アイスランドに、恋をしている
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特別企画「tripro VOICE アイスランドWEEK」
アイスランド総合研究所の企画「アイスランドに関する記事募集」でご応募いただいた記事のうち、「特別賞」「優秀賞」に輝いた記事を掲載しています。
今回の記事は「特別賞」に輝いた、逆井マリさんによる「『アイスランドに、恋をしている』」です。


アイスランドが、好きだ。
なんて稚拙な表現だろうと我ながら苦笑いしてしまうけど、心からそう思っているのだから仕方がない。

思えば、小学生のときだ。なにげなく見ていた地図帳でアイスランドの名前を見つけたとき、胸がキュッとときめいた。
それはお隣、グリーンランドにも感じるものがあった。なぜだろう。ミステリアスな名前の響きに惹かれたのかもしれない。

そのときめきを忘れることができず、20歳半ばになって10年近く勤めていた会社を退社し、一念発起して、アイスランドを旅することにした。おいおい、年齢と働いていた月日が合わなくないか?と思われるかたもいらっしゃるかもしれないが、高校時代からお手伝いしていた音楽雑誌の編集部に就職しているので、芸歴だけはムダにながいのです……。
当然、その間にビョークやシガーロス、mumなどのアイスランド出身アーティストの音楽に触れ、アイスランドへの憧れはますます強くなっていった。なぜあんな洗練された(それでいてどこかもの悲しい)音楽を鳴らせるのだろうという興味もあった。

退社を決めたと同時にアイスランドへの安いツアーを見つけた。飛行機、ホテル、朝食付きで、一週間で約12万円。もちろん大金ではあるが、想像していたよりもずっと安かった。本当は1か月、2か月と滞在したかったのだが、その手段が分からず、ひとまずツアーで行くことに。

旅はなんちゃら……ということで、海外初体験の親友を道連れにすることにして、その日が来るのを数少ないガイドブックやブログの旅行記を漁りながら、いまかといまかと待った。そのタイミングで、長らくお世話になっている人生の大先輩が「アイスランドに行くなら、僕の友人がいるからぜひ連絡を取ってみてくれ」と連絡先を預けてくれた。

そして、その日はやってきた。飛行機に乗り込んでから、何時間掛かっただろう。安いツアーなだけにコペンハーゲン(デンマーク)でのトランジットが長く、憧れのアイスランドエアーに乗った時はヘトヘトであった。
アイスランドに到着したのは夜中で、外を見ると、ただただ真っ黒……。ホテルまではバスで行けるとのことだったが、バス乗り場はどこだろうか、と迷ったのを覚えている。私も友達も英会話は習っていたが初心者同然なので、その黒は私たちの不安を煽った。
ただ、乗り場自体はそこまで大きくなく、あっけなくバスに乗ることができるのだが。

アイスランドに到着して1時間後くらいだろうか。
ホテルのチェックインを済ませて、大きな荷物を部屋に投げ込んだあと、ホテルのまえに広がる海を見に行った。真っ暗ながらも、広がる深い深い蒼を見て、乾いた潮風をヒリヒリと感じながら「ああ、わたしやっとココに来ることができたんだ」、と感動を噛み締めた。
しかしここは日本人。腹の底から出てきた言葉は、情けないことに「ヤッホー!!」なのであった(時間が時間だし、実際はそんな大声ではないんだけど)。

その叫びが海へと飲み込まれるのを見送ってから、横にいた女の友達と目を合わせて、意味もなく笑った。切なくなるくらい、泣きたくなるくらい、いい景色であった。
……が、鼻水がダラダラ止まらないくらい、ものすごく寒かったことも、ここに加えておこう。

翌日は、ホテルで予約を取ったツアーにあちこち参加した。アイスランドの観光地の象徴的な存在である巨大温泉・ブルーラグーン、間欠泉の景色は素晴らしいものであった。
また、グトルフォスの滝には息を飲んだ。通称「黄金の滝」と呼ばれ、「少女が守った滝」としても知られている。 20世紀初頭、イギリスの企業がこの滝一帯に水力発電所の建設を計画していたところ、シグリットという名の少女がこの工事に反対、滝壺に自らの身を投じようとした事で工事が中止。 この大自然は少女に守られ、その後多くの人の感動を誘う滝へとなったという……。

