阿里山と阿里山鐵道があることや、日本統治時代に甲子園に出た高校野球チームの映画などで有名な台湾の街、嘉義(ジャーイー)。台湾の人に嘉義はどんなところかと聞くと、生活の速度がゆっくりした所だよ、という答えがよく返って来ます。
本当にその通りで、一足、嘉義の地に降り立つと、台北とは異なるその土地の持つ雰囲気に驚かされます。同じ台湾であるはずなのに、なんだかのんびりとしていて、どこか懐かしく、人の心をリラックスさせてくれる街なのです。
これは私の知り合いの話ですが、嘉義はゆっくりと発展を遂げてきた街なのだそう。なので、たくさんの古い建物が今でも残っているんだよ、と。実際街中を歩いてみると、そこここでいかにも歴史のありそうな建物を目にすることができます。
そしてその建物は、今もなお、現役で活躍しているのです。今回はそんな嘉義の古い建物、「老屋(ラオウー)」を利用する形で営業しているカフェを、時代順に並べてみました!
玖咖啡(60年くらい前)
白を基調とした店内に、柔らかな木目のテーブルとカウンター、そして大きなガラス窓から差し込む太陽の光。びっくりするぐらい採光の良いカフェ「玖咖啡」は、2016年にオープンしたばかりのカフェで、可愛い女の子の店員さんたちが経営するお店です。
とても老屋を改装したとは思えないような建物は、おおよそ60年ほど前に建てられたものだそう。そんな古い建物とは思えないような現代的な内装は、その開放的な雰囲気から、多くの人たちで賑わいます。一旦席についたら、ついつい何時間でもゆっくり居座ってしまいそうになります。
ドライフラワーの飾られたテーブルの上は、なんとガラスの天井。冷房の下で陽の光を味わうという、なかなか不思議な感覚を味わうことができます。老屋を利用したカフェでこんなに採光が良いって、珍しいんですって。
こちらで私がいただいたのは、サイフォンで淹れていただいたコーヒーと、鉄観音茶。サイフォンの他に、アイスドリップやハンドドリップなど、いれ方を選んで入れていただくことができます。
ビアコーヒー、なんてのもありますが、お酒は入っていないそうです。いれ方の話ですね。
香りの良いコーヒーに紅茶、そして窓から差し込む日の光で、晴れやかな気分でゆったりさせていただきました。
老院子1951(1951年)
あたかもタイムスリップしたかのように、唐突に現れる小さな可愛い、古い建物。「老院子1951」はその名の通り、1951年に建てられた建物を利用して営業しているお店です。店員さんの笑顔がとっても素敵で、暖かな気分にさせてくれるお店でもあります。
またこのお店で人の心を温めてくれるものといえばもう1つ。このお店が老屋を利用している他、お店の中の随所に「古いものが利用」されているということ。例えば、お客さんが座るテーブルには「大義国中」と書かれています。国中って中学校のことで、つまりこのテーブル、中学校の机を再利用しているんです。
この他、丸椅子がレコードで覆われていたりだとか、電気の傘がお皿の再利用だったりとか、とにかくアップサイクルがなされています。
店員さんに伺ったところ、これらのものは老院子の持ち主であるオーナーが集められたものなのだとか。様々な工夫を散りばめて作られた空間は、まるでその方の宝箱の中にでも入り込んだような心地にさせてくれます。
座っていいかちょっとドキドキする椅子(笑)。
お店の取っ手も古い日付のスタンプ。かわいい!!
さてさて、こちらのお店のメニューのご紹介ですが、なんといっても値段的にかなりお得な套餐(セット)をお勧めいたします! 私が最初注文したのはピタと高山青茶のセットだったのですが、ガラスケースのケーキがあまりにも目を引くので(このお店の一押しだそうです)、ケーキも注文してしまいました。
りんごのチーズケーキ、めっちゃ美味しかったです。ケーキのほか、揚げ物やスコーンのセットもありますので、どれにしようか楽しみながら選んでみるといいと思います。
No. 201, Chengren Street, East District, Chiayi City, 台湾 600
営業時間 11:00~19:00(水曜定休)
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玉山旅社(1950年)
昔のままに近い老屋が見たいと思ったら、「玉山旅社」へ行くと良いでしょう。玉山旅社は、阿里山鉄道北門駅の真ん前にあります。旅社(=小規模な宿のこと)という名前に見られるように、宿泊施設とカフェを兼ねた施設です。
1階奥のカウンターで飲み物を注文することができますので、先に注文を済ませてから、建物を参観させていただきましょう。中国語が分かるなら、お店のお兄さんがお店の歴史を説明してくれますよ!
