イタリア地震で被災した「絶景の村・カステルッチョ」の美しさと、論争。
イタリア

イタリアでも時々地震があることはご存知でしょうか? 地震国である日本では厳しい建築基準法で設計された家々が並んでいますが、イタリアの築何百年という石造りの古い建物は、地震が起こったら崩れてしまうばかり。日本人にとってのM4とかM5位の大きさは、年に数回起こる強めの地震程度の認識かもしれませんが、同じクラスがイタリアで起こったら被害は甚大なものになります。
イタリアにも地震が起こった際のマニュアルってあるんでしょうか? そんなことも考えながら、今回は2016年10月30日の地震被害にあったイタリア中部ウンブリア州の小さな村・カステルッチョを絶景とともに紹介します。
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小さなチベットの由来

首都ローマから北東に180キロ。車で3時間のウンブリア州にカステルッチョの村があります。村の名前は知らなくても、ノルチャという街の名前は聞いたことがあるかもしれません。去年の8月末にM6.2の強い地震が起こり、この街でも多くの建物が倒壊しました。カステルッチョはこのノルチャの街から直線距離にして10キロの場所にあります。
ただし、ふたつの地域の間には山があるため車で移動すると1時間以上かかり、まさに陸の孤島のような場所。村はシビッリーニ山脈国立公園内にあり、「小さなチベット」とも言われています。しかし、隔絶されている為、四季を通して、村を中心に広がる絶景は素晴らしいものです。特に山々を背景に広がる平原は、季節によって色を変えて、まるでおとぎ話の世界のよう。
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右奥中央、平原の中に突然現れる小さなカステルッチョ村。村への一本道を進みます。たどり着くまでの風景は絶景です……。
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村に着くと、多くの人が食べるランチ。この地方は黒トリュフでも有名です。
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歩いてみると、15分ぐらいで全部見れてしまう小さな村ですが、地震前、標高1,452メートルの村には、120人の住人がいたそうです。
ただし、これらの写真は去年5月のものです。そのわずか5ヶ月後、地震によって多くの建物が倒壊して村の姿は変貌してしまいます。地震直後のようすは、消防隊員による動画で見ることができます。

建物の7割は耐震措置が施されていない現実

小学校用の地震マニュアルを見つけました。9ページ目にはイラスト付きで地震が来たらどうすれば良いのか書かれています。

・建物内にいる場合、空いたドアのところにいれば崩壊から身を守れる可能性がある
・家具の近くにいると危険なので、テーブルの下に隠れましょう
・エレベーターは使わない。階段へ走らない。階段は建物内でも一番脆弱な部分です
・車で移動中の場合は、橋の上や脆い地盤のところで止まらない。砂浜は津波の恐れがあるので近づかない
・外にいる場合は、建物の近くは倒壊のおそれがあるため近寄らない。電線の近くには行かない

地震国に住む日本人にとっては、その多くが当たり前の知識ですね。でも、個人的にはドアのところにいると身を守れる可能性があるとは知りませんでした。石の文化なので、壁が崩れてしまう可能性があるからだと思われます。
ブルームバーグによると、イタリアは欧州のなかでも地震多発国だが、7割の建物に耐震措置が施されていないと書かれています。築500年クラスが珍しくないイタリアの建築物では、統一された景観を守るため厳しい規制があります。多くのイタリア人はこうした古い家やマンションを買って上手にリフォームして住んでいます。
そうした事情から、近年地震があるたび、「古い家は危険なので新しく建てるべき」「新しく建てるとイタリアはイタリアでなくなる」といった論争があります。いつ来るかわからない天災にどう対応するか?という点では、東日本大震災による津波被害の後、海沿いに家を建てるべきかどうか?の論争に似ている気がします。

復興への道

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2017年1月現在、カステルッチョの多くの家々が使用不可能な状態だそうです。石造りの建物を直すのは時間がかかります。しかし、寄付やイタリア農林省の協力により、この地方の有名な特産物のひとつであるレンズ豆生産を続けていく事が出来るとのこと。まだまだ、復興には時間がかかりますが、小さな一歩といえます。
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村の