病院に行くより「漢方薬局」に行く、マレーシアの医療事情
マレーシア

マレーシアに住んで7年。7年も住んでいると、体調を崩すこともあります。それでも私はマレーシアで一度も病院にかかったことがないのです。

その秘訣は漢方薬局にあります。マレーシアでは漢方薬局はチャイニーズメディスンと呼ばれ、驚くほど信用されているんです。

チャイニーズメディスンで売られているものとは? 侮ってはいけない、漢方の驚くべき効果とは? 実際にお世話になっている漢方薬局に迫ります。

あちこちで見かけるチャイニーズメディスン


マレーシアにもいわゆるクリニックや病院と呼ばれる、西洋医学の病院は存在します。具合が悪い時にそこに行くと、医者に診断してもらい薬をもらいます。

しかし、マレーシアにはクリニックと同じくらい信用されている薬局があります。それが漢方薬局(チャイニーズメディスン)です。

チャイニーズメディスンの中に入ると独特の漢方の匂いがします。そしてたくさんの薬が所狭しと並んでいます。多くの漢方薬局には、小さな引き出しがたくさんついた棚があり、その棚の1つ1つに何やら得体の知れないものが入っているのです。


木の根っこのようなもの、木の皮のようなもの、乾燥させた葉や花、中には虫の抜け殻まで……。

それが何の効果があるのかさっぱりわからないのですが、1つ1つ貴重なものだということは何となく伝わってきます。お店の中を見て回るだけでとても興味深く、楽しいです。

地元の人にも信用されています

私が住んでいるマレー半島東海岸沿いには、病人が多発しやすい時期があります。まず、乾季がピークに差し掛かり、気温が一気に上がる5、6月頃です。その頃熱中症のような症状を訴える人が多く、病院に人が殺到します。

もう1つは雨期に入りがけの10月頃と、雨期の終わりが近い1、2月頃です。この時期は、衛生的とは言えないマレーシアに日光が当たらなくなる時期で、紫外線消毒がされなくなるためウイルスが蔓延するのではないかという人もいます。(定かではないのですが)

この時期にチャイニーズメディスンに行くと、いかにも具合が悪そうな人たちがずらりと並んで、先生を待っています。先生は患者の話を聞き、必要ならば診察をします。

脈をとったり、舌の具合を見たり、目の色を見たり、喉の様子を見たりとその時の様子はクリニックの先生と同じです。

診察が済むと、先生は薬を処方してくれます。薬は既製品の漢方薬のこともあれば、その場で作ってくれる時もあります。先生がその場で薬を作るのは、「今度は何が始まるのだろう」とつい見入ってしまうくらい、興味深い様子です。

引き出しから木の根っこやら、何やら得体の知れないものやらを取り出し、計りにかけ量を図った後、紙に包んで渡してくれます。それをお湯に煮出して飲むようです。

時には、引き出しから取り出したものを石臼のようなものでゴリゴリと小さく砕いていきます。それを同じように紙に包み、渡してくれます。その時は水と一緒に薬を飲みなさいということです。

その日に作った漢方茶を瓶に入れて渡してくれ、これを飲むようにと言われることもあります。漢方なので多くの場合、速攻の効果があるというわけではありませんが、先生の言った通りにすれば、ちゃんと元気になるので不思議です。

ヨンさんのお店

友達に漢方薬局の先生(ヨンさん)がいます。具合が悪くなくてもその人を訪ねて行くのが好きなので、よくその漢方薬局にお邪魔します。そして、具合が悪い時にはヨンさんに本当にお世話になっています。

夫は一度高熱が出たことがあります。私たちは原因がわからず、いきなり出た熱にびっくりしました。そしてデング熱を疑いました。

夫は熱が出るとすぐにデング熱を疑う傾向があるのですが、この時は地元の友達までもがデング熱を疑って、デング熱に効果があると言われているパパイヤの葉を持って来てくれました。

それを聞きつけたヨンさんが心配してお見舞いに来てくれました。早速脈を測り、目を見ます。そして一言「最近鶏肉を食べ過ぎなかったかい?」本当にその通りでした。

診断は「鶏肉の食べ過ぎだから、おとなしく寝ていなさい」とのことでした。鶏肉を食べ過ぎたら熱が出るというのも驚きでしたが、それを言い当てたヨンさんにも驚きでした。

具合が悪くなくても行くことができる気軽さがいい!

