カナダでひたすらシャチとクジラを追い求める旅をしました。
カナダ

クジラ

観光地としても留学先としても人気の高いカナダ。広大な土地と壮大な自然を有し、年間を通して様々なアクティビティが盛んに行われているこの国ですが、夏のカナダには海洋生物好きの筆者にとってはこの上なく魅力的なアクティビティが存在します。その名も「ホエール・ウォッチング」。

なんだ、日本でもできるじゃないかと思ったそこのあなた、はっきりと申し上げましょう。スケールが違います。そしてカナダで野生の海洋生物に遭遇するということに深い意味があるのです。

実は夏のカナダで野生の海洋生物に遭遇する方法ですが、「ホエール・ウォッチング」だけではありません。人々の生活に密着した身近なところに、彼らは突然姿を現します。といってもピンと来ないですよね?

それでは実際に夏のカナダ(ブリティッシュコロンビア州)でひたすらシャチやクジラを追い求めた筆者の経験を元に、現地で野生の海洋生物に遭遇するための方法をいくつかご紹介しましょう。

バンクーバーの観光名所、「イングリッシュ・ベイ」を散歩中にクジラとバッタリ?!

スタンレーパーク
こちらはバンクーバー市民の憩いの場であり、バンクーバーに旅行にやってきた観光客は必ず訪れるであろう「イングリッシュ・ベイ」の夕日。

バンクーバーのダウンタウンの外れに位置するこのビーチは、散歩にジョギングにサイクリングにピクニックなど、思い思いの過ごし方をしている人で溢れかえっています。

こちらのビーチはとにかく広いので、どんなに人がいても混んでいる感じはしません。
イングリッシュ・ベイ
バンクーバーに留学していたある夏の夕方、いつものように「イングリッシュ・ベイ」を散歩していると、突然海面の一部が盛り上がりました。私はすぐにそれがクジラだと分かり、海面が盛り上がった方へ駆け出しました。これがそのときの模様です。かすかにヒレのようなものが見えるのがお分かりでしょうか?
イングリッシュ・ベイ
私はこのとき誰よりも先にクジラに気付いた自信がありますが、クジラがいる方にはすぐに人だかりができました。クジラはどんどん海辺に近づいてきます。

私はいてもたってもいられず限界までクジラに近寄って動画を撮り続けたのでクジラの良い写真はないのですが、こんなに真近でクジラを見たのは生まれて初めてでした。

しかも公共の公園兼ビーチのような場所で手軽に見れるなんて……。バンクーバー恐るべし。このときすごくいいなと思ったのは、恐らく群れからはぐれてしまったであろう1頭のクジラを優しく見守るバンクーバー市民の表情でした。

辺りはどんどん暗くなるのに、約2時間クジラが私たちの前から姿を消すまで、人だかりがなくなることはありませんでした。さすがはカナダ。海洋生物をリスペクトしている国だと実感しました。

イングリッシュ・ベイ
アクセス ダウンタウンの中心部であるスカイトレインの「バンクーバー・シティ・センター駅」からバスでも徒歩でも可。

BCフェリーの横をシャチが横切るって本当?

BCフェリー
バンクーバーからわりと手軽に行けるバンクーバー・アイランドの人気都市といえば「ビクトリア」ですが、一番スタンダードな交通手段はバンクーバーのフェリーターミナルであるツワッセンからBCフェリーに乗船するという方法です。

「ビクトリア」のフェリーターミナルはスウォーツベイ。この2つの港を結ぶ船路を野生のシャチが通るというのです。情報源は友人とネット。そして確かにビクトリアは”私の中では”シャチの街。とにかく「ホエール・ウォッチング」が盛んで街中にシャチモチーフが点在しています。

どうやら情報は確かなようなので、BCフェリーに乗船した際、目を凝らしてひたすら海を見ていると……。
BCフェリー
写真には写っていませんが、野生のシャチに出会うことができました。かすかに背ビレを確認できて大興奮。しかも親子でした!

※BCフェリーではシャチがフェリーの横を横切った際、船内にアナウンスで知らせてくれるので、私のように神経を尖らせてじっと海を見つめている必要はありません。

それでもやっぱり「ホエール・ウォッチング」

クジラ
「ホエール・ウォッチング」以外で野生のシャチやクジラに出くわす方法を2つほどご紹介させていただきましたが、どちらも強運とタイミングを持ち合わせたときのみの奇跡的な確率。

なんだかんだいって、野生のシャチやクジラに出会うには、やはり「ホエール・ウォッチング」に参加するのが一番手っ取り早く確実です。

「ホエール・ウォッチング」のシーズンは大体4月~10月頃まで。冒頭で「ホエール・ウォッチング」を”夏のアクティビティ”としたのは、6月~9月までがシーズンのピークだからです。ピーク時期だとかなりの高確率でシャチやクジラに遭遇することが可能。
アシカ
アシカやネズミイルカにも遭遇できるかも。

