スウェーデンの東西の海を結ぶイェータ運河(Göta kanal)は、日本ではあまり知られていない隠れた観光名所。
全長190キロメートルもの距離を結ぶ運河で「スウェーデンのブルーリボン」と呼ばれています。一見、素朴でよくある北欧の風景に見えますが、よく見ると凄いんですよ!
船が水の階段を上るようにも見える不思議なイェータ運河を訪ねて来ました。
地味に見えて実は凄い! イェータ運河
スウェーデン地方都市リンショーピング(Linköping)からほど近い距離にあるベリー閘門(Bergs slussar)は、イェータ運河の見所とも言える場所。
森の中の湖の畔に小さなコテージが並ぶ風景は、よくあるスウェーデンの田舎町の風景。
湖から小さな船が一隻通れるほどの細い運河が流れ確かに美しい風景なのですが、初めて見た印象は「ちょっと地味かも?」と言うのが正直な印象でした。
足を進めて行くと、運河の先にある湖のロクセン湖はかなり低い位置にあることが分かります。高低差はなんと30メートル。
どうやって水位の低い湖から水位の高い場所に船が上がってくるのか不思議ではありませんか?
水の階段「閘門」の仕組み
イェータ運河の一番高い場所は、海抜約92メートルにもなる為、運河には水位調節をする閘門が58カ所も設けられています。
そしてここ、ベリーには「7つの連続閘門」があり、ダイナミックに船が運河を行き交う様子を見る事ができるんです!
一見、とても複雑なシステムに聞こえますが、実際に見てみると分かり易い仕組みでした。ロクセン湖へ向かって運河を下って行く場合は、閘門を開き水を低い方へ流して高低差を無くします。
閘門が少し開くと勢いよく水が流れ出し、あっという間に同じ水位に。
門によって水位が異なり階段のようになっていた区画が1つになります。凄い!
そしてまた次の閘門で水位を下げる事を繰り返し、ゆっくりと時間をかけて運河を進んで行きます。
ちなみにスウェーデンでは、キャンピングカーを持つような感覚で、ヨットを所有している人が意外と多くいるんですよ。
イェータ運河が作られた理由はデンマークにあり
スカンジナビア半島にあるスウェーデンは、国土の3分の2を森林が占める国で、自動車や鉄道網が発達するまでは、船が移動や運搬の重要な手段でした。
しかし、スウェーデンは長年に渡って対立関係であるデンマークにスウェーデンの南部を占領され、高い通行税を課されたり妨害にあったりしました。
イェータ運河はスウェーデン独自の航路を確保する為に、大規模な国家プロジェクトとして19世紀始めに建設がスタートしたのです。
イェータ運河は全長190キロメートルにもなりますが、湖と湖を運河で繋ぐことで実際には約半分の距離の89キロメートルが58,000人の兵士によって人力で掘られました。
かつては重要な航路として活躍したイェータ運河ですが、現在は自然やクルーズを楽しむ人が集まる観光地となっています。
Loggvägen 2, 590 77 Vreta Kloster, Sweden