具合が悪い時はもちろんですが、体の調子を整えたい時にも使える漢方薬がたくさん置いてあります。涼茶という解熱効果のあるお茶もそのうちの1つですし、薬膳を使って料理する人も少なくありません。

そんなわけで、具合が悪くなくてもちょくちょく漢方薬局に訪れて、漢方薬を日頃の生活に取り入れている人が多いように感じます。私たちもそうです。日常生活の中で気軽に漢方を取り入れることができるので助かっています。

チャイニーズメディスンでの失敗談


ある時も、ヨンさんを訪ねてお店に行ったのですが、ヨンさんは何やら得体の知れない物体を、大きなカッターで切っていました。

興味を惹かれた私が「何を切ってるの?」と聞くと、ヨンさんは、「これは、喉が痛くなった時に効く薬だよ。これを食べたら麻酔薬のような効果があって口がシビレるんだよ。試してみる?」と答えてくれました。

興味津々になった私は、早速小さなかけらを食べてみることに。ここで私は大きな間違いを犯しました。まず、これは噛み砕くのではなく、ゆっくりと舐めながら食べるものだったのだそうです。説明をよく聞かないまま一気に食べてしまいました。

そしたらとにかくまずい!!! 今までで食べた漢方薬の中で堂々の第1位に輝くまずさでした。顔を歪めながら食べている私を、ヨンさんだけでなく、ヨンさんのお店に来ていたお客さんまで笑って見ていました。食べ終わって15分も経たないうちに、本当に口の中がシビれはじめました。

歯の治療をする時に麻酔薬を打つことがありますが、その時と同じような感覚になりました。気をつけていないと唾液が垂れてしまいそうになります。口の中が麻痺する感覚は面白かったのですが、まずい味が口の中に残っているので、気分は最悪でした。

その感覚は1時間ほどでなくなりましたが、その後もっと最悪なことになりました。漢方が胃の中でも効果を現しはじめたのです。おかげで私は胃がムカムカ、すごい吐き気に襲われました。そしてとうとう、何回か吐きました。胃の中がすっかりと空になったら、気持ち悪さがなくなりました。

それまで漢方薬はゆっくりとしか効果が現れないものだと思っていましたが、中には速攻で効果が現れるものもあると分かりました。あの時ちゃんと説明を聞いていて、噛み砕かずに口の中でゆっくりとなめていたらこんなことにはならなかったかもしれません。

漢方薬を侮っていました。先生の言うことはちゃんと聞くものだということ、そして具合が悪い時以外、強力な漢方薬は試さないようにしようということを学びました。

チャイニーズメティスンや先生に感謝

このように失敗談もありますが、基本的には、漢方薬局に助けられています。具合が悪い時はもちろんですが、いつも健康な状態に体を保つためのアドバイスをもらえるからです。特に、マレーシアで生まれ育ったわけでない私たちにとって、そのようなアドバイスはとても貴重です。

色々な知識を惜しげも無く教えてくれるので、漢方薬局の先生には本当に感謝しています。特に用がなくても、なんとなくチャイニーズメディスンの店にぶらりと行ってしまうのはヨンさんや奥さんの人柄です。

多分ヨンさんの患者さんは、そうやってヨンさんの漢方薬局を訪れながら話を聞いてもらい癒されるのだと思います。ヨンさんのお店だけでなく他のチャイニーズメディスンでも患者さんが先生と楽しそうに立ち話している様子を頻繁に目撃します。

ただ薬を処方するだけでなく、話し相手にもなる、そんな温かさがチャイニーズメディスンにはあるのです。

この記事を書いた人

yazu

yazu

九州出身です。 今はマレーシアに住んで数年になります。旅行も大好きでマレーシアを拠点に、東南アジア周辺の旅行にもよく出かけます。 マレーシアで、夫と共に、発展途上国ならではの思いがけないハプニング満載の生活を送っています。そんなことをしていたら、段々たくましくなってきました。東南アジア旅行では、いろいろな文化の違い、食事、地元の人との出会いを楽しんでいます。 そんな中で、自分たちが経験したこと、感じたことを記事にしたいと思います。だれかに楽しんでもらえたら嬉しいです。

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