こんにちは、ユルワです。「ベトナム・ダナン専門家」という肩書でライターをしていますが、江戸時代の雰囲気を求めて下町をお散歩したり、落語を聴きに行くのも実は好きだったりします。
今回ご紹介するのは人形町。ここは老舗の飲食店が立ち並ぶ「甘酒横丁」や長い歴史の中で母となる女性たちを守り続けてきた「水天宮」などがある、昔から有名な場所でした。
しかし、ここ最近になって「パワースポット」「下町グルメ」「和雑貨」という、人気のキーワードで街歩きが楽しめるスポットとしてひそかに注目を浴びています。
そんなわけで今回は、ゆっくり歩いてみれば古き良き日本の断片と巡り合える人形町エリアの散歩へと参りましょう。
パワースポット
人形町界隈はパワースポットが集中するエリアだと言われています。昔から七福神めぐりに訪れる方も多く、今でも小さな神社にも列を作るほどなのです。数ある神社の中でユルワのおススメは、鉄板の「水天宮」と金運・強運の「小網(こあみ)神社」です。
水天宮
説明するまでもありませんが、子宝・安産のご利益がいただけることで有名な水天宮は、江戸の昔から現在に至るまで、世のママさんたちの聖地。実際に私をおなかに宿していた母もこちらにお参りに来ています。
もう、はるか昔のことですが、今回人形町の記事を執筆するにあたり、「あの時の赤ん坊がここまで育ちました」というお礼参りをすることにしました。
これがまた、行ってびっくり! 数年前にリニューアルされており、一見すると神社というよりかはデザイナーズマンションのようなたたずまいに変貌していました。恐る恐る入ってみると、そこには真新しい白木作りの本殿がそびえ立っていました。
さらに驚くべきは社務所が超モダンな建物になっていたことです。お守りやお札の購入、ご祈祷、御朱印の窓口となっており、なんと3階には広々とした待合室も用意されています。これは安産祈願に訪れる妊婦さんたちを寒空の下で待たせないようにという配慮だとか。
小網神社
人形町には最近人気急上昇中のパワースポットがあります。それが、ビルの間に埋もれるようにひっそり佇む「小網神社」です。
強運・金運向上のご利益があるということで、最近訪れる人が急増中。以前訪れたときには外国人観光客のグループが来てました。
東京を襲った関東大震災や東京大空襲にも屈することなく生き残った神社ということと、戦時中、小網神社のお守りを携えた出征兵士が全員生還したという歴史があることから、人形町の人々から篤い信仰を集めてきました。
小網神社の境内には健康運や金運などの「徳」を高めてくださる「福禄寿像」や、鎌倉にもある「銭洗い弁天」の「弁財天様」がお祀りされています。
小網神社へいらしたらぜひお金を洗い、それをお金を増やしてくれる「種銭」として、お財布の中にいれておきましょう。金運アップへの願いが叶うかも。
小網神社はこじんまりとした神社ですが、銭洗い弁天のほかにもお楽しみがあるので、なんだか妙にワクワクするパワースポットだったりします。ユルワは今回、社務所に置かれて黄金の輝きを放っていた「金運みくじ」(初穂料300円)を引いてみました。
他にも本物の繭玉の中に、巫女さんたちが手作業でおみくじを奉入した「まゆ玉おみくじ」(初穂料300円)もちょっとした名物になっています。
他では見られないかわいらしいおみくじですが、「神様とのご縁が糸のように細く長く結ばれますように」という粋な洒落がかかった願いが込められています。さすが江戸前の神社ですね。
大人買いしたくなる和雑貨屋さん
人形町のパワースポットで神様とのご縁を結んだら、お次は小さなお店が立ち並ぶ界隈へ足を運んでみましょう。
新旧の飲食店や雑貨屋さんが立ち並び、中には古くからのたたずまいを守っているような老舗も見られます。ユルワはこういう古い建物が大好きで、たくさん写真を撮ってしまうんです。
地下鉄人形町駅の出口を出ると、そこは人形町通りと甘酒横丁の交差点に出ます。人形町通りから南に1本小さい道に入ると、親子丼の老舗「玉秀(たまひで)」の長い行列が見えてきます。
そんな玉秀の斜め向かいに、今回ご紹介したいレトロなお店「手ぬぐいのちどり屋」さんがあります。
こちらは今若い世代から再注目されている手ぬぐいのセレクトショップ。店内には所狭しと手ぬぐいが並んでいます。
日ごろから手ぬぐいを愛用しているユルワも、思わず「全部買います!」と叫びたくなるような、粋なデザインの手ぬぐいの数々。思わず時間の流れを忘れてしまいそうになります。
ちどり屋さんオリジナルのキャラクターもの(ドラえもん、ミッフィー、ディズニー)の手ぬぐいもあるので、お子様向けに1枚いかがでしょうか?
