日帰りで日月潭へのすすめ。今でも存在する台湾の原住民文化を味わえる
台湾

台湾随一のレイクリゾートとして知られる「日月潭」。

日本統治時代は台湾八景のひとつに数えられ、エメラルドグリーンの美しい湖の風景は、ミシュランのグリーンガイドで星を獲得しています。

 

そんな台湾屈指の景勝地として知られる日月潭ですが、その見どころは美しい自然だけではありません。

日月潭周辺には原住民の集落があり、湖を見下ろす斜面には、台湾最大の原住民テーマパーク「九族文化村」もあるのです。

せっかく日月潭に行くなら、なかなか知る機会のない原住民の文化にも触れてみたくありませんか? 台中から行く、美景と原住民文化を楽しむ日月潭への日帰り旅の模様をレポートします。

台中から高速バスで日月潭へ

日月潭へは、台湾中部の都市・台中から日帰り旅行が可能。

 

台北からの日帰りもできなくはありませんが、その場合一日の移動時間が長くなり、時間的・精神的にも余裕がなくなりやすいので、日月潭へ日帰りするなら台中からがベター。台中市内や台中近郊には、ほかにもたくさんの見どころがあるので、宿泊する価値は十分あります。

 

日月潭観光は明るいうちが勝負なので、日月潭に出かける日は朝早めの出発を。

台中~日月潭間の高速バスは「南投客運」というバス会社が運行していて、筆者は朝7:45台中干城站(南投客運営業所前)発のバスに乗りました。

台中から日月潭へ向かうなら、台中~日月潭の往復バスや、日月潭の観光船や周遊バスのチケットがセットになった「日月潭パス」がお得。九族文化村に行くなら、九族文化村入場料も含まれる1,100元(2018年10月現在の料金)のパスを購入しましょう。

 

これらのチケットは、それぞれ別々に購入すれば1,645元になるので、パスを買うだけでかなりの節約になります。

まずは「九族文化村」で下車

台中から日帰りで九族文化村を含めて日月潭を観光する場合、ちょっとしたコツがあります。それは、台中から高速バスで日月潭に向かう際、最初に九族文化村で下車すること。

 

台中から日月潭に向かうバスは、九族文化村を経由するので、最初に九族文化村で下車すれば、タイムロスが少なく効率的に観光できるのです。

ただし、九族文化村に停車しない便もあるので、時刻表で九族文化村を経由するバスを選んで乗車してください。

台湾最大の原住民テーマパーク「九族文化村」

「九族文化村」とは、台湾最大の原住民テーマパーク。

今となっては、「台湾は漢民族の国」というイメージがありますが、実際には、中国大陸からの移住がさかんになった17世紀以前からこの地に居住していた先住民がいます。

九族文化村は、ざまざまな台湾原住民の文化を紹介する施設で、1980年代の創設当時、政府に承認されていた原住民が9部族だったためにこの名がつきました。

現在も台湾で暮らす原住民は、55万人以上。16の原住民が政府から承認を受けている一方で、政府から承認されておらず、「平埔族」と総称される原住民も多数存在します。

山の斜面にある九族文化村は、おもに「先住民集落エリア」「ヨーロピアンガーデン」「アミューズメントワールド」の3つのエリアに分かれていて、「原住民テーマパーク」といいながら、ヨーロッパ風の庭園やジェットコースターなどの遊具もある、一日中遊べるアミューズメント施設なのです。

日本のガイドブックでは、九族文化村はちらっと紹介されているだけ。その様子からは、これほど広い敷地をもつ大規模なテーマパークだということは、想像もつきません。

先住民集落をリアルに再現

色々とつっこみどころも多く、ジェットコースターなどの乗り物も気になるところではありますが、九族文化村で丸一日を費やすつもりがないのなら、目指すべきは先住民集落エリア。