実はカナダにはシャチの聖地があるんです

アラート・ベイ
アラート・ベイ
バンクーバー周辺の港、またはビクトリアの観光中心部である「インナー・ハーバー」などで催行しており、気軽に参加できる「ホエール・ウォッチングツアー」ですが、私は敢えてコーモラント島にあるアラート・ベイの港で催行している「Seasmoke Whale Watching tour」に参加。

実はこの街、シャチの聖地なんです。この街に来て野生のシャチを見るというのが、私の幼い頃からの夢でした。ちなみにバンクーバーからアラート・ベイまではグレイハウンドバスとフェリーを乗り継ぎ、移動すること約10時間。
アラート・ベイ
こちらはアラート・ベイの夕日。
アラート・ベイ
もちろんバンクーバーから日帰りは不可能。それどころか、「ホエール・ウォッチングツアー」に参加するためには最低2泊3日は必要です(バンクーバー発着の場合)。宿は「Seasmoke Whale Watching tour」の方が手配してくれました。

この街の人はとてもフレンドリーで、街を歩いていると良く話しかけられました。街に私のような日本人が1人で歩いているのはとても珍しいようで、「なぜあなたはここへ来たの?」と同じ質問を何度もされました。

「シャチが大好きだから」と答えると街の人はとても嬉しそうに「じゃあここ以外にないわね」と一言。この街では夏の夜に窓を開けて寝ていると、クジラやシャチの潮吹きの音が聞こえてくるそうです。まるで物語の中の世界。羨ましすぎます……。
海峡
海峡
実はここへ来る前にバンクーバー周辺の港で催行している「ホエール・ウォッチング」にも参加していた筆者ですが、こちらの「ホエール・ウォッチング」はまた雰囲気が違いました。まず、景色の美しさと海上を走る船の数(海上の交通量)が全然違います。
シャチ
わざわざここまで来て野生のシャチを拝もうとしている人は、やはり相当のシャチ(海洋生物)ファン。ミーハーな雰囲気は一切ありません。シャチが登場すると、乗客は息を殺してひたすらシャチを目で追います。

私はある少年と意気投合し、行き帰りの船内ではシャチの話で大盛り上がり。本物のシャチのファンであれば誰もが憧れるであろうこの場所に降り立ち、野生のシャチに遭遇できたことに、私も彼も感動の涙を流さずにはいられませんでした……。
クジラ
クジラ
クジラ
静寂を切り裂くクジラの潮吹きの音を真近で聞きながら、今自分は世界一贅沢な時間を過ごしている人間だと思いました。夢ならば醒めないで……。本気でそう願いました。

人間にほど近い哺乳類でありながらも海で暮らし、手が届きそうなのに届かない距離にいるシャチやクジラの存在。まだ解明されていない謎を沢山秘めた彼らは今年の夏も、カナダの大海原で優美に泳ぐ姿を私たちに見せてくれることでしょう。

「アラート・ベイ」
アクセス バンクーバーからグレイハウンドバス(途中フェリーの移動も含まれる)でポート・マクニール下車。ポート・マクニールからBCフェリーで約45分。

生命力溢れるカナダの海

カナダには本当に色んな種類の海洋哺乳類が暮らしています。北極圏方面ではシロクマやベルーガ、タテゴトアザラシの観賞ツアーなどが人気を集めているようですが、どれも魅力的です。

そうそう、カナダの北極圏には幻のイッカクだっています。これだけ希少価値のある海洋哺乳類がいっぱい生息しているカナダですから、一般市民の海洋生物への興味や知識量は日本人のそれと比べると雲泥の差です。

海洋生物を愛し、慈しむ国カナダで実際にシャチやクジラなどの野生の世界を垣間見つつ、今一度理想的な人間と海洋生物との距離感や関係性について考えてみましょう。

この記事を書いた人

Makiko Suga

Makiko Suga海洋生物の素人スペシャリスト/動物&自然オタク/世界中の秘境地&穴場スポットマニア

幼少期に有名なイルカの研究家と運命的な出会いを果たす。以来海洋哺乳類に魅せられ、海洋生物学者への道を志すが挫折。その後は海洋生物とは無縁の生活を送っていたが、2015年に海洋生物の宝庫であるカナダに留学。あるクジラとの出会いが自分の人生を変える。子供の頃の夢を追い続けながら世界に目を向けている永遠の旅人。得意分野は自然、動物関連だけにとどまらず、多岐にわたる。

    チャンネル

    チャンネルをもっと見る