ひとりの台湾人の思いが、多くの巧を動かし造り上げられた聖天宮には、全部で5,000頭の龍が舞っています。異邦人のチカラで切り開かれた土地が、ロケ地として注目を浴びるほどになった理由を探ってみたいと思います。異国情緒たっぷりの寺社巡り、現地には一体どんな物語があるのでしょうか?
黄色い屋根瓦と龍が目を惹く「聖天宮(せいてんぐう)」
雑木林や田畑のエリアで、周りの風景に馴染まず、突然現れる異国の建物。聖天宮の建て主が若くして不治の病を患い、ご本尊「三清道祖」と縁起により完治できたことが始まりです。三清道祖への感謝の念から、誰でも神様のご利益をえられるお宮を造りたいと考えていたところ、生まれ故郷の台湾ではなく日本の坂戸の地にお宮を建てるようにお告げがあったそうです。雑木林以外何もない土地をイチから切り開き、台湾のお宮として「聖天宮」が建てられました。黄色い瓦と龍は、神様と皇帝の建物にしか使われないと言われています。
聖天宮の天門と呼ばれる入口門の装飾は、屋根の下にある「万物を象徴する彫像物」。その数の多さに拝観する前から驚かされます。拝観料は300円です。
ロケ地として引っ張りだこの聖天宮前殿
横浜にも神戸にもこれほどの規模の建造物は無く、道教寺院として日本最大級を誇ります。敷地面積もさることながら装飾が一級品のため、西遊記や何とかレンジャーのような戦隊モノ、「EXILE・ATSUSHIのMV」ロケ地にも使用されている場所です。鼓楼と鐘楼を左右に備える前殿の前庭は、綺麗な石が敷き詰められたうえにとても広く、ロケ地として人気があることがひと目でわかります。
1本5mもある透かし彫りされた石柱と、1枚4mの石板から彫られた扉は、一見の価値があります。
神様の「許可」が必要なおみくじのある前殿
前殿には、道教式のおみくじがあります。日本のものとは違い、おみくじを引く前に神様の「許可」が必要です。誰でも100円でチャレンジできますが、許可されなかった場合は、どうなるのでしょうね。
天井の装飾をひとつひとつの精巧さやスケールの大きさを考えると、相当な手間と資金が投じられたのではないでしょうか。
恋愛成就のご利益が!? 幸福や良縁を授かる西の鼓楼
西にある鼓楼の「陰鼓」です。鼓楼は、陰鼓の下で赤い蝋燭(ろうそく)に火を灯して、幸福や良縁を授かる場所でもあります。恋愛成就にご利益があるということでしょう。陰鼓は、自動で午後3時に12回鳴るようになっています。
鼓楼からは、本殿の屋根装飾が独特の色彩や細かい部分まで、とてもよく観える場所です。
強い気を授かる東の鐘楼
東にある鐘楼の「陽鐘」です。鐘楼は、陽鐘の下で赤いハチマキのような布に、実現させたい思いを、言葉を書いてぶら下げて、強い気を授かる場所でもあります。どうしても、成し遂げたいことがある人向けの場所のようです。陽鐘は、自動で午後3時に12回鳴るようになっています。
鐘楼から観る前殿の屋根装飾です。細部にまで金細工されているのがわかります。孔雀の装飾を、目の前で見ることのできる場所です。
宮殿を思わせる回廊から本殿は別世界
壁には、様々な神様の絵などが描かれています。キンピカの灯籠もあり、豪華絢爛な光景を観ていると、埼玉にいることを忘れてしまいます。
聖天宮には、透かし彫りされた石柱が全部で8本ありますが、そのうち4本が本殿にあります。
本殿の前にある九龍網という、見事な石彫刻です。一枚岩に9頭の龍が彫られていますが、どの足がどの龍のものなのか、探せるようで探せません。
香台の下にキョンシーマークを発見! 第1作目から30年経ちましたが、テンテンの「幽玄道士」の映画を観て以来のマークを目にすることができました。
本殿内に係員が常駐しているので、簡単な聖天宮の由来や、彫刻などの解説を聞くことができます。ご本尊の三清道祖は撮影禁止ですが、東西南北を守る青竜・白虎・朱雀・玄武の「四大天王」は、撮影OKを頂きました。仏像マニアにはたまらないエリアです。
日本では本殿を「参拝」すると言いますが、台湾では「拝拝」と言うそうですね。
10,000点の木彫刻に金箔を施した天井の中でも、本殿の渦巻き状の細工は見事です。台湾の人々の熱い思いに、少しだけ触れることができました。まだまだ観ていたいのですが、数回訪れることで新しい発見があるものです。次回の楽しみにしておきたいと思います。