聖地エルサレムは、安息日の金曜にあえて行くべき理由がある
イスラエル

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イスラエルで多数を占める民族ユダヤ人。彼らの安息日である金曜の日没から土曜の日没にかけて、公共機関をはじめ町の機能がストップするため多くの観光客は金曜日のイスラエル訪問を避けます。

けれど、あえて金曜に行くのもおすすめです。その理由をお伝えします。

3つの宗教が共存する不思議な空間、エルサレム

イスラエルの首都エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のすべての宗教で「聖地」とされ、旧市街は3つの宗教が共存する不思議な空間です。そのため巡礼者はもちろん、たくさんの観光客が訪れます。

※イスラエルと宗教をめぐる歴史についてはこちらの記事をご覧ください
※エルサレムは、国際的には首都と認められていません

イスラエルで多数を占める民族はユダヤ人。彼らが信じるユダヤ教には「シャバット」と呼ばれる安息日があり、金曜の日没から土曜の日没までは労働をしてはいけないことになっています。
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▲金曜日の昼頃になると、商店街はシャッター通りに

郵便局などの事業所や飲食店は閉店、交通機関も止まってしまうため、多くの観光客は金曜日のイスラエル訪問を避けます。けれど私は今回、金曜日にエルサレムを訪れました。

狙ったわけではなく他日程との兼ね合いでそうなったのですが、金曜日に行けてよかった! あえて狙って金曜日に行くことをお勧めします。

※情報は2017年6月現在のものです
※3宗教のいずれも私は信仰していないので、異教徒からの視点です

イエス最後の足跡をたどる行進

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まずはキリスト教です。エルサレム旧市街には、イエスが死刑判決を受けてから、十字架を背負ってゴルゴダの丘へ歩いた道「ヴィア・ドロローサ」があります。

毎週金曜の午後3時(夏期は4時)からは、この道をフランシスコ派の修道士を筆頭に信者たちが行進します。
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▲ステーション4「マリアがイエスを見た場所」

ヴィア・ドロローサには、1~14までの「ステーション(チェックポイント地点)」があり、「十字架を背負って歩くイエスを母マリアが見た場所」「イエスがつまずいた場所」など、それぞれエピソードがあります。
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人々は賛美歌を歌いながら行進し、各ステーションで修道士たちが祈祷文を読み上げます。

この行進、キリスト教徒でなくても後ろについて行けるのが嬉しいところ。終着点に近づくにつれ、行進に参加する人の群れはふくらんでいきます。
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終着点の聖墳墓教会(ゴルゴダの丘の跡地)内部は、十字架に磔にされたイコンがあります。

参列者の中には今にも涙ぐみそうな人もいて、祈りに込められた熱量を感じました。たしかに信者でない私でも、ちょっと感激してしまいました。

嘆きの壁ナイト

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ユダヤ教徒にとって聖地となっている「嘆きの壁」。ここは、イスラム教の聖地「岩のドーム」が建つ丘を囲む壁の西側部分にあたります。

紀元前はこの丘にユダヤの神殿が建っていましたが、ローマ帝国時代にユダヤはエルサレムから追放され神殿は崩壊、残ったのがこの壁部分です。

以後、ユダヤ人は年に一度だけ許された来訪の際、エルサレム帰還を夢見てこの壁で祈りました。
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この「嘆きの壁」、ふだんの来場者数(?)は上の写真くらいなのですが、安息日「シャバット」の夜(金曜の夜)はこんな感じ!!
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ギューギュー詰めです! 安息日は労働をしない代わりに、祈るんですね。

壁の最前列の人が敬虔な祈りを捧げるなか、後ろのほうには円陣を組んで「オゥー! オゥオー!」とサッカー応援のようなコールをする人たちも。

週に一度、仲間に会えるお祭りという感じで「『嘆きの壁』では、みんな全然嘆いてない」ということがわかりました(笑)。

ちなみに私は行けなかったのですが、旧市街の外にあるユダヤ教の総本山「グレート・シナゴーグ」では、金曜夜の礼拝だけ、ユダヤ教徒でなくても肌を露出しなければ中に入ることができるそうですよ(『地球の歩き方』より)。