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その少女のエネルギーを彷彿させるかのように、激しい水煙を噴き上げるグトルフォス。不安定な岩場に足をのせながら、ジッと滝を見ていると、まるで少女が語りかけてくるようだった。
「あなたは何のためにここに来たの?」「あなたはこれから何をして生きていきたいの?」──と。
私の妄想ではあるけど、ここに来た人は、何かしら感じるエネルギーがあると思う。

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もちろん自分の職業柄、音楽スポットは欠かせない。特にレイキャビークの町中にある “12toner”は思い出深い。窓にはシガーロスのサインがうっすらと書いてあって、ドアをあけるだけでワクワクが広がる。日本と違って家のなかにいるかのようなスタイルで、CDを試聴できるのが嬉しい。
詳しくは割愛するが、ここを通じて、素晴らしい音楽と素晴らしいひとに出会えた。

歴史の重みを感じさせるハットルグリムス教会など、思い出深い場所を挙げだすとキリがないのだが、観光したなかでいちばん印象に残っているのはヘトリスヘイジ地熱発電所である。正直、最初は社会科見学的な気分であった。ただ、アイスランドでは70パーセントがクリーンエネルギーでまかなっているという事実に、当時は電気に大きな関心を抱いていなかった私でも驚いた。原子力発電所などはもちろんなく、クリーンエネルギーでまかなっているせいか、空気も澄んでいるように感じた。工場内は「いかにも」というモクモクとしたイメージではなく洗練されていて「さすが、アイスランド」なんて言葉が、見学中に何度も出てきた。
その矢先、日本からの寄贈品の兜を見つけた。その時は不思議に思っていたが、この工場のタービン6台は三菱重工製なんだそう。なんだか、勝手に嬉しくなったことを覚えている。そんな浮足立った工場見学だったが、この後、日本は大きく状況が変わり、ここで学んだこと、感じたことはわたしの人生の指針になった。

さて、この長い文章も佳境に入ってきたところで、冒頭に触れた先輩のご友人のお話を。
その人とはレイキャビークで無事対面することができた。なんともステキな女性で、その人を通じて、アイスランドのいろいろな文化に触れたのだが……いちばんビックリしたのは、旅行当時、子供たちのあいだで、あのキティちゃんがブームになっていたこと(笑)。キティちゃんグッズを渡したら大変喜ばれ、北欧のムーミン好きの自分にとっては、なんだか不思議な感じであり、胸を張りたいくらい誇らしい気分でもあった。
また、とある行事に参加させてもらったのだけど、子どもと一緒にいる男性の多いこと多いこと多いこと! なんて育児に積極的なんでしょう。あとから、アイスランドは子ども好きの男性が多いということや、母親と父親、それぞれしっかり育児休暇を取れる……なんて話をたくさん聞いて、思わず「アイスランドで子どもを産みたい」なんて言葉が出た(一緒にいた友人も、真剣に移住を考えていた)。
そのぶん税金が高いという問題もあるけれど、数年後、子どもを産んでからは改めて、この国の姿勢から学ぶことが多いと痛感させられている。これは現在更新中で。

実は……もなにもないんだが、旅をしたのは2009年。ピンとくるかたもいるかもしれないが、アイスランドは前年、金融危機の影響で経済が破綻状態に追い込まれている。そのせいか、レイキャビークを歩いたとき、街は寂しげな表情を浮かべていたように感じた。大きなビルの工事が止まったまま、家が差押えになっている……なんていう光景も目にしたが、アイスランドの人たちはあくまでマイペースで穏やかであった。
もちろん、大変なこともあるのであろうが、現地の友人に話を聞いたら「大丈夫だよ。なんとかなるよ。僕らはアイスランドが大好きだから」なんてことを笑いながら喋っていた。大丈夫だ、と思った。
また、そんな状況でも治安がいいことにも納得できた。人間の手が加わってない大自然に、素晴らしい景観に、おおらかで芯の強いアイスランド人。アイスランドから素晴らしい音楽が生まれていく理由が、分かった気がする。

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さて、ここまで書いておいてなんだが、もう5年もまえのことなので、細かい記憶は曖昧だ。
ただ、あの美しい景色はいまだに忘れずにいる。街に佇む水道管ひとつとってもセンスの良さが伝わってくるアイスランド。家庭を持ったいまも、今すぐあの場所へ、向かいたくなる。
ちなみに、私はオーロラを見たかったのだけど、その旅では観測することはできなかった。「また来てね」というメッセージなのだとしたら、嬉しい。こうして私は一生、アイスランドへ想いを募らせていくのだろう。

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