愛知県名古屋市の東山動植物園。最近ではイケメンなゴリラ・シャバーニがいると話題になりました。その東山動植物園が80周年を迎え、記念イベントが6月4日まで開催されていました。
今回はその80周年記念イベントで盛り上がっている東山動植物園に行ってきました。
東山動植物園とは
80周年記念と言われていますが、東山動植物園の前身である1890年に開園された浪越教育動物園を含むと、東山動植物園には127年という歴史があります。動物の種類は国内の動物園でも有数で、ここでしか見られない動物もいたりします。
特にネコ科動物は11種類もおり、「けものフレンズ」で話題となっているサーバルキャットをはじめ、日本ではあまり見られないネコ科動物がいます。猫の日にはネコ科動物ツアーも実施したほど。
東山動植物園は広い
東山動植物園はとにかく広いのです。
「動植物園」とあるように動物園エリアと植物園エリアに分かれているのはもちろん、動物園だけでも本園、北園、こども動物園があります。また両生類や爬虫類を展示している自然動物館や、世界中の数百種類のメダカを体系的に展示してある世界メダカ館もあります。
動物ブースだけでもこんなに広いのですから、植物園を入れると見どころ満載です。今回は動物園のみ、それも著者好みの動物を紹介していきます。
鳥インフルエンザの爪痕
正門から入るとすぐに、枯れた池が見えます。ここは「胡蝶池」と呼ばれる池で、もともとは水鳥がいました。
この池は暑さにより干上がってしまったのではなく、2016年12月に鳥インフルエンザに感染した鳥類が確認され、塩素消毒した後水を抜くといった対処が取られたため、このように枯れているのです。
一時は鳥インフルエンザによる閉園を1ヶ月ほど行っていましたが、今原稿を書いている5月12日に、鳥インフルエンザの終息宣言が出されました。
東山動植物園に訪れた日は、正門から入るときに、消毒薬で湿ったマットを踏みしめました。鳥インフルエンザの終息宣言によって、足踏み消毒もなくなり、春先まで抜いておくと言われていた池の水も、もうそろそろ入れて水鳥が見られるかもしれません。
80周年記念イベント
今年80周年を迎えることが出来た東山動植物園では、いろんな記念イベントが行われていました。
動植物園にいる生物は自然界や野生からの親善大使、というコンセプトをもとに、動物園エリアではより間近で動物たちを見ることができるよう展示が工夫されています。
そのような体験から仰天や発見を感じてほしいというのが、80周年の記念イベントの要点となっています。
動物図鑑アプリ
面白そうだったイベントの1つが、このアプリです。園内の動物や植物を写真に撮り登録し、オリジナルの図鑑を作るというもの。
アフリカゾウやアミメキリンといった80種類の動物はすでに登録されてありますが、それ以外の動植物は新規登録できるので、あまり知られていないけれど好きな動植物なんかも登録できます。
写真を登録すると動植物の基本的な情報が反映されます。スタンプラリー的なものにはまりやすい人は楽しめるアプリだと思います。
動物いないけど、動物会館に行ってみよう
動物園には資料館のような場所があります。
ここは、展示されている生物たちが学術的に紹介されている場所。と言うとちょっと小難しく思われるかも知れませんが、なかなか面白いのです。
かつて東山動植物園で飼育されていたアフリカゾウの全身骨格標本も、80周年記念イベントの1つとして展示されています。陸上で最も大きいといわれる生物の骨格標本を目の前で見ることができるのです。ゾウの鼻には骨がない。ということが本当だったとわかります。
大迫力のジオラマと東山動植物園の歴史
臨場感がガラス越しからでも感じる、ライオンの狩りのジオラマ。迫力満点です。なんとこれは剥製で、他にも「赤ちゃんを運んでくる鳥」のモデルとなったシュバシコウの剥製もあります。
また、東山動植物園の歴史が写真パネルで紹介されています。そこで面白いと思ったのが、昭和20年代から40年代まで開催されていたゴリラショーです。まだまだゴリラが凶暴だと思われていた時代に、ゴリラと信頼を築き上げショーを披露したのです。当然、これは世界的にも珍しいことで話題となりました。
ちなみに、幼い男の子が動物会館に入ってきた時、おばあさんと思われる年配のご婦人が「そこ動物いないよ」と一声。たしかに、生きている動物はいませんが、東山動植物園の軌跡や動植物たちの詳細を知ることができる場所です。
動物がいなくてもぜひ立ち寄ってみてください。ライオンのジオラマは必見で、時間を忘れるほど見惚れるぐらいです。
動物たちを間近で見よう!
