって鮭の亡骸が鳥などに運ばれ、各所で自然に還っていくことで、その土地がより豊穣となる……それが知床の自然のサイクルの一環なのだそうです。
    ……もちろんヒグマだって、鮭、食べたいはず。今日は絶対ヒグマに会えるという確信が持てる出来事でした。

    いよいよルシャ湾。何頭に会えるかな

    ルシャ湾
    ルシャ湾到着です。ここから怒涛のヒグマ探しスタート。
    船長によるヒグマの探し方講座によると、その探し方は……

    「まず、黒い物体を探します。次に、その物体が動くかどうか観察します。動かなければ岩です。動けばヒグマです」

    ……ものすごい大雑把なかんじがしますが、実際、そのとおりでした。実はけっこう、ヒグマと船との距離は離れています。したがって、ヒグマを本気でまじまじと見たい! という方は、双眼鏡が必須。レンタル可能ですのでお忘れなきように。
    もしくは、私のように、できれば写真に撮りたい! と考えている方は、双眼鏡の代わりに望遠レンズを持っていきましょう。私の今回のレンズは以下のもの。これでもまだ足りない……なんて思ってしまいました。


    APS-Cサイズで55-300mmです


    ではさっそく、肉眼で見たらどんなかんじにヒグマが見えるか、ご紹介させていただければと思います。
    知床ヒグマ
    肉眼で見るほうがもう少し「岩」感がありますし、もっと小さく見えるかもしれません。ヒグマ、わかりましたでしょうか?
    双眼鏡や望遠レンズで見ると……
    知床ヒグマ
    あ、足がなんかかわいい。モフモフしてそう。あれ、ヒグマってかわいいんじゃないか……そんな勘違いのような優しい感情がなぜか芽生えます。このヒグマは、すぐに森に帰っていってしまいました。
    知床ヒグマ
    うーん残念。次のヒグマを探します。……と、船長がヒグマを発見したようで、船が急にひるがえり、その方向へと加速! いた!
    知床のヒグマ
    堂々たる姿に圧倒されます。
    しかしこのヒグマも、お尻しか見せてくれず、悲しいムードが流れ始めました……しかしこの流れを断ち切る出来事が、このあとドラマチックに展開されたのです。

    ヒグマの親子の日常を垣間見てしまった……!

    船長がまたしても船を走らせた先には、子グマの姿が……!
    知床のヒグマ
    子グマのプリっとしたお尻。か、かわいい……。
    するとそこに、海から上がってきたのは……母グマでした!
    知床のヒグマ
    海からザバっとあがり、陸の方へ進んでいきます。すると……
    知床のヒグマ
    母グマ、何かを足元に置いています。それを見た子グマが駆け寄ります。
    知床のヒグマ
    母グマの足元にあるのは……鮭!? よく確認できませんが、たぶん鮭のようなものを母グマが海から持ってきたようです。その鮭の匂いをクンクンしてる模様。
    知床のヒグマ
    子グマも横並びになりました。
    知床のヒグマ
    一緒にクンクンしはじめた……!!
    食べないのか……? 傷んでいたのかなんなのか定かではありませんが、足元の鮭らしいなにかに2頭は集中しているようです。
    知床のヒグマ
    そうこうしているうちに、母グマが鮭らしい何かを置いたまま、立ち去ろうとしています。子グマのクンクンするポージングが可愛いらしくてほっこり。
    知床のヒグマ
    母グマが見ていないところで、子グマがちょっかいを出しています。なんだこれ、かわいい。
    知床ヒグマ
    母グマに置いていかれまいと、その後すぐに後を追うように子グマも去っていきました。鮭のようなものは傷んでいたのか、その場に置いたまま立ち去ったようです。

    ……ああ、ヒグマの日常生活の一部を、野生のまま・ありのままの暮らしを、私はこの目でついに目撃することができたのだなあ……だなんて思うと、じんわりと感激してしまいました。

    大自然を身体中で感じ取れる場所・知床

    ヒグマたちを思う存分ウォッチングできた幸せに浸りつつ、知床連山の景色を堪能しながら帰路を楽しみます。知床の天気は変わりやすいようで……行きに雲がかかっていた、連山。
    知床連山
    今日は山頂は見られないかな、と思ったら。
    知床連山
    帰りは雲が晴れて、美しい山頂のシルエットを確認することができました。そしてほっとしたのか、ちょっと席でうたた寝すると……目を開けてびっくり。
    知床の濃霧
    何も見えない。20分前には雲ひとつなかったはずなのに。自然の脅威を最後まで楽しむことができました。
    知床料理 一休屋
    ちなみに知床のごはんも当然のように美味しいです。知床料理 一休屋さんにて。これだけ鮭の話をしていくらを食べないなんていう話があるわけがなく……いただきます! 大自然に感謝し続ける一日でした。

    ゴジラ岩観光
    今回お世話になったクルーズの会社です。詳しくはこちら
    なお、名前の由来は、この近くに「ゴジラ岩」があるから。その岩の形状、ぜひ確かめてみてください。

    まだまだ知床を知りたい。

    知床を含めた「ひがし北海道」のファンになりつつあり、地元・旭川の記事よりなぜか道東の記事ばかり書いているような気がしています。今度は流氷シーズンに流氷トレッキングなんてしてみたいし、羅臼行ってみたいし、もうやりたいことがいっぱいです。
    ぜひ足を運んでみてください。
    そして、もしクルーズに乗る際は、「ゴジラ岩」と「看板犬」にご挨拶するのもお忘れなく。
    まだまだ知床を知りたい。

    ▲前にクルーズに乗ったときにもいた、看板犬。元気でよかった。

    この記事を書いた人

    春菜 由香(コロポン)

    春菜 由香(コロポン)TRIP'S編集長

    87年北海道名寄市生まれ、旭川市育ち。名古屋大学文学部を卒業後、しばらくゲームを作ってました。Webメディアを作る上でも、とにかく面白いと心から思えるコンテンツだけを出していきたいです。ひがし北海道マニア(自称)、旅ラン専門家(フルマラソン経験あり)、写真家(名乗れるようになりたい)

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