沖縄のパワースポットとしては斎場御嶽(せーふぁうたき)や、神の島と称される久高島が広く知られていますね。独特の宗教観が息づくこの地では、九州以北では当たり前の神社をあまり見かけません。見かけたとしてもそのルーツを辿ると、沖縄の人々が大切にしてきた、神々降臨の聖地「御嶽(ウタキ)」が起源となっていることが多いのです
中でも那覇市の中心街からほど近い海岸の断崖に鎮座する「波上宮」。そのたたずまいは、古くから琉球の人々の祈りの中心として、深く敬愛されてきた聖地であることを物語ります。神々の世界「ニライカナイ」と繋がる沖縄随一のパワースポット「波上宮」の魅力を、今回はじっくりとご紹介します!
神社以前の聖地―ニライカナイ

シーサー、朱瓦の本殿、色鮮やかな龍の装飾・・・鳥居をくぐり、手水舎で清めて歩みを進めると、南国の雰囲気に包まれた境内が広がっています。しかも観光客が多いため、外国語がそこかしこから耳に入り、まるで異国に迷い込んだような気分になるのですが、この場所こそが沖縄随一の神社「波上宮(なみのうえぐう)」です。

【ご祭神】
伊弉冉尊 (いざなみのみこと)
速玉男尊 (はやたまをのみこと)
事解男尊 (ことさかをのみこと)
【ご利益】
国家鎮護・縁結び・安産・交通安全・旅行安全
子孫繁栄・延命長寿・商売繁盛・諸願成就
●波上宮
沖縄県那覇市若狭1-25-11

創建年は不詳ですが、神社の形態になる遙か昔から沖縄特有の礼拝所「御嶽(うたき)」が設けられ、陸上そして洋上からも人々が祈りを捧げていたそう。というのもこの地が神々の世界「ニライカナイ」とつながる聖地と考えられていたからです。
さてここで沖縄の宗教観を表す「ニライカナイ」という言葉ですが、沖縄のパワースポット巡りをさらに楽しむために、少しだけ勉強しておきましょう。
ニライカナイとは

・海の彼方にあり、生命や豊穣を生み出す神々たちのすみかを指す
・水平線の向こうは、生命が誕生し、死者が戻る場所とも考えられている
・このニライカナイから神々が人間の幸福と豊穣のために渡来してくるという信仰
・四方を海で囲まれた島特有の宗教観

沖縄を旅していると海辺の珊瑚礁などに御嶽や拝所(ウガンジュ)をよく見かけますよね。それこそまさにニライカナイ信仰が関係しています。沖縄らしい真っ青な海を背にした波上宮も陸と海との境目、つまりあの世とこの世の境目の象徴といえます。
和歌山県の熊野神社との意外なつながり

波上宮では沖縄らしい紅型のお守りも有名で、社務所は国内外の参拝客が行列を作っていました。人間の全ての願いを叶えてくれるご利益オールマイティな神社ですから、開運神社として大人気なのも頷けます。
オールマイティの理由の1つとして格式の高さも挙げられるでしょう。県内の格式が高い神社「琉球八社」の中でも、波上宮は最上位の「沖縄総鎮守」称号を有しています。
さらにこの波上宮、遥か離れた和歌山県の聖地・熊野とも深く結びついており、歴史愛好家にとっては見逃せない魅力があります。熊野を訪れた方ならお気づきかもしれませんが、祀られている神様が熊野の神々と共通しており、その由緒は古くからの言い伝えに遡るのです。
波上宮のご由緒

昔、ある人が漁をしていたところ浜辺で不思議な言葉を話す石を見つけました。その石に祈ると豊漁が続いたため、光る霊石として宝物にしていたそうです。
しかしこの霊石を奪おうと襲われるようになり、逃亡生活を余儀なくされてしまいました。やっとの思いで逃げてきた波上山(今の波上宮がある場所)で、「私は熊野権現である。この地に社を建てて祀れば、国を守護しよう」とお告げを受け取ったとか。その話が当時の王様の知るところとなり、礼拝所・波上宮が誕生したというわけ。
興味深いことに、県内の他の神社にも熊野信仰との関連が見られ、その歴史を紐解くと、琉球へ渡来した熊野の修行者や信者たちの影響によるものだそうです。いにしえからの大和(ヤマト)との繋がりを感じさせる、実に奥深い歴史がここにあります。
パワースポットのビーチで開運!?

境内から少し坂を下って左脇へ進むと、青い海を一望できる砂浜が広がっています。「波之上ビーチ」と呼ばれるこちらはお宮直下ということもあり、「行くだけで運が良くなる」開運ビーチと名高いパワースポット。広さはありませんが、那覇市内で唯一遊泳可能なため、参拝後に海水浴やシーカヤックなどのマリンアクティビティが楽しめるのも魅力的です。

岩崖の麓付近は立ち入り禁止ですが、御嶽があり波上宮境内とはまた雰囲気が異なります。
沖縄らしい信仰の形を垣間見られる貴重な場所。
(注意)地元の方々の大事な祈りの場のため、好奇心で勝手に触ったり、ものを動かしてはいけません。

岩崖の反対側へ行くには、一度境内に戻り鳥居から出て隣にある「波之上自動車学校」との間の小径を進む形になります。

波上宮を支える断崖が右手に迫り、その力強い存在感を間近に感じられます。筆者の個人的な感覚ですが、この場所こそ特別なエネルギーが満ちているように感じられました。参拝客で賑わう境内とは一線を画し、ひんやりとして厳粛な雰囲気です。
波上宮の隣―ガジュマルのパワースポット

南国風の神社、白浜のビーチ、そして巨大な断崖の御嶽―実際に訪れてみると波上宮は様々な表情があり、大変興味深いパワースポットでしたね。
さらにお隣の旭が丘公園にも筆者イチオシの場所を発見。園内の対馬丸記念館の隣に、ガジュマルの森が広がるエリアがあるのですが、神秘的な空気に包まれています。ガジュマルの木は沖縄では精霊が宿るご神木ですから、まさにここは精霊の世界と言えるでしょう。
神社参拝だけではなく、ぜひ崖の下の砂浜や公園のガジュマルの森へも足を運び、沖縄でしか味わえないエネルギーを感じてください!