桜や富士山モチーフであれば、外国の方への贈り物にも喜ばれます。お店には英語と中国語版の手ぬぐいの解説書の用意もあるので、レジで気軽にお願いしてみましょう。
人形町で食べ比べをしてほしい「あれ」
先述の通り、人形町は老舗グルメが楽しめる場所ですが、今回はあえて人形町発祥のあのお菓子の食べ比べをご紹介したいと思います。
もうお分かりですね、人形町が生んだ「人形焼」です。多くの方が「人形焼」と聞くと浅草の仲見世のものを連想されると思います。事実私も仲見世で売っているものしか食べたことがありませんでした。しかし、人形町の老舗の人形焼を口にした瞬間、本当のおいしさを知ったのです。
人形焼を販売する老舗は主に3軒あるので、お越しの際はぜひ、3つの味の食べ比べをしてみてください。ユルワは今回ランチ代わりに3軒の人形焼食べ比べを行ってみたので、シェアしたいと思います。
重盛永信堂
大正時代から続く老舗菓子店の重盛は、水天宮前の交差点向かい側に位置する、ひときわ目立つお店がこちら。水天宮の参拝客が帰りに立ち寄ることから、お店の前はいつも人だかりでにぎわっています。
こちらの人形焼は薄皮にあんこたっぷりでボリューム満点。コッテリした甘さなので、疲れているときなど糖分を求めているときにおススメ。
人形町亀井堂
甘酒横丁沿いにある昔ながらの和菓子屋さんといった風情の亀井堂は、何と130年に及ぶ歴史を持つ老舗。現在でも牛乳を使用しないこだわりの伝統製法で人形焼や瓦せんべいを作っています。
亀井堂の人形焼は餡子は少なめですが「こだわりの製法」と言うだけあって、歯ごたえのあるカステラが特徴的です。甘さも控えめなので、食べやすいです。
亀井堂は店内に入ると即座に店員さんが試食をさせてくれます。惜しみなく商品を差し出してくださるという太っ腹なところが江戸前ですね。もちろん、試食させていただいたら買わずには出られません……。
人形焼のほかに瓦せんべいも名物で、今回ユルワは「茶つぼ」という、茶壺の形をしたお煎餅も試してみることに。抹茶砂糖という珍しいものでコーティングされています。
ほかにも時代の世相を風刺した瓦せんべいも発売されており、そんなところにも江戸の洒脱したユーモア精神が感じられます。
人形焼本舗板倉屋
人形町通りに面した地下鉄日比谷線の出口を出ると、何やら甘い香りが漂ってきます。こちらが最後にご紹介する人形焼のお店、板倉屋です。
こちらも老舗の雰囲気たっぷりの店構えで、カウンターに並んだ人形焼を見ているだけでテンションが上がってしまいます。
板倉屋の人形焼はカステラの厚さといい餡子の甘さといい、絶妙な加減で非常に食べやすく、万人受けする人形焼といったところでしょうか。また、特徴的なのは人形の顔の彫りの深さ。今にも話しかけてきそうな迫力を感じます。
まとめ
江戸時代、歌舞伎や浄瑠璃の劇場が多く、人形遣いが住む地域だったことが地名の由来となった人形町は、現代でも古き良き日本が感じられるエリアです。
水天宮や七福神を祀る神社の存在や、伝統文化を大切にし、今に伝える老舗の心意気がなせる技なのか、この地に降り立つとどこか優しく、温かい雰囲気に包まれるのを感じます。もしかしたらパワースポットというのは、そういう場所を指すのかもしれませんね。
「古臭い」だなんて思わずに、街そのものがパワースポットの人形町で自分なりのお気に入りを見つけるお散歩に出かけてみませんか。