コーヒーはフェアトレードで仕入れているのだそう。いい年の女がダラダラ汗をかきながらアイスコーヒーをお願いしたところ、お2階の小部屋の冷房の前に通していただいてしまいました(笑)
こちらは小部屋の外。
そーっと歩きましょう。
いまでこそ1、2階はカフェとして利用されていますが、もともとは、阿里山鉄道の列車長及び北門駅の副駅長を務められた、陳聡明さんという方がこの建物をつくり、退職後の1966年から宿泊業を営んでおられたのが、この玉山旅社の始まりです。
氏の死後は人の手に渡りつつ営業が続くも、昔ながらの旅社の経営の難しさから一度は営業を停止しますが、2009年に文化資産の保護の目的で修屋がなされ、同年8月に営業を再開しました。
しかもそれは、行政ではなく市民の手によって行われたのです。古い家屋は行政によって取り壊されてしまうものもあると聞きますので、貴重な例なのではないかと思います。
文字通りの女中室。今は荷物の置き場になっているのだそうです。
私はカフェのみの利用だったので2階までしか上がっておりませんが、その2階も、夜になれば時として、バックパッカーたちの寝場所に変わるのだそう。宿泊は1泊300~500元(約1,100円~1,900円)程度とのこと。
ところで私、ここを訪れる前の日の夜、ホテルを予約してなくて某Mマークのお店で徹夜したんですよね……もっと早く知っていればなぁ。
No. 410號, Gonghe Road, East District, Chiayi City, 台湾 600
カフェは平日9:00~19:00、週末8:30~19:00の営業
公式FBはこちら
Daisy的雑貨店 Handmade&Cafe shop(70年くらい前)
お店の外のカウンターに腰掛けて、お客さんがのんびりくつろいでいる……そんな光景を見かけたら、おそらくそこが「Daisy的雑貨店」でしょう。お客さんがひっきりなしに訪れて、時には外のカウンターにまであふれてしまう、嘉義で人気のカフェなのです。
深みのある青色の木とガラスの扉をくぐると、視界に飛び込んでくるのは、これまた真っ青なカウンターの奥で、忙しく働く店員さんたち。青い色は人の心を鎮静させる効果があるはずなのに、なんだか暖かい印象を覚えるのが不思議です。
それもこれも、70年ほどもここに住む人や訪れるたちを見守ってきた老屋と、店員さんたちの心の温かさのなせるわざなんでしょうね。
こちらでいただいたのは、緑茶をベースにしたお茶と、塩カラメルのヨーグルトケーキ。ケーキはアイスケーキですので、冷たいうちにおあがりください! このお店を訪れた時は8月の暑いさなかでしたので、本当、ケーキの冷たさが身に沁みました。
さて、このお店についてもう1つ特記させていただきたいことといえば、店内に可愛いワンちゃんがいることです。ワンちゃんの名前は、好乖乖(いい子、おりこう、という意味)。
とってもいい子でいるように、とお店の人が名付けたそうです……が、たまにお客さんについて外に脱走を図るので、その時は速やかにお店の人に伝えてあげてください。
No. 73號, Weixin Road, East District, Chiayi City, 台湾 600
営業時間 13:00~22:00
金礦咖啡 CROWN FANCY
金礦咖啡 といえば、嘉義のみならず、台湾のあちこちで目にするカフェのチェーン店です。それと老屋となんの関係が……と思われる方もいることでしょう。
が、関係が、あるんです。なんとここ嘉義にある金礦咖啡中山門市のお店、老屋を改装して営業しているお店なんですよ!
先にカウンターでコーヒーとケーキを注文してから店内の奥へ。このケーキとコーヒーだけだったら、台湾各地で味わえます。
店内はいわゆるものすごくお洒落なカフェ……かと思いきや、いろいろ調べてみたら、この金礦咖啡中山門市、なんと日本統治時代建てられた建物を使用しているらしいです。
日本統治時代というと、1895年~1945年までの間のことを指しますから、そうとう古い建物ということになりますよね(すみません、何年前のものかまで調べきれなかったです……)。
このことを全く知らないとただのお洒落な喫茶店なのですが、それだけは済まさないのが、この店舗のすごいところ。お店の2階に行くと、改装前に使用されていた木材の一部がオブジェとして飾られています。
上の白い部分は多分、欄間かな?
個人的に、最も気楽に入れる老屋を改装したカフェかと思うのですが、いかんせん訪れる時間が遅すぎるとチェーン店らしく客の入り次第で2階の席へは行けなくなってしまうので、なるべく遅くなりすぎないようにお店を訪れることをお勧めします。私は深夜の12時頃に訪れて2階へ行けなかったことがあります。
No. 258-1, Zhongshan Road, East District, Chiayi City, 台湾 600
以前は24時間営業でしたが、現在は朝7:00~深夜2:00までの営業に変更になったようです。
公式HPはこちら