このエリアでは、アミ族、タオ族、ルカイ族、サオ族といった、台湾原住民の伝統的な家並みが再現されています。実際の集落から移築されたものも多く、彼らの暮らしぶりがわかる人形などを使った展示は実にリアル。

獲った敵の首を集落の入口に置く習慣があったというパイワン族は、一定期間家の中に死者の亡骸を安置していたといい、本物そっくりの人形には一瞬ギョッとしてしまいます。

暴風雨を避けるために、地面に掘られたというタオ族の家屋。驚くほど天井が低いですが、この家にも実際に入ってみることができます。家の奥のほうは天井が高くなっていますが、入口は本当に狭いので、頭をぶつけないように要注意。

一口に「原住民」といっても、部族によって住居の様式や習慣などが異なるので、部族ごとの違いを比較してみるのも面白いですよ。

こうして各部族の家の中を見学するのはもちろんのこと、弓矢体験や伝統工芸品の制作体験など、ゲスト参加型の多彩なアトラクションが待っています。

迫力満点の原住民ショー

九族文化村で絶対に見逃せないのが、原住民の歌や踊りが繰り広げられるショー。

施設内にはいくつかのショースペースがありますが、比較的大きな会場であるナルワン劇場か祭典会場で行われるショーは、必ず見ておきたいところ。

 

祭典会場では11:30から、ナルワン劇場では13:30と15:00から原住民の暮らしや文化を紹介するパフォーマンスが行われます。

歌あり踊りありのショーは、迫力満点。11:30から開催される祭典会場でのショーは、男性出演者の勇ましい衣装や動きも手伝って、「ライオンキング」のミュージカルを思い出しました。

この躍動感、写真でも伝わりますよね?

 

九族文化村のショーは、ショーを観ているお客さんも笛を吹いたりダンスをしたりの観客参加型。ユーモアを交えつつ原住民の文化が紹介されるので、肩ひじ張らずに楽しめます。ショー終了後は、出演者とともに記念写真をどうぞ。

素朴な原住民グルメ

九族文化村では、伝統的な台湾原住民の食も楽しめます。

 

ツオウ族の竹筒飯は、見た目もユニークな一品。その名の通り、竹の筒に入ったご飯で、「どうやって食べるんだ?」と思いながら切り込みに指を入れると、竹筒がぱかっと開いてご飯が現れます。


ねっちりとした炊き込みご飯は、日本のおこわにそっくりで、滋味あふれる素朴なお味。テーマパークの売店にもかかわらず、意外なほどのおいしさです。

スタミナたっぷりのメニューをお探しなら、プヌン族の焼肉はいかがでしょうか。

昔ながらの薪で熱した石板で焼いた香ばしいお肉が食欲をそそります。口に入れると、表面はカリリと、中はジューシー。

九族文化村からロープウェイで日月潭へ

九族文化村を楽しんだ後は、いよいよ日月潭へ。

九族文化村から湖畔へ行く交通手段といえば、日月潭ロープウェイ。

 

全長1,877メートルもの長さがあるこのロープウェイは日月潭観光のハイライトのひとつで、九族文化村に入場せずロープウェイからの眺望を楽しむ人もいるほどです。

台中からの高速バスは九族文化村の南入口に到着しますが、日月潭ロープウェイ乗り場は、九族文化村の北入口の外。

 

ロープウェイは通常のゴンドラと、床がシースルーになったゴンドラ「クリスタルキャビン」の2種類があります。どちらか好きなほうを選べるので、スリルを味わいたい方は、ぜひクリスタルキャビンをどうぞ。

 

床が透けているクリスタルキャビンは、高所では足がすくんでしまいそうなほどの迫力。

最初、ロープウェイからは九族文化村が見渡せますが、山を越えるとしだいに視界が開け、なだらかな弧を描く山と湖の美しい風景が目に入ってきます。

この日はやや曇りがちではありましたが、それでも、上空から眺める雄大な自然風景は感動的でした。

遊覧船で湖の対岸へ

ロープウェイが降り場に到着したら、湖畔を歩いて観光船が出る伊達邵碼頭へと向かいます。ここから、日月潭でもっとも賑わっている水社碼頭まで、水上からの美景を楽しみながらのしばしの船旅。

