「羊の脳みそ」「カンガルー」…世界中の料理をレトルトにしちゃったシェフに直撃してきた!
日本

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「世界のごちそう博物館」というシリーズ名で、世界各地の食事をレトルトにした商品があるのをご存知でしょうか?

「カンガルーのカレー」「羊の脳みそのカレー」「ナマズのココナッツカレー」などユニークなものばかり! しかも、とっても美味しいんです。

今回、こちらの商品を作った本山尚義シェフにインタビューしてきました!

不思議な食品を発見!

ときどき利用する、ちょっと高級なスーパーマーケットで、カラフルな商品が置かれた特設コーナーが目に飛び込んできました。
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近寄ってみると……「カンガルーのカレー」「羊の脳みそのカレー」「ナマズのココナッツカレー」!!!!???? 「世界のごちそう博物館」というシリーズ名で、世界各地の食事をレトルトにした商品のようです。

「なんじゃこりゃーーー!」(←松田優作風。注:リアルタイムで見てませんよ笑!)
旅好きとしては嬉しい悲鳴を(心の中で)上げました。
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さすがに羊の脳みそは無理やわ……と、珍しいけれど挑戦しやすそうな「カンガルーのカレー」「ドリアンのココナッツカレー」「アカミミガメのカレー」を買って帰ったのでした。

実際に食べてみる

さあ、実際に食べてみましょう。紙パッケージを開くと、おおっ!
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裏面には可愛らしいイラストと、このレトルト食品の解説があります。どこの地域で食べられているとか、どんな特徴の料理だとか。なんだか、作り手のメッセージが伝わってくる商品だなあ。つかみはOKです。

カンガルーのカレー

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パウチを開けると、ちょっと乳っぽい独特の香りが。わくわく。

おっ、おいしい! 酸味あるトマトベースのスパイスカレーです。辛さは、さほどでもありません。
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これがカンガルー肉かあ。牛すじ肉と、ツナを足して2で割った感じ? ちょっぴり羊感もあるかも? お肉はしっかりしていて弾力はあるけど、硬くはありません。食べ応えがあって私は好きです。

普通においしく食べられて、びっくりです。

ドリアンのココナッツカレー

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ドリアン。フルーツの王様と言われますが、実はまだ食べたことがありません。噂では、おいしいけれど、すごく臭いんだとか。そのカレーって、どんな味だろう……?

見た目はホワイトカレーです。……あ、マイルドでやさしい味。

ココナッツが効いていることもあり、ドリアンから想像される「臭み」や「くどさ」は全くありません。辛いもの、エスニックなものが苦手な人も楽しめる味です。私としては、もうちょっとパンチのある味でもよかったかも(笑)。
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それにしても、どれがドリアンなんだろう? これ?と思ったら、タケノコですね(笑)。(後で聞いたところ、ドリアンはペーストに溶けてしまっているそうです)

赤耳亀のケイジャンカレー

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おお、パプリカの赤さが「赤耳亀」のビジュアルを連想させますね~~! 今までの中で一番スパイシーです! といっても激辛ではなく、辛さを楽しめる程度のレベルで、少し酸味もあります。

外来種であるアカミミガメ(赤耳亀)は日本の在来生物や生態系に影響を及ぼす恐れがあるため、日本ではよく駆除の対象になります。その命を無駄にしないようにとの思いからカレーにしたと説明書きが。

アカミミガメのカレーは、(おそらく)世界初だそうです!
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アカミミガメの肉は牛肉に似ていて、カレーに合うと感じました。丸い粒はオクラの種ですね。アメリカっぽい感じ。

3種のレトルト食品を食べてみましたが、どれもやさしい味で本当においしいです。現地の味を忠実に再現するよりも、日本人がおいしく食べられるように作っていると感じられます。

それにしても、おいしくて種類も豊富で、パッケージもかわいい。「どこの誰が作っているんだろう?」と商品の表示をみると、神戸に事務所を置く本山尚義さん。
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……私の地元、神戸の人じゃありませんか!!

会える! これは話を聞くっきゃない!
さっそく面識のない本山シェフにインタビューを申し込み、ご快諾いただきました。

本山尚義シェフにインタビュー

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インタビューを受けてくださったのは、「世界のごちそう博物館」オーナーでシェフの本山尚義さんです。

――今日はありがとうございます。まず、本山さんは普段、どんなお仕事をしているのですか。

本山さん(以下、敬称略):「料理で世界を平和にする」をコンセプトに、世界のさまざまな料理をレトルト食品にして販売したり、講演活動をしたりして、多くの人に世界の料理や各地域の現状を知ってもらう活動をしています。

2016年1月まで、世界各国の料理を提供するレストラン「世界のごちそうパレルモ」を経営していましたが、今は店をやめてレトルトの製造・販売や講演に専念しています。ですから「世界のごちそう博物館」というレストランや博物館があるのではなく、活動の屋号です。

――そのような活動をすることになったきっかけは?

