中華料理が大好きな華僑の人たちは、杏仁豆腐も好きだと勝手に思い込んでいました。でも、最近になって杏仁豆腐はあまり好きでない、もっとはっきり言うと大嫌いだったということが分かりました。
しかもその理由にびっくり! 中国系マレーシア人が杏仁豆腐を嫌う、びっくりするような理由についてレポートします。
中華料理のデザートの定番は杏仁豆腐?
マレーシアにいる華僑(中国系マレーシア人)はもちろん中華料理が大好きです。レストランに行く時も自宅に招いてくれた時も、食べるものはだいたい中華料理です。
独断ですが、中華料理のデザートといえば杏仁豆腐!というイメージが私にはあります。日本でも今やコンビニのスイーツコーナーに当たり前のように並んでいて、人気スイーツの1つだと感じます。
私は、マレーシアにいる華僑の人も杏仁豆腐が好きだと当然のように思い込んでいました。しかし、そんな思い込みが覆される出来事がありました。
ある時、日本人の友達が杏仁豆腐を作って華僑の人々にふるまったところ、思いがけない反応が……。なんと! みんなから大不評だったのです!
「大丈夫だよ。今は杏仁の味に我慢できるようになったから」と言いながら食べている人もいれば、作った人に失礼だろう!というくらい渋い顔をして飲み込むように食べている人までいました。
美味しそうに食べているのは日本人くらいです。思いがけない展開に私たちもびっくり!
嫌いな理由は……〇〇の味がするから?!
なぜ嫌いなのか聞くと、なんとみんな口を揃えて「杏仁はゴキブリの味がする!」と言うではないですか。「え? 杏仁がゴキブリの味? 全然違うでしょ!」という前に、「そもそもなんでゴキブリの味を知っているの」と二重にビックリです。
話をよく聞いてみると、昔ゴキブリは薬として使われ、乾燥させて煎じて飲んでいたそうです。さすが中国人! 薬になるものはなんでも知っています!
考えてみると確かに、セミの抜け殻を煎じて薬にしたのを私も見たことがあります。虫が薬になるというのは普通の話なのかもしれません。
ただ、そのゴキブリの薬が強烈な匂いだったそう。そして、どういうわけか杏仁豆腐の匂いとリンクしてしまい、杏仁豆腐が嫌いになってしまったようでした。
ちなみに、他のおばあちゃんの話では、ジャングルの土からゴキブリを掘り起こし、やはり煎じて飲んでいたそうです。「昔のゴキブリは綺麗だったから薬になったけど、今はそんなことしたらダメよ」とのこと。
「いやいや絶対にしませんから」と心の中で思いながら話を聞いていました。
ゴキブリは母の愛情?
マレーシア人がまだ裕福でなかった頃、家計を支えるのに必死だったお母さんたちは、子どもが熱を出した時に医者に行くことも薬を買うこともできず、頼ったのが中国漢方の知恵でした。
ゴキブリを煎じて子供に飲ませたのも、親の愛情ゆえでした。ただ、その強烈な匂いが後に杏仁豆腐とリンクするとは、思いもよらなかったのではないでしょうか。
マレーシアのゴキブリ
余談ですがマレーシアのゴキブリは日本のゴキブリに比べてスマートです。ボタっとしていて足が短い日本のゴキブリに比べ体がスマートで足が長いです。さぞかし運動神経も良さそうですが、それが鈍臭いのがマレーシアのゴキブリです。
日本のゴキブリは、私たちが見つけた瞬間に逃げだすのに対して、マレーシアのゴキブリは叩かれる寸前まで同じ場所でのんびりしています。スリッパ1つで簡単に潰せます。
そしてマレーシアのゴキブリは強烈なゴキブリ臭がします。私は、十分に洗えていない雑巾が半乾き状態の時に発する匂いと同じ匂いだと思っています。決して杏仁豆腐の匂いではないと思います。
いまさら……6年前のカミングアウト
ひとしきりゴキブリの話で盛り上がった後、友達から「あなたが杏仁パウダーを買った時に、なんでこんなものを買いたいのか不思議でたまらなかったのよね」と言われました。
そうなんです、マレーシアのスーパーマーケットには杏仁粉が売られています。色々なブランドのものがありますが、大容量で15~20リンギット(約4~500円)なのでお得です。体にいいので、お湯に溶かして飲んだりします。
思い起こせば6年前。スーパーで杏仁粉を見かけた時に、杏仁豆腐などの材料になるので喜ばれると思って、日本へのお土産に買って帰りました(実際、喜ばれました)。
友達はその時からずっと不思議に思っていたようですがなかなか言いだすことができず、6年経った今カミングアウトされました。
今頃! そしてよく覚えていたなとこっちが感心してしまいました。多分友達にとってゴキブリの味がする杏仁粉をお土産に喜んで買う私のことが不思議でたまらなかったのだと思います。
なかなかのカルチャーショック
今回の出来事は、まさにカルチャーショックでした。マレーシアに住んで7年目、だんだんこっちの文化に慣れてきたと思っていたのですが、まだまだ知らないことがたくさんあることを思い知らされました。
そして、人の味覚はわからないものだとつくづく感じました。