マレーシアは日中とても暑いので、昼間はほとんど誰も外に出て来ません。そして涼しくなった夕方頃、一気に賑やかになります。
しかし、そんな平和なマレーシアの田舎の風景が一気に殺風景な光景に変わる時があります。それはデングマン到来の時です!
デング熱対策の一環として行われる消毒作業のことなのですが、その消毒の仕方があまりにも強烈なので私たちは勝手にデングマンと呼んでいます。
暑いマレーシアは夕方から一気に賑やかになります
マレーシアの田舎地方は、夕方になるととても賑やかになります。昼間暑くて外に出ることができなかった人が一気に外に出てくるからです。
公園で遊ぶ子供達や学生さん。ジョギングをする人、井戸端会議を始める人など様々です。本当にのどかな光景です。
そんなのどかな光景がたった1台の車によって一気に壊されます。デング熱対策の消毒にやって来たバンです。バンはまずマレー語でけたたましく何かを放送します。
私はマレー語がよく分からないのですが、多分「今から消毒するので、外に出ないでください」と言っているのだと思います。
その放送が始まったら今までで賑やかだった住宅街の風景が一変し、外に誰もいなくなります。家の人はドアや窓をバタバタと閉めていき、住宅街はシーンと静まりかえります。
それから数分後……今度はブーンというけたたましい音が住宅街中に鳴り響きます。消毒が始まったのです。
恐ろしいデング熱
蚊を媒体としてかかる恐ろしい感染症、デング熱。たいていの場合、デング熱にかかった人は回復するのですが、たまにデング熱が悪化しデング出血熱になることがあります。
体力のない子供や高齢者、過去にデング熱にかかったことのある人がもう一度デング熱にかかった時に、デング出血熱になってしまうことが多いようです。
デング出血熱は命を脅かす恐ろしい病気です。そのためマレーシアではいくつかのデング熱対策が行われています。そのうちの1つが消毒作業です。
デング熱対策で行われる消毒の実態
デング熱患者が出ると、その地域一帯に消毒作業が行われます。夕方頃に行われるのは、涼しいその時間帯にデング熱の媒体になる蚊が多く出てくるからです。とても強力な殺虫剤をあたり一面にまいていきます。
この消毒が行われると、その辺でデング熱患者が発生したのだということがすぐにわかります。
公務員と思われる人が消毒剤をまいていくのですが、機械から噴き出してくる殺虫剤の勢いがとても凄まじいんです。いっぺんに住宅街が真っ白い煙に包まれます。
最初に、少し煙が出て来ます。
だんだんと煙が広がり、
最後にこうなります。
これは火事ではありません! デングマンたちによって消毒された煙です。みんな窓を閉めているのですが、窓の隙間から煙が家の中に入ってきます。煙を吸うと喉が痛くなります。
私はアパートの3階に住んでいるのですが、排水管を伝って煙が台所の流しから出てきたのにはさすがに驚きました。
この殺虫剤の餌食になるのは蚊だけではありません。殺虫剤が巻かれた後、至る所でゴキブリがひっくり返っているのを見かけます。
私の家にもわざわざ玄関からゴキブリが命からがら逃げ込んできたことがあります。私の家に入ってきた時点でもうゴキブリはフラフラ、潰すのがかわいそうなくらいに瀕死の状態でした(潰しましたが)。
デングマンが来たら逃げましょう!
デングマンが帰ってしばらくするとまた何もなかったかのように人々は外に出てき始め、また賑やかな住宅街に戻ります。この消毒は1週間おきに2、3回ほど繰り返されます。
患者が出た後でこんなに強力な消毒剤を巻くのではなく、もっと他に早めの対策ができないのかなど突っ込みどころはありますが、デングマンも私たちの生活の中では結構普通の光景になっています。