ドイツ南西部、フランスやルクセンブルクと国境を接しているザールラント州のフェルクリンゲンという町には、世界遺産に登録されているフェルクリンゲン製鉄所があります。
その独特の外観は、遠くから見るとまるで巨大な生き物かなにかのよう。今にも動き出しそうな状態で完璧に保存されている製鉄所です。
ここへ足を踏み入れれば、ここがまだ操業していた当時の様子が鮮やかに脳裏に再現される、そんな体験のできる場所です。
産業遺産としては初の世界遺産となったフェルクリンゲン製鉄所の歴史
フェルクリンゲン製鉄所の歴史のはじまりは1873年にまで遡ります。1920年代にはヨーロッパにおける最新鋭の技術を有し、その規模もヨーロッパ最大のものでした。
その後やってくる第2次世界大戦ではドイツ国内のほとんどの製鉄所が爆撃による大きな被害を受けましたが、フェルクリンゲン製鉄所だけは終戦に至るまでそれらの攻撃を受けることはありませんでした。
ほぼ無傷で終戦を迎えたフェルクリンゲン製鉄所は戦後もすぐ稼働することが可能であったため、ヨーロッパにおける戦後の復興にも大きく貢献します。
1950~60年代にかけてがこの製鉄所における最盛期。17,000人もの従業員がここで作業に従事していました。しかし1975年に発生した鉄鋼危機やそれに伴う合併・併合にフェルクリンゲン製鉄所も巻きこまれます。
そして1986年に操業を停止、安全対策がなされた上で博物館として公開されます。1994年にはユネスコ世界遺産に、産業遺産としては世界で初めて登録されました。
フェルクリンゲン製鉄所での過酷な労働
フェルクリンゲン製鉄所での労働は、特にその暑さから想像を絶するほど過酷な物でした。
製鉄所で働いていたのは男性ばかりと思う方も多いかもしれませんが、第2次世界大戦中は女性もここで作業に従事していたのです。他にも強制労働者や戦争捕虜が過酷な労働を強いられていました。
内部を見学
製鉄所についての説明はこの辺で終わりにし、さっそく内部を見学してみましょう。
内部では当時使われていた溶鉱炉や倉庫、資材運搬路などがそのままの姿で残されています。
外のエリアは設備の間に草も生えるなど、ジブリの映画にも出てきそうな風景が広がっている場所も。
間近で見るととても迫力があります。まるで大きなロボットのような建物は、いまにも動き出しそうな雰囲気をかもし出しています。
60万平方メートルを誇る広大な敷地内は、各々が自由に歩き回りながら見学をする事ができます。各所に説明の書かれたプレートもあるので、個人で見学をしても十分に楽しめますよ。
しっかり説明を聞いたり質問もしたいという方はガイドツアーに参加すると良いでしょう。
フェルクリンゲン駅すぐ近くとアクセスもしやすいのもこの製鉄所の魅力。工場や廃墟マニアでなくても楽しめる場所です。