幻のミステリアスな言語「モルドバ語」はモルドバの人に忌み嫌われていた
モルドバ

こんにちは、ライターの新田です。今回は「モルドバ語」を取り上げます。「モルドバ語」は知る人ぞ知るミステリーな言語です。一体、どこがミステリーなのでしょうか?

モルドバの人に「モルドバ語」と言うとキレられる?


キシナウにある教会

一般的に国名と公用語の名前は一致するものです。例えば、日本の公用語は「日本語」ですね。中国の公用語は「中国語」です。ドイツ人に「あなたはドイツ語を話しますか」と聞くと当たり前すぎて怪訝な顔をされるかもしれません。

しかし、ルーマニアとウクライナの間に挟まれた国、モルドバでは「あなたはモルドバ語を話しますか?」と聞くと、キレられるとか(実際に私の友人はモルドバの人にそのように質問をしたら怒られたそうです)。

実際に、モルドバの基礎データを見ると、モルドバの公用語は「ルーマニア語」となっています。しかし、ロシアの本屋には「ロシア語・モルドバ語会話集」という本があります。

「モルドバ語」は存在するのに、なぜかモルドバの人に忌み嫌われる言語、一体、どういうことでしょうか?

モルドバとルーマニアは同朋


この文字はルーマニア語

まず押さえておきたい点はモルドバ人とルーマニア人は基本的に同じラテン系の民族だ、ということです。モルドバの人もルーマニアの人も同じ言語「ルーマニア語」を書き、話していました。

「ルーマニア語」はラテン系の言葉で文字はラテン文字です。「ルーマニア語の文字はラテン文字」これをよーく覚えといてください。

モルドバは1940年に「モルダビア・ソビエト社会主義共和国」として、ソビエト連邦の一共和国になりました。つまり、ここで「モルドバ(モルダビア)」と「ルーマニア」は別個の国として扱われることに。

そして、ソ連は「モルドバ(モルダビア)」と「ルーマニア」が一つにならないように、あるモノを開発しました。それが「モルドバ語」です。

ソ連は「モルドバ語とルーマニア語は全く別もの! モルドバとルーマニアは違う!」といいました。「モルドバ語」はルーマニア語をロシア文字であるキリール文字化したもの。

しかし、単語や文法はルーマニア語とほぼ変わりません。文法や単語は基本的に同じなのに文字が違う別言語、それが「モルドバ語」です。本当は細かく言うとキリがないのですが、とにかくこの程度で止めておきましょう。

モルドバではルーマニア語に、沿ドニエストル共和国では「モルドバ語」


上:ロシア語、下:モルドバ語 沿ドニエストル共和国

1991年に「モルダビア・ソビエト社会主義共和国」はソ連からの独立を宣言、モルドバ共和国として新たな一歩を踏み出しました。モルドバは「モルドバ語」の文字をキリール文字からラテン文字に変更。後に公用語を「ルーマニア語」にしました。

一方「ルーマニア化」に反対するモルドバ領内にある未承認国家「沿ドニエストル共和国」では未だに「モルドバ語」が公用語です。

つまり、モルドバ本国では「モルドバ語」が見られないのに、モルドバが独立を認めていない未承認国家「沿ドニエストル共和国」では「モルドバ語」が見られる……という奇妙な現象が起きています。

ところで、先ほども話したとおりロシア・ウラジオストクの本屋には「ロシア語・モルドバ語会話集」という本がありました。私はその本屋で「ロシア語・ルーマニア語会話集」を探しましたが、ありませんでした。

なお「ロシア語・モルドバ語会話集」にはロシア語、モルドバ語(キリール文字)、ルーマニア語(ラテン文字)があります。

そうなら「ロシア語・モルドバ語・ルーマニア語会話集」にすればいいのに……会話集のタイトルをめぐってあれこれ考えるのは私だけでしょうか。

言語は民族の象徴

普段の生活において「言語」を真剣に考える機会はないと思います。しかし言語は民族の象徴、特に東ヨーロッパではそれが顕著に現れます。ぜひ、国を訪れたら「言語」に少しだけ注目してみましょう。意外な「おもしろさ」が見つかるかもしれません。

この記事を書いた人

新田浩之

新田浩之鉄道&中東欧旅行研究家

1987年生まれ。神戸市在住。専門は鉄道と中東欧です。国内では鉄道系イベントの取材、国外では中欧、東欧、ロシアの歴史スポットを訪ね歩いています。チェコアンバサダー2018

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