寒さが本格的に肌を刺すようになってきました。冬本番って、東京は案外遅いですよね。
お散歩中に頭に浮かぶスイーツも、傾向が変わってきます。かき氷やケーキから、ぜんざい、パンケーキへ……。温かいものをお求めであれば、ほかほかのパンはいかかがでしょうか?
今回はブックカフェ特集第4弾、日暮里の住宅地に佇む「パン屋の本屋」をご紹介します!
「パン屋の本屋」とは?
2016年12月、パン屋「ひぐらしベーカリー」と合併する形でオープンした書店。
日暮里の住宅地の中に溶け込むようにして建っており、隣にはスーパーが。地元の方々や子連れのママさんも入りやすく、お家用のパンを買いつつ本も手に出来るような、暮らしに寄り添ったお店です。
パン屋としての本屋?
さて、しかしパン屋と本屋の取り合わせというのはどういう形で融合した書店なのでしょう……。
まずは早速「パン屋の本屋」を覗いてみます。
通路が広く、角がある平台は高く――。小さな子が走り回っても邪魔にならず、そして角が頭に当たらない高さ。
絵本や児童書が沢山並ぶ中でも、深いブラウンで統一されている棚や床が店内のシックなスタイルを崩させません。
子供に優しく、それでもオシャレに。壁一面丸々の窓から光がいっぱいに差し込んでくることも相まって、素敵な空間に仕上がっています。
最初目にした時は「!?」となりました。本当に、こんがり焼けた食パンが置いてあるよう。なるほど確かにパン屋の本屋です……。
食パンは各ジャンルに分類されている書棚ごとに丁寧に置いてあります。ちょん!といちいち覗くパンに書かれたチョコペンの文字が、とても可愛らしい。
よのなか? 好奇心? 中には不思議なジャンルも。目的を持って所定の本を探すための店ではなく、一期一会を大切にして何でもお客に本を取ってもらうタイプの店だからこその遊び心です。今日の「好奇心」は何かな……なんて、定期的にコーナーの並びを見る楽しみ方もありそうです。
懐かしの絵本もいっぱい。自分も知ってる絵本が子供に渡るのも嬉しいですが、大人だって絵本、欲しい時あります……。はらぺこあおむし、買おうか少し悩みました。
児童書コーナーの真下の平台。大人も読んで欲しい子供の話や、子供に読んで欲しい大人の話を置いてあるようです。ジャンルのものを置くだけではなく、そこを見た方にこそ是非一緒に取ってほしいものを添える。
一枚上の発想、素晴らしいです。
同じく絵本の棚にもその傾向が。絵本だけでなく、絵の多い大きい文字で書かれた本、つまり絵本を読むことから読者へと変わって行く際に読んでほしい子供の本が、所々差さっています。
これをきっかけに、読める本が増えて読書が大好きな子が増えてくれれば……そんな願いが聞こえてきそうです。
毎回特集を組んでらっしゃる中央平台。この日は、もうすぐバレンタインということでスイーツ本フェアでした。絵本もあれば、レシピ本、紀行本まで。大人も子供も楽しめる、オススメな本しかないコーナーです。
一番気になった絵本は、この食パンの形をした本。触ってみると、実は耳の部分がフワフワなんです。こんがり焼けたパンが、たくさん出てきます。王様のパンツのパンが、フカフカで美味しそうでした。
他にも、パンに関する本は書棚ひとつ丸々使って! 確かにパン屋としっかり繋がっています。パンを読んだり見たりそして作ったり。楽しみ方は、食べるだけではないんですね。
では、パン屋の本屋のパン屋は?
パンの本を見ていたら、本物のパンを食べずにはいられない。ここは本屋としてのパン屋も見てみたいところ。
店内いっぱいに広がるパン! デニッシュ生地のものが少ないところが、普段見かけるチェーン店のパン屋と一番違って見えました。
本のPOPのようにパン一つひとつに細やかな説明書きが。手書きなのも、余計に親近感が湧きます。
大きいタイプのPOPも。並ぶ商品の隅々にまで愛着が感じられます。
食パンコーナーが異様なまでの充実ぶりを見せていました。明日の朝ごはんのパンに1斤。暮らしに寄り添えば、1番多くあって欲しいのは確かに食パンかもしれません。
これは……! 小さな子たちから給食の話を聞く度に思い出すあの揚げパン!
大人だって食べたい、懐かしの味。アルミのトレイに並べられているところがまた、昔を思い出させる風景によく馴染みます。
トングの中に、小さな可愛らしい猫の手が。子供もパン、取りたがりますよね。
買ったパンは、奥のカフェスペースで食べることができます。
気になったパンをピックアップ。大きなカップにたっぷり入ったブレンドコーヒー(¥300)と共にいただきます。長時間のお話の、頼もしいお供になりそうです。
左のねじりパン(¥100)は、揚げパンコーナーの一角から。まぶしてあるのはシナモンシュガー。噛めばジュワッと広がります。
右は、その名も「えほんパン」(¥140)。あの、水色のキュートなキャラクターでお馴染みの『ペネロペ』のパンです。中には、しっかりと固めなカスタードクリームがぎっしり。バニラビーンズもちゃんと効いています。耳にかかったホワイトチョコも、良い塩梅でした。
都心のケーキセットは大抵900円ですが、それよりもお手軽な値段でボリュームが出せるパン。本当は喫茶店に向いているものなのかもしれません。
帰り際に気が付いた、手描きの窓のイラスト。可愛い、楽しい、温かい。パン屋としても本屋としても必要なものがちゃんと揃ったお店でした。何より通路が全て広く、室内でも閉塞感が一切なかったことが大きかったです。
パンを通して本に触れる、本を通してパンに触れる。意外なふたつのリンクの仕方が、開店3ヶ月にして地域の暮らしに馴染む、全く新しい本屋の形の魅力がありました。