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アイスランドの氷河で遭難!?「氷の洞窟探索ツアー」で体感できることとは。

本当は「ICELAND AIRWAVES」という音楽フェスに参加してちょっと市内観光をするという予定でアイスランドへやって来た私ですが、なんと気が付いたら1泊2日の氷の洞窟探索ツアーに申し込んでいました。
 
次いつ来ることができるか分からないとなると急に欲が出て来てしまいました。どうしてもアイスランドの大自然を拝みたいと思ったのと、何よりもアイスランドに到着してからヴァトナヨークル氷河にある氷の洞窟の存在を知ってしまったというのが、思い切って行動を起こした大きな理由です。
 
画像で見るだけでもそれはそれは世にも美しいのです。その存在を知った瞬間に、アイスランドの氷の洞窟は死ぬまでにどうしても見ておきたい絶景のうちの1つになりました。

旅の始まりは突然に……

そうと決まれば、もはや本来の目的である音楽フェスはさて置いて、レイキャヴィクにある沢山の旅行会社を訪れて氷の洞窟探索ツアーの空き状況について尋ねますが、なんせ滞在期間はたったの1週間。しかも人気のツアーということでなかなか空きが見つかりません。
 
つたない英語で交渉すること約半日、私の粘り強さと熱意に屈したある旅行会社がツアーガイドさんに交渉してくださり、奇跡の1席を手配してくれました。出発日は翌日ということでかなり急ですが、もちろんそんなことはお構いなし。
ツアー
ということで、早朝にドライバー兼ガイドさんにホステルまで迎えに来ていただき、アイスランドの自然を体感する旅に出発、出発~!
滝

迫力のある滝と滝の裏側を見て

黒い砂浜を見て
アイスランド景色
アイスランドのだだっ広い自然に圧倒されているうちに、1日はあっという間に終わりました。
残念ながら1日目は途中から天気が崩れ、天気が良ければオーロラハントができるはずだった滞在先のホテルでもオーロラにはお目にかかれず、夜は静かに更けていきました。

旅のハイライト、「ヨークルスアゥルロゥン氷河湖」へ

氷河
氷河
氷河
次の日、まず最初に降り立ったのはアイスランド最大の湖、「ヨークルスアゥルロゥン氷河湖」。氷河が湖に崩れ落ち、氷山や流氷となって浮かんでいるこの氷河湖は、映画のロケ地としても有名なんだとか。ここでは氷河の合間を縫って進むクルーズツアーも人気なようです。
氷河
氷河
氷河
海岸を歩いていると、氷山が割れて流れ着いた氷魂を多数見つけることができました。全部違う形なので気に入った形のものを持ち上げては撮影して楽しみました。

私の人生観を変えた、氷河でのアドベンチャー

実はこの日一番始めに行くはずだったヨーロッパ最大の氷河、「ヴァトナヨークル氷河」は前日の大雨のため氷河に入れる状態ではなく、入り口付近まで行くも中に入るのを断念せざるをえず。氷河に入るための装備も万全にして向かっただけに残念でした。
 
そして何よりショックだったのは、私の中で死ぬまでに見たい絶景、氷の洞窟はここでしか見ることができないので、この氷河へのアクセスがないとなると、この旅の一番の目的を見失ってしまいます。
 
奮発して高いお金を支払って参加したツアーだっただけにダメージは大きいですが、落ち込んでいるツアー参加者たちにガイドさんから朗報が! なんとガイドさんが必死にこの日安全に入ることができる氷河を見つけてくれたというのです。運が良ければそこでも氷の洞窟を見つけることができるかもということで、期待は高まります。
アイスランド車窓
「ヨークルスアゥルロゥン氷河湖」から車を走らせること数時間、やっと氷河に到着!と思ったら……
氷河入り口
氷河に入るには、まず足場の悪い山道を進まなければならないようです。なんだか「ロード・オブ・ザ・リング」の旅みたいで楽しくなってきました。

ひとりで参加したツアーですが、旅の仲間たちはみんな親切でした。氷河というのは未知の世界でしたが、この仲間たちが旅を共にしてくれると思うとかなり心強かったです。
氷河
今度こそ本当に氷河に到着! 本来入るはずの「ヴァトナヨークル氷河」に入ることができなかったため、ツアーには本来組み込まれていない別の氷河にやってきましたが、残念ながら名前を忘れてしまいました……というより自分の中でどの氷河に行くかは重要ではなく、とにかく氷の洞窟が見れるかどうかが気掛かりだったので、氷河の場所や名前は正直全く意識していませんでした。
氷河
この先は険しい山道を下って、いよいよ氷河へと入っていきます。氷河を歩くための装備(装備はツアー費用に含まれます)もバッチリで山道を下り始めたはいいものの、おそるおそる歩いている私は、氷河に入る前に早速転んでしまいました……。
 
