バルカン半島の片隅にひっそりと存在するモンテネグロ。怠け者国家として他のバルカン諸国からいじられるモンテネグロは、強烈な近隣国家のインパクトの前につい霞みがちですが、ふたを開ければあらびっくり。この国も他に劣らず出てくる出てくる。
「人は生まれる時に疲れるので、あとは休むために生きる」、という文から始まる「モンテネグロ十戒」(自虐ジョークが一周して今や誇り)が書かれたお土産用ポストカードが至る所で売られているような国です。買い求めてぜひ会社のデスクに貼ってみたいものですね。
モンテネグロってどんな国?
まずは毎度おなじみ、モンテネグロの位置確認から。
小国が集まるバルカン半島の中でも1,2を争う小ささです。
国土のほとんどが山に覆われ、嘘か本当か、オスマン帝国が襲って来た時はその山々に自ら火を放ち、この「焦土作戦」が功を奏し、バルカン地域で唯一オスマン帝国の支配下に収まることを免れたとも言われています。
さらに第一次バルカン戦争の際は、真っ先にオスマン帝国に宣戦布告し、二の足を踏む他の国々を焚き付けた国です。
▲引っ越しの様子もなかなかワイルド
そんな血の気が多いエピソードには事欠かないモンテネグロさん。
戦争相手が近隣諸国では飽き足らず、なんと、かつて日本にも宣戦布告をしています。
時は日露戦争の時代。
ロシアと同盟国であったモンテネグロは、ロシアの対戦国・日本に向けて宣戦布告。
しかし、蚊帳の外過ぎるその声は誰にも届いておらず、張本人たちもそんなことをしたことをすっかり忘れ、100年以上もの時が経ちました。
正式には、その宣戦布告は取り消されていないので、モンテネグロと日本って、現在でもあれ? 戦争中?!
▲モンテネグロでは広告は壁に直で書くのが基本
こんな戦争好きな国民ってさぞかし恐ろしいのかと思いきや、バルカンの中ではモンテネグロ人は「超怠け者」として有名。
その性格を表すジョークに、「火事とモンテネグロ人」というのがあります。
「火事になると他のみんなが一目散に逃げていくのに対し、最後までベッドに横たわり、炎が自分のくわえた煙草に火をつけてくれるのを待っている。それがモンテネグロ人」
▲イメージ図
血の気が多いわりにどこか抜けている国。
ここからは、そんなモンテネグロの印象を裏付けてくれた場所をご紹介します。
首都なのに何もない ポドゴリッツァ
以前こちらの記事でも少し触れましたが、まずはモンテネグロの首都ポドゴリッツァについて。
ガイドブック等にはよく、「事実上の首都」なんて書き方をされていることも(「憲法上」ではツェティニェ)。
イスラエルでも、首都をエルサレムだと主張する人々と、国際法上ではテルアビブだと見做されている場合があり、何も首都の位置づけが曖昧なのはモンテネグロに限った話ではないはずなのですが、モンテネグロの場合問題はそこではなく、とにかく首都に「やる気」がないこと。
▲しかし地元の人々は全力で楽しんでいます
わたしは幸か不幸か、今まで4回もポドゴリッツァの地を踏む機会に恵まれましたが、4回目なんてモンテネグロを車で横断中に、突然友人が便意を催したため、この町で用をたすのに付き合っただけでした。
「何もない」と言っても不毛の地のように何もないという意味ではなく、それなりにビルや店やバスターミナルはあります。旅行者にとって「見るものは何もない」ということです。
星の王子さま曰く、「大切なものは目に見えない」そうですが、もしやポドゴリッツァもそういうことなのか? なんて恐ろしいことを、最近では考え始めています。
「何もなさ」を敢えて見に行く猛者にとっては、ぜひとも挑戦し甲斐のある町です。
ドブロブニクの二番煎じに甘えるモンテネグロの世界遺産 コトル
アドリア海の湾の奥に中世から残っている要塞都市。
それがコトルです。