もっと動物たちを近くで見られるように、獣舎を工夫したことも記念イベントの目玉の1つですが、以前より「東山動物園再生プラン」という政策を進めており、これは従来の見る展示から、体験することを重視した行動展示になっています。
日本最大級のアジアゾウ舎「ゾージアム」
2013年に完成したゾージアム。アジアゾウのふるさとスリランカをコンセプトとして建てられ、野生の環境により近づいたゾウ舎となっています。
外からみても迫力あるのですが、屋内観覧所にはゾウを知るための工夫がたくさんあります。また、室内観覧所は2階から見下ろすように、ゾウを見ることができます。
アジアゾウの体の特徴を知ることができるように、精巧な模型があったりします。手触りも微妙な柔らかさがあり、本物らしさを感じます。
日本や東山動植物におけるアジアゾウの歴史などが紹介されています。モニターでは太平洋戦争を生き延び、戦後ゾウ列車として、有名となった「マカニーとエルド」を紹介していました。
このゾウ列車とは戦後、動物園がなくなった地域と名古屋をつないだ特別列車のことです。
池もあり、運が良ければゾウの水浴びも見られるそうです。穏やかなゾウの親子を眺めていると、心が穏やかになります。
ネコ人気。サーバルキャットも人気。けものフレンズで人気?
ユキヒョウの獣舎も展示が工夫されていました。上下できるようになっていて、ぴょんぴょんと上に登る様子を見られるようになっているのです。
しかしユキヒョウはもともと寒い標高の高い山にいるせいか、暑いところが苦手なようです。今日は暑いためかやる気がなさそう。
WWF(世界自然保護基金)の広告にも起用されご存じの方も多いと思いますが、寒いところを好むユキヒョウの生息地は、温暖化によって奪われています。東山動植物園ではこのように、ユキヒョウによる動物募金を行っていました。
ユキヒョウが並ぶ獣舎はヤマネコが集まっていて、サーバルキャットに異常な人気がありました。お客さんの会話で「けものフレンズの」と言っていたので、人気がある理由を知って納得しました。
サーバル見られず、スナドリネコはぐったり
しかし、サーバルキャットの獣舎にはかなりの人が群がっていたため、写真が撮れず……。
獣舎沿いを歩いていたら、スナドリネコが陽気のせいでぐったりと午睡をとっていました。個人的に好きなヤマネコさんで、前足ががっしりとしていることが特徴です。
スナドリとは、漁ること。漁をすることです。なので、このヤマネコさんは水を怖がりません。肉球のほかにもわずかながら水かきが、指にあるといわれています。水に強いということから、鳥羽水族館でも飼育されているちょっと個性的なヤマネコさん。
それを撮影しようと思ったのですが、心地よく寝ていて起きる気配がありませんでした。
猫に見えるマヌルネコ
村上春樹の短編作品に、雨の日の動物園に行くのが好きな男が出てくるのですが、その作品の動物園には猫が展示されていて、男はその檻の前でビールを飲むという件があります。確か、「ニューヨーク炭鉱の悲劇」という、猫も動物園も関係ないタイトルがついた短編だったような気がします。
しかし、展示されていたのは猫ではなく、マヌルネコではないかなと個人的には思っています。丸い猫に見えるマヌルネコは中央アジアに分布し、マヌルとはモンゴル語で「小さいヤマネコ」という意味。猫に見えますが、れっきとしたヤマネコです。凄みのある目つきから飼いならすことのできない感じがします。
マヌルネコは珍獣と言ってもよく、日本では東山動植物園を含め5か所の動物園で展示されています。ここのマヌルネコの名前はハニーさん。調べてみると、あまり社交的ではないそうで、このように檻に登ることは珍しいようです。
突然、登り始めたのでギャラリーの人間たちは、騒然としました。そして、ハニーさんは筋肉がつり始めたのか、プルプルと震え出したのです。降りることができなくなったらしく、表情も焦りはじめ、どうしようもできない様子でした。
結局、落ちるように降り、何事もないような、大事として捉えないようにしている様子がしました。そんな感情豊かな人間臭さが、野獣なのにかわいかったです。
トラさん、こっち向いて
スマトラトラの獣舎も一部、ガラス張りになり近くで見ることができますが、トラはガラス張りのところでなく、檻の方に……。ガラス張りのところには人間が群がっているので、トラも困惑していたのかもしれません。
東山動植物園一のイケメンで稼ぎ頭シャバーニ
東山動植物園で最も人間が群れている場所というのが、ゴリラ舎ではないでしょうか。2015年あたりからシャバーニのイケメンぶりが話題となり、東山動植物園公認グッズの売り上げのおよそ半分が、シャバーニ関係だと言います。
イケメンに群がる
イケメンに人々が群がっています。あまりの混雑ぶりに、飼育員さんが誘導していました。
やっとシャバーニを見ることができました。見上げると、悠々とロープをブランコのように使い、リラックスしているようでした。
女性はキャーっとはしゃいでいるのですが、男性はため息とまではいいませんが、関心するような様子を見せている人がいました。シャバーニに見惚れているのは男性のほうが多いのかもしれません。それにしても、シャバーニはかっこいいですね。
終わりに
動物展示だけではなく、80周年記念イベントとして「ひがしやま歴史探訪80ヶ所巡り」といった東山動植物園の貴重な写真と、スタンプラリーと合わせた企画を行っていました。写真は日本ではもう見られない珍獣「ボンゴ」です。かつて、東山動植物園にいました。
絶滅危惧種のメキシコウサギ。ここでしか見られません。東山動植物には日本でも珍しい動物を展示しています。
動物の種類数が国内有数というだけあって今回紹介したのもほんの一部です。1日中いても、動物園ブースしかいられませんでした。
植物園ブースでは今ならバラが見ごろです。東山動植物園はいま最も勢いのある、動物園だと思います。