高所恐怖症の私にとって、細くて急な山の斜面を下るという作業は視覚的にあまりにも恐ろしく、足がすくんでしまいました。仲間たちに助けられながら無事下山。
氷河
そして氷河への入り口が見えてきました。今までテレビでしか見たことのなかった光景が目の前に広がっていて、自分がそこに足を踏み入れるなんて夢みたいでした。このときの私はまだ見ぬ世界への期待や興味が大きすぎて、ワクワクする気持ちが、何が起こってもおかしくない自然の脅威への恐怖心を上回っていました。
氷河
氷の上を歩くのは、思ったよりも難しくありませんでした。ガイドさんに続いて列になり、ゆっくり奥へと進んでいきます。
クレバス
クレバス
クレバス
何度も底の見えないクレバスを見つけて、落ちたらどうなるんだろう?などと想像しながら氷河ハイキングを楽しんでいました。
※氷河ハイキングでは転んだら大事に至りそうな箇所を歩く際にはガイドさんが手を貸してくれるので、ご安心を!
氷河景色
氷河景色
氷河絶景
氷河を歩き始めたときは歩くのに必死で景色を眺める余裕もなかったのですが、絶景ポイントで立ち止まった瞬間、あまりの感動に言葉を失いました。辺りは静寂に包まれているのに、地球の鼓動と息吹が体中に伝わってきたのです。
 
地球はちゃんと生きていました。地球上でこんなにも、自分は自然の一部であり、地球に生かされているんだと感じることのできる場所は他にないのではないでしょうか? 夕陽に照らされてキラキラと輝く氷の世界は、ダイヤモンドの輝きよりも何億倍も魅力的でした。
 
“今死んでも悔いはないな”と思ったのは、後にも先にもこのときだけでした。そしてこのときから、私の価値観や人生観は大きく覆されました。
氷河夜
結局この旅で私があんなに追い求めていた氷の洞窟には出会うことができませんでした。気が付くと辺りは真っ暗になっていました。氷の洞窟を見ることはできなかったけれど、この上ない充実感を味わった私は、高揚した気分で氷河を後にしました。
 
帰路につく途中オーロラハントを試みますが、またもや見ることはできず。ところどころで強い雨が車を叩きつけます。強風に煽られ、雨で視界が遮られても焦る様子なく運転を続けるガイドさんは、どんな状況でも終始たくましく冷静で、まるでアイスランドの大自然のことを知り尽くしているようでした。
 
そして自然の脅威に全く怯えず、全てを受け入れて慈しむその姿勢は、アイスランドに住む人々と自然との関係性を物語っていました。「本当の豊かさってこういうことだよな」などと考えているうちに、いつの間にか車はレイキャヴィクの街に近づき、やがて旅の仲間たちとの別れの時間が訪れたのでした。

まだ見ぬ世界、まだ見ぬ自分に出会えるアイスランドの旅

氷の洞窟探索ツアー中にガイドさんが言った言葉が深く印象に残っているので、ここでご紹介させていただきます。
 
「自然を相手に仕事をしていると、思い通りにいかないことがほとんどなんだ。それでもアイスランドの自然は美しいから、僕はこの国をとても愛しているよ。このツアーに参加して氷の洞窟を見ることができずに帰っていった人たちはいっぱいいるけど、多くの人がここに戻ってきてくれて、また僕のツアーに参加してくれるんだ。それがすごく嬉しいんだよ」
 
私はこの言葉を聞いて、自分を恥じました。私は今までなんてちっぽけなことに囚われていたんだろうと思いました。そもそも氷の洞窟が見たいというのも、レアな上にネット上で騒がれているからというミーハーな理由からでした。そのものの本質を何も知らない癖に、ただ見た目だけの美しさや評判に捕らわれている自分が、とても虚しく感じられました。
 
アイスランドの旅は私に、これから自分の人生を歩んでいく上で大切なことを沢山教えてくれました。

実は氷河で遭難しかけました……。

文中で「『今死んでも悔いはないな』と思ったのは、後にも先にもこのときだけでした」と書きましたが、実は氷河で本当に遭難しかけました。
 
というのもサービス精神旺盛のガイドさんは私たちにどうしても氷の洞窟を見せたかったらしく、必死に探してくれたのはありがたいのですが、どんどん辺りは暗くなっていきます。ガイドさんが「もう限界だから引き返そう!」と言ったときには足元がかなり見えづらくなっていました。
 
更にガイドさんが道に迷うというトラブルが発生。私たちは「遭難して死んじゃうかもね」などと冗談半分、本気半分で話しながら歩いていましたが、私はこのときやけに強気で、絶対大丈夫という自信がありました。実際氷河から出て下ってきた山道を登る頃にはもう真っ暗。無事車の前に辿り着いた瞬間、皆で拍手しながら抱き合って喜びました。
 
ガイドさんを信用しきっていたせいか、仲間たちがいて心強かったからなのか、はたまた自分が自然と同化しているように感じていたせいかは分かりませんが、不思議と恐怖は微塵もありませんでした。

この記事を書いた人

Makiko Suga

Makiko Sugaライター/ツアーガイド/バックパッカー/海洋生物の素人スペシャリスト

幼少期に有名なイルカの研究家と運命的な出会いを果たす。以来海洋哺乳類に魅せられ、海洋生物学者への道を志すが挫折。その後は海洋生物とは無縁の生活を送っていたが、2015年に海洋生物の宝庫であるカナダに留学。あるイルカとの出会いが自分の人生を変える。子供の頃の夢を追い続けながら世界に目を向けている永遠の旅人。得意分野は自然、動物関連だけにとどまらず、多岐にわたる。