日月潭、英語名「Sun Moon Lake」は、文字通り、湖の東が太陽、西が月の形をしていることに由来します。

写真では伝わりにくいですが、湖面は美しいエメラルドグリーン。湖畔には文武廟や玄奘寺といった、由緒ある寺院も建っており、船の上から眺める日月潭の美しさはまた格別です。

レイクビューのスタバで休憩

水社碼頭周辺は、多くのホテルや土産物、レストランなどが集まる日月潭の繁華街。

ゆったりくつろげるカフェが少ないなか、貴重な存在といえるのが、スターバックス日月潭門市。湖のすぐ近くに位置しているため、レイクビューのちょっと特別感のあるスタバで、テラス席からは湖の景色が楽しめます。

メニューなどは普通のスターバックスと変わりませんが、日月潭を見下ろしながらのカフェタイムは最高に開放的。台湾のスターバックスには台湾茶もあるので、あえてコーヒーではなくお茶を頼んでみるのもいいでしょう。

台湾最大の狛犬がある文武廟へ

休憩で英気を養ったら、日月潭周遊バスで文武廟へと向かいます。

日月潭を見下ろす高台に位置するこの廟は、廟としては台湾最大級で、入口の門の先に立つ赤い狛犬は台湾最大のもの。その大きさはもちろん、派手な色合いが目を引く狛犬は、どこかユーモラスな表情をしていて、絶大な存在感があります。

廟では「文」の神様である孔子と、「武」の神様である関羽と岳飛が祀られており、鮮やかな赤が印象的な華やかな色づいや、精緻な装飾は一見の価値あり。

一番奥にある「大成殿」には、さらに上にのぼれる階段があり、ここをのぼると文武廟の屋根と日月潭が織り成す絵のような景色を拝むことができます。この景色を目にすれば、「日月潭を堪能したなぁ」という気分になれるはず。

高速バスで台中へ

日月潭観光を満喫したら、来たときと同じ高速バスに乗って台中へと戻りましょう。今回のバス乗り場は、水社碼頭近くの水社遊客中心前。

夕方になると台中へと戻る旅行者で混雑し、バス停に並んでもすぐには乗れない場合もあるので、時間に余裕を持っておくのが吉。「次のバスを逃したら今日中に台中に戻れない」というぎりぎりのタイミングで帰るのはおすすめしません。

筆者は、朝7:45のバスで台中干城站(南投客運営業所前)を出発し、9:30すぎに九族文化村に到着。日月潭16:40発のバスに乗って、18:30ごろ台中駅に到着しました。

台中から日帰りで、九族文化村を含めた日月潭の観光プランはあまり紹介されていませんが、筆者が実践した通り、九族文化村と日月潭をあわせた日帰り旅行は十分可能。日月潭観光は明るいうちが勝負なので、朝できるだけ早く出発すると、あとあと時間をゆっくり過ごすことができます。

台湾を代表する古くからの景勝地として知られる日月潭ですが、九族文化村の存在はあまり知られていません。

せっかく日月潭を訪れるなら、知られざる台湾の原住民文化にも足を運ぶことで、楽しみは2倍にも3倍にもなるはずです。

この記事を書いた人

はるぼぼ

はるぼぼ旅するライター・ブロガー

和歌山出身。東京での会社員時代、旅先の長野でドイツ人夫に出会う。5ヵ月間のアジア横断旅行と2年半のドイツ生活を経て、2018年7月日本に帰国。これまでの海外旅行歴は60ヵ国240都市。特に目がないのが、「旧市街」「歴史地区」と名のつく古い街並みを歩くこと。旅のリアルな「ワクワク」をお伝えします。

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