旭川出身の私ですが、旭川で暮らしていたときにはほとんどその魅力に気づいていなかったと言っていいでしょう。
その魅力とは、「旭川ラーメン」の魅力。
この世の中にはこんなにも様々なラーメンが存在している、ということさえも知らなかった当時の私。本州で暮らし始めたのをきっかけに、故郷の味を求めてさまよい歩いた日々。そしてその結果として、数あるラーメンの中でも、旭川ラーメンというのは格別な存在である……と気づいてしまった、今(もしかしたら完全に私の主観かもしれません……)。
あのちょっと太めな縮れ麺。こっくりとしたスープ。そして麺とスープを守るかのように張られた、ラードの膜。これがいわゆる「ラーメン」だと思っていたのに、それは実は旭川でしか味わえない「ラーメン」だったなんて。
そう気づいた日から私は、いつしかこう唱えるようになっていました。
「故郷に帰ったら、旭川ラーメン食べ歩き、するんだ……」
……前置きが長かったですが、このたびの帰省で、ついに夢の実現に成功いたしました。幸せでした。そのご報告ととも、旭川ラーメン食べ歩きの攻略方法と課題について共有させていただきます。次なる食べ歩きの猛者が現れることを信じて。
食べ歩きするなら、旭川駅前を徒歩で散策がベスト
まず事前調査の上でたどり着いていた結論としては、
「やはり食べ歩きには『買物公園』を起点として練り歩くのがベスト」
であるという点です。
「買物公園」というのは、正式名称を「平和通買物公園」と言って、旭川駅に垂直に約1km続く歩行者天国の道路のこと。旭川で「街」と言えば、この道のことを指します。そしてその道沿いには、西武や丸井やマルカツなんかの百貨店が立ち並んでおり……ました。……残念ながら西武百貨店が2016年9月に撤退してから、百貨店といえる百貨店がひとつもなくなってしまいましたが……。
しかし、はるか昔から買物公園の栄枯盛衰を見守ってきた「旭川ラーメン」の店舗たちは変わらずに、この買物公園を起点として点在しております。
今回は上記地図に示させていただいた5店舗に目星をつけて、食べ歩きを敢行! 選考理由は、
・「ザ・旭川ラーメン」と言える店舗であること
もしくは、
・今や全国展開した店舗の本店であること
といたしました。
ちなみにどの店舗も当然ながら、旭川市民であれば誰でも知っている有名店です。
「ザ・旭川ラーメン」が食べられる3店舗へ!
まずは「これぞ旭川ラーメンだ!」というアイデンティティを確かめるべく、旭川市民の血となり肉となっている味を巡りに出かけました。
飾らない、だけどこっくりとしたふくよかな味「らーめんや天金 四条店」
旭川駅から4条分歩きます。旭川をはじめとした北海道の多くの都市は、京都のような碁盤の目の都市設計になっているので、マップを見ながら歩けばほとんど迷うことはありません。1条が2ブロックですので、4条分歩いても10分もかからずに到着できます。
さっそくの行列です。基本的に、みんながお腹が空く時間帯に訪問すると並ばなければなりませんが、ラーメンですから回転が早く、そこまで苦にはなりません。
ここで頼むべきは一択。「正油ラーメン」です。
この、見るからにオーソドックスな風貌。スタンダードの地を行く、飾りっ気のない1杯。
これがですね、一口食べると、醤油の風味が広がって。それでいて旭川ラーメンらしい、あっさりなのにこってり、という絶妙なスープ。まさに人を選ばない、王道のストロングスタイルを貫く味です。もちろん完食!