本山:料理人としてのキャリアは、フランス料理店での修行からスタートしました。ある時、店のお客さんからインド旅行に誘われて一緒に行きました。それまで僕は、とくに旅好きというほどでもなく、エスニック料理も時々食べる程度でした。

けれどインドで家庭料理を作る様子を見せてもらい、スパイスのすごさに衝撃を受けました。フランス料理は、おいしい食材を積み重ねて作ります。だから料理がおいしいのは、ある意味当たり前。しかしインド料理では、スパイスを入れる前と後でこんなに味が変わるのか、と魔法を見るようでした。

またたく間にスパイスの虜になってしまい、帰国後、フランス料理の店をやめてインド料理店に就職。数年後にはその店もやめ、世界各国を回りながら飛び込みで現地の料理を教えてもらう旅をしました。アジア、西ヨーロッパ、北アフリカを中心に3年間で30カ国を訪れました。
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(写真提供:本山尚義さん)

旅の中で「この食材がこの料理になるのか!」という驚きがあったり、途上国で飢餓に苦しむ子どもたちを見たりするうちに、帰国したら世界のいろんな料理を食べられるお店を出して「食べてくれる人に、世界の知らない地域に興味を持ってもらいたい」と思うようになりました。

そうして帰国後、神戸でレストラン「世界のごちそうパレルモ」が誕生しました。
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(写真提供:本山尚義さん)

――レストラン時代で、印象に残るメニューやエピソードはありますか。

本山:お店では通常30種類くらいのメニューがありましたが、それに加え、日本が国家として承認する全195カ国(当時)の料理を作って出す「世界のごちそうアースマラソン」というチャレンジをしました。

2010年から毎月、月替わりで数種類ずつメニューを出し、2012年まで2年かけて、全195カ国を達成。33人ものお客さんが、全種類をコンプリートしてくれました。

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――ええっ! 100カ国でも十分すごいと思うのですが、「すべて」にこだわったのはなぜですか。

本山:旅の経験から「料理で世界平和に貢献したい」と思っていたのですが、飲食店でいきなり平和を語ったら気持ち悪いじゃないですか(笑)。自分の思いを語るきっかけを作るためには、何か桁違いのイベントをする必要があると思いました。それには、100カ国よりも「すべて」かなと。

自分が行っていない国の料理については、その国の出身の人に教えてらもったり、駐日大使館に問い合わせたりして作りました。

――その中で、どれだけ探してもツテが見つからない「ラスボス」のような国はどこでしたか。

本山:それは、コソボです。長らく紛争状態にあった地域なので、行ったことがある人や現地在住の日本人、またはコソボから日本に来ている人がなかなか見つからなくて。

本やネット検索でも情報が得られず途方に暮れていたところ、ダメ元でミクシィを開いて「まさかコソボのコミュニティはないだろうな」と探してみたら……あったんです! 鳥肌が立ちました。

しかもそのコミュニティに参加していたのは、コソボ人の夫と日本人の奥さんという最高のパターン。すぐに連絡を取り、コソボで使うスパイスなどを送ってもらいました。

――コソボですか! このインタビューが載る「TRIP’S」には、コソボ隣国のアルバニアの記事がたくさん載っているんですよ! ぜひ後で見てくださいね!
(↑と、必死にPRしてしまいました。私自身、TRIP’Sで初めてコソボやアルバニアの実態を知って虜になっています、笑)

ところで、レストランの経営をしながらレトルト食品を作ったのはなぜですか?

本山:レストランでは、特定のメニューが注文されると、売り上げの一部を難民支援の団体に寄付していたのですが、寄付額は1食につき数十円なので、1日で数百円にもなりません。支援対象になる料理を、もっと効率よく多くの人に食べてもらえないかと思っていたことが1つ。
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本山:もう1つのきっかけは、僕の友人が作って出していた『スパイスジャーナル』という本でした。

おもしろい本だったのですが、あまりにマニアックで売れていなかったので、国立民族学博物館(通称「みんぱく」、大阪・万博記念公園内)のミュージアムショップに本を置いてもらえないかと直談判に行きました。友人は交渉が得意でないタイプなので、僕が付き添ったのです。

すると博物館は意外にもOKしてくれ、さらに僕に「人の推薦ばかりする君こそ、置きたいものはないのか?」と提案してくれたんです。

この2つの出来事と、レトルトの試作場所を借りられたことなどが重なって、「世界のごちそう」のレトルト食品が2013年に誕生しました。

――実際にいくつか食べましたが、どれもおいしくて、食べやすい味にしていますね。パッケージにも「現地の味を正確に再現していません」と書いてあります。味の再現よりも、あえて食べやすさを重視するのはどうしてですか?