見どころは、山のふもとに作られた旧市街。城壁に囲まれています。
端から端まで歩いても数十分しかかかりません。
時計塔や教会があります。
車は入って来られないのでぶらぶら歩くのにはもってこいです。
コトルに来たらぜひ町の背後にそびえ立つ山を登ってみて下さい。
のぼり口が数か所ありどこからでも登れます。
山と言っても階段がある城塞になっているので、普通の靴で大丈夫です。
ただ意外と頂上まで距離があるので、それだけは覚悟しておいてください。
▲はためいているのがモンテネグロの旗
頑張ってのぼると目の前にはこんな景色が広がります。
ドブロブニクにも町を一望できる展望台があり、しかもそっちには頂上までのロープウェイが完備されているのに対し、コトルのは自力でのぼる以外方法がないというこの差。
▲ひと気がないのが渋さを際立たせてくれる
しかし、特にシーズン中などは人で溢れかえるドブロブニクに対し、コトルはそこまで劇混みになることもないので、同じような美しい景色をゆっくりと堪能できますよ。
似たような城塞都市であるにも関わらず、ドブロブニクに人気も知名度も完全に持っていかれている感が否めないコトル。
観光地化されつつあるドブロブニクに辟易しそうな方は、コトルに滞在しながら日帰りでドブロブニクに足を伸ばす、という方法をおすすめします。
▲コトル湾
物価はコトルの方が断然安く、ドブロブニクへ行くツアーも豊富にあるので便利です。
2つの町はバスでたった2時間くらいという距離ですし。
って、あれ、コトルの紹介なのにドブロブニクを基準にしてしまっていますね。
それもまた二番煎じならではの魅力ということで。
リラックスできないビーチ ストモレ
アドリア海の美しい海岸を有するモンテネグロには、いくつものビーチがあります。
▲ビーチでの一場面
その中でなぜ敢えてわたしがストモレに行くことになったのかというと、そこの土産物屋で友人が働いているから、というただそれだけの理由です。
しかも2年連続で行きました。
▲ストモレの位置
多分、2年連続でストモレを訪れた外国人はわたししかいないのではないでしょうか。
はじめてストモレに行った際、現地の人々は口をそろえて「This is your first and last time(最初にして最後のストモレになるね)」と言ってきました。
ジョークだと思ってわたしが笑うと、相手は意外と本気な顔をしていたのが何とも言えなかったです。
▲ストモレのビーチを遠くから
▲ストモレの夕日
しかしモンテネグロの庶民にとっては人気のビーチリゾートです。
観光地化されていないむき出しのモンテネグロビーチ文化を体験したい方にはぜひ訪れてほしい。
特に注目すべきは夜のストモレ。
海岸沿いにいろんなお店が連なる通りがあって、そこがストモレでナンバー&オンリーワンの繁華街となります。
日本の夏祭りに近い雰囲気がありますが、しかしそこはモンテネグロ。
ディスコと飲み屋の数が尋常ではありません。
一応規制で深夜1時になったら各店からダダ漏れる爆音を消すことになっているのですが、こんなに深夜1時を待ち遠しく思ったことはありませんでした。
▲ディスコでの一場面
シーズン真っ只中の8月でも、1部屋20ユーロ(ツイン)なんて宿がたくさんあります。
▲山あいを駆け抜けるモンテネグロの電車
人口:62万人
面積:福島県の大きさとほぼ同じ
言語:モンテネグロ語、セルビア語、アルバニア語
通貨:ユーロ
時差:日本より−8時間
ビザ:90日以内の観光なら不要
物価:コソボ、セルビア、アルバニアより若干高い
気候:沿岸部は温暖、しかし山間部は夏でも肌寒い
人気のスポーツ:サッカー
国産ビール:Nikšićko Pivo(ニクシチコ)
身長:バルカンの中で一番背が高い