この焦がしラード。一度食べたら忘れられない「蜂屋 五条創業店」
天金からもほど近い立地です。すぐに着いてしまうので、お腹が落ち着く暇がありません。
こちらで頼むべきは「ラーメン(しょうゆ味)」! ここまででお気づきかもしれませんが、いわゆる「ザ・旭川ラーメン」と言われるラーメンというのは、醤油味を指すことが多いです。
これがその全貌。「焦がしラード」、わかりますか? 表面に浮いている油膜が、その「焦がしラード」。スープの色よりも若干茶色がかったものが、それです。
見た目としてはなんら一般的な醤油ラーメンと差がなく感じられるかもしれません。しかし、一口食べたら「焦がしラードの蜂屋」というワードが脳裏に焼き付いて離れなくなるでしょう。実際にあぶられたラードが載っているため、その香ばしさが麺とスープとともに口いっぱいに広がって、食べるたびに次の麺を食べたくなるループにはまっていきます。なお、「油濃いめ」という選択も可能で、そうした場合、「蜂屋らしい」と称される真っ黒い容姿のラーメンと遭遇できます。
ちなみに塩ラーメンにも焦がしラードが載っています。塩らしい透明に近いスープのはずが、焦がしラードによって醤油味スープのような見た目になっています。これもまた、美味いんです。
このこってり正油ラーメンこそ完全に故郷の味「旭川らぅめん青葉 本店」
ここで皆様にひとつ、お詫び申し上げなければなりません。
「旭川ラーメン食い散らかすぞ!!」と豪語していたのもつかの間、なんと先ほどまでの2軒でお腹が悲鳴をあげはじめ、言い訳として「美味しくラーメンを食べられる状態で巡礼すべきではないか」というのを思いついてしまった影響で、「青葉」は翌日の来店となっております。
そう、食べ歩きの課題が浮き彫りになったのです。
それは、ミニラーメンなどの小さめサイズを用意している店舗が少ないこと。もちろん「お子様メニュー」というのは用意されているのですが、やはり頼むのが気が引けて……。なお、今回訪れた店舗では「天金」がハーフラーメンを用意していたのですが、普通の正油ラーメンの写真撮影をしたいがために1人前を頼む始末で、案の定すぐにお腹MAX状態となってしまいました。
大好きなラーメンのはずなのに……まだまだ修行がたりません。このあたりの体調も考慮して日程を組むことを、読んでくださっている皆様にはお伝え申し上げる次第です。
というわけで、「青葉」に訪れた、翌日のことに話を戻します。
なんといってもこのビビッドなオレンジののれん。そして右端にちょっと映っているのが、名物となっている女将さん! お出迎えからして大変アットホームであることがまた、「青葉」の特徴のひとつです。肝心のラーメンは、というと……
これが「しょうゆらぅめん」。海苔がかわいいです。
そんな見た目にだまされないぞと……まずはこのスープを一口。……これがもう、こってりなのに、口に残りすぎない優しさのある味なんです。濃いめに見えるスープなのですが、もう何口でも何口でも食べたくなる、やみつきになる濃度なんですよね。自分のルーツさえ感じてくるこの味、麺は瞬く間になくなっていきます。一口一口が愛おしくてたまりません。
私は行けなかったけど、時間とお腹に余裕があれば行ってほしい2店舗
「青葉」のラーメンを思う存分楽しんだあと、もう2店舗……と思っていたのですが、時間が合わずに立ち寄ることができませんでした……。旭川のラーメン屋さんは、ほとんどが11時開店で、夜は遅くまで営業していないことが多いです。まさに短期決戦をいどまれるレギュレーションとなっております。
しかしながら時間とお腹に余裕のある皆様にお伝えしたいのが、全国展開を成し遂げた下記2店舗の本店も、この買物公園に存在しておりまして、ぜひとも召し上がっていただきたいという点でございます。
梅光軒 旭川本店
こちらもやはり食べたいのが「醤油ラーメン」です。Wスープの出汁が口の中に広がる……というのを書きつつ実は最後に行ったのが10年ほど前なので、あまり下手なことは書きません。ぜひご自身で確かめてみてください!
らーめん山頭火 旭川本店
こちらも最後に行ったのはだいぶ前なのですが、「さすが本店だな」という感想を強く持ったことは確かです。全国各地にもはや進出してしまって、旅先で山頭火を食べるなんて……と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「本店の味」はここでしか食べることができません。
でも本当はレンタカーで足を伸ばして訪れてほしい3店舗
ここまでは旭川駅前の「買物公園」沿いの店舗のお話。
でも、旭川ラーメンの名店は駅前だけではもちろんありません。ぜひレンタカーを借りた場合に行ってほしい、ちょっと遠めなお店をご紹介させてください。もはやこのためにレンタカーを借りてほしいくらい、私がヘビーに通っている店舗たちなのです。
よし乃 本店
帰省したら必ず食べに行っています。旭川ラーメンは「醤油味」がメイン、と書きましたが、実はこの「よし乃」で絶対に食べたいのが「みそラーメン」です。このこってり感とピリ辛感、そしてもやしが豪快に載ったさま、それを崩しながらすする太めの縮れ麺……なにをとっても、ガツガツと食べ進めたくなる味。いつ行っても専用駐車場が満車に近い状態なのが辛いところですが、それでもなお、どうしても年に1度は食べたい味なんです。
ひまわり 大雪通店
すみません、こちら毎度のように訪れている影響で、逆に写真がありません……。
こちらの人気メニューは、なんといっても「モルメン」! なんとラーメンにホルモンがトッピングされているという、豪快な一品となっております。それでいてしつこくない味なので、具をモリモリ食べたいというときにチョイスする店舗です。
ラーメン 蝦夷
実はこの店舗は、旭川市ではなく、隣町の東川町にある店舗です。旭川から車で30分~40分ほどかかってしまうのですが、それでも足繁く通ってしまうのが「蝦夷」のラーメン! 濃厚感のあるスープにも関わらず、口に重さは残らないのは、旭川ラーメンの特徴そのものです。みそも醤油もどちらも好きでして、私はいつも迷ってしまいますが、最終的にはみなさまのお好みで。
私の大好きな旭川ラーメン、書き出すと止まらなくなってしまいますが、まだまだ奥が深いものだということも承知しております。
まずはぜひここに挙げさせていただいたラーメンをご賞味いただき、そして何度も旭川に訪れては食す旅をはじめていただきたい、そう願っております。