本山:現地の味を忠実に再現すると、日本人には食べにくい味になる場合もあります。けれどお金をいただく商品である以上、食べた人に「おいしい」と思ってほしい。それに、味がいまひとつだと、その国自体に対して良くないイメージを持ちかねないからです。

――各国への愛情が感じられますね。2016年にレストランをやめて、レトルト販売や講演中心の活動に変更したのはなぜですか。

本山:195カ国の「世界のごちそうアースマラソン」をやり終えた時に、料理で世界が近くなる可能性を感じ、その活動をもっと広げたいと思ったからです。レストランをしていると、店を開けている間は他のことができませんし。

たとえば、アメリカ南部の郷土料理「ガンボ」は、オクラを使った料理です。オクラの原産地はアフリカ北東部なのに、なぜアメリカ郷土料理になっているのか。考えてみると、過去にアフリカからアメリカ大陸に奴隷を輸出していたから、その時にオクラの種が奴隷船にまぎれ込んだのかもしれないと気づきました。

こんなふうに料理ひとつからでも、その土地の歴史や背景を学ぶことができます。こういうことを伝えていけば、「料理で世界を平和にする」ことに少しでも近づけると思っています。

――最後に、本山さんは活動を通して、今後、どんな人にどんなことを伝えたいですか。

本山:僕の姿を見て、これからの若い人が「世界が良くなるために、自分はこれをするんだ」というものを見つけてくれれば嬉しいです。僕の場合は料理ですが、音楽でもアートでも政治でも、何でもいいのですから。

自分と違う環境の人やものに興味をもつと、コミュニティや社会、ひいては世界がやさしくなると思うんです。僕の料理がそのきっかけになれば嬉しいですし、旅もそのきっかけの1つだと思うので、どんどん旅を楽しんでください。

――ありがとうございました!

「世界のごちそう」レシピ本を出版!

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このインタビューの3日前に、本山さんは「世界のごちそうアースマラソン」のメニューを基に、それらの料理を私たちが自宅で作れるようにしたレシピ本『全196カ国 おうちで作れる世界のレシピ』を出版しました。

出版のことを知らずに取材をお願いしたのですが、すごいタイミングです!(アースマラソン当時より日本の承認国家数が増えたので、現在は196になりました)

いわば、アースマラソンの集大成。でき上がったこの本を手にして、本山さんは「本当の意味で、世界のごちそうアースマラソンが終わった。やり切った」と感じたのだそうです。
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これ1冊で、世界じゅうの料理が作れちゃいます。レシピだけでなく、世界各地についてのコラムも載っており、読み物としても楽しい本です。

書店やインターネットで買えます。→Amazonでの購入はこちらから

販売情報まとめ

「世界のごちそう博物館」レトルト 全50種類
◆世界のごちそうシリーズ、旅めしシリーズ、日本のごちそうシリーズ……650円(税込)
◆珍食材シリーズ……750円(税込)

<販売場所>
野外民族博物館リトルワールド(愛知県)、国立民族学博物館(大阪府)、須磨海浜水族園(兵庫県)、東急ハンズ 心斎橋店(大阪府)、大垣書店 京都ヨドバシ店(京都府)、ヴィレッジヴァンガード 三宮店(兵庫県) ほか

世界のごちそう博物館ウェブサイトからも、全種類購入できます。

レトルト食品を1つ食べるごとに、その国のことを調べたり、その国を旅するプランを頭の中で組み立てたり。おいしい食事だけでなく、楽しみと学びも味わえます。

本山さんに初インドの印象を聞くと「スパイスに魅せられた」、これから行ってみたい地域を聞くと「南米です。料理の仕方が大胆なんだそうです」と、とにかく料理への愛があふれていたのが印象的でした。

これからもおいしい料理を通じて、世界じゅうの人たちを笑顔にしてください!!

羊の脳みそカレーに挑戦!

スーパーでレトルト食品を初めて見たとき、勇気がなくて買えなかった「羊の脳みそカレー」。本山さんに聞いたところ、レトルト食品の中でも一番人気なのだそうです。

本山さんの料理がおいしいことはすでに実証済みなので、「それなら」と購入して食べてみました。

おお! トマトベースにクローブのスパイスが効いて、いい香り! 脳みそも、白子やレバーのような食感・味わいで、問題なしにおいしいです! ええ、知らずに食べれば……。

でも脳みそだと思うと、「この羊さんはこの脳で『あそこへ走ろう』とか考えてたのかな」と思ってしまって、申し訳ない気持ちが先行してしまいました。お肉なら全然平気なのに、現金なものですね。

海外で変わった食材を食べるのが好きな人に、全力でおすすめします!!
羊の脳みそカレーに挑戦!

この記事を書いた人

合楽 仁美(らく)

合楽 仁美(らく)ライター・アナウンサー

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神戸在住のライター・アナウンサー。世界遺産「姫路城」のある姫路市の広報専門職員を経てフリーに。シルクロード文化が好き。旅を始めたのが29歳からと遅咲きのため訪問国数は少ないが、そのぶん「1歳でも若いうちに行きにくいところから」とウズベキスタンや中国・新疆ウイグル自治区など、マニアックな地域を攻めている。

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