イスラム教の礼拝日

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金曜日は、イスラム教の礼拝日でもあります。お昼の礼拝に先がけてモスクに向かうムスリム(イスラム教徒)が大挙して旧市街の通路を埋め尽くします。

この「ムスリムの大群」も一つの見ものですが、将棋倒しになったり荷物をなくしたりする可能性も考えられるので、この時間帯に旧市街を歩くときは十分に気をつけましょう。

金曜日を含め数日間の滞在を

安息日や礼拝日と重なってスペシャル感のある金曜日ですが、お休みになるものがあるのも事実。金曜日を含めて2~3日エルサレムに滞在すると、ほぼすべての見所をチェックできますよ。

岩のドーム

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イスラム教の聖地「岩のドーム」は、預言者ムハンマドがここから昇天したとされています。このドームが建つ「神殿の丘」は、上述したように紀元前はユダヤの神殿があった場所です。
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金色に輝く岩のドーム内部には、イスラム教徒以外は入れませんが、ドームのある「神殿の丘」には異教徒でも入場することができます。

ただし、ここへの入場は金曜、土曜、祝日とラマダン時期の午後がお休み。エルサレム滞在が金曜~日曜だった私は、日曜に見学しました。

旧市街の至るところから見えるドームですが、近くで見るとその存在感は圧倒的! ぜひ入場することをお勧めします。

岩のドーム

プロジェクションマッピング

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旧市街の入口にある「ダビデの塔」はエルサレムの要塞で、紀元前から現代までのエルサレムの歴史を学べる博物館。

日没後は、塔にプロジェクションマッピングを投影して映像と音楽でエルサレムの歴史を伝える「音と光のショー」があります。
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▲この椅子がショーの座席です

事前予約必至の人気イベント。撮影禁止だったのでお見せできませんが、これは一見の価値ありです! この「音と光のショー」は、金曜と日曜、冬期の火曜がお休みです。

ダビデの塔

まとめると一目瞭然

各宗教やイベントごとの休日を表にまとめてみました。
エルサレム休み一覧
金曜の前後、木曜か日曜にもエルサレムに滞在すると、聖地らしい風景を満喫することができます。エルサレムからは死海へ日帰りもできるので、3日滞在しても全く飽きませんよ!

実はそんなに止まっていない

エルサレムの金曜日を体験した感想は「思ったより街は動いている」でした。閉まってしまう店や施設もあるけれど、観光客向けのお店は開けているところもあったし、タクシーも動いていました。

厳格なイスラム教国のラマダンのように、街が完璧に静まり返ってしまうわけではないので、ぜひ金曜日のエルサレムを味わってください!

それにしても……「金曜日のエルサレム」って何かのタイトルになりそう(笑)。

異教徒への気づかい、世界じゅうにあれば……

ヴィア・ドロローサの行進に参加している最中に、暑かったのでミネラルウォーターを口に含みました。

そのとき、修道士さんから「We change, because ラマダン」と言われました。どうやら、私が水を飲んだことを注意したようです。

私が旅行したのは、ちょうどイスラム教のラマダン(断食)の時期でした。厳格なイスラム教徒はラマダン中、水すら飲みません。修道士さんの英語が今イチわかりませんが(私の聞き取りが怪しいのかも)、ラマダン中のイスラム教徒を気づかって自粛を促したのでしょう。

キリスト教の行進ですから本来は関係ないのですが、エルサレムで他の宗教と共存するための思いやりかも……と心が温かくなりました。自分と考えが違う人たちを尊重する心づかいが世界じゅうに浸透していれば、争いはなくなるのになぁ。

そう感じた、聖地での出来事でした。

この記事を書いた人

合楽 仁美(らく)

合楽 仁美(らく)ライター・アナウンサー

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神戸在住のライター・アナウンサー。世界遺産「姫路城」のある姫路市の広報専門職員を経てフリーに。シルクロード文化が好き。旅を始めたのが29歳からと遅咲きのため訪問国数は少ないが、そのぶん「1歳でも若いうちに行きにくいところから」とウズベキスタンや中国・新疆ウイグル自治区など、マニアックな地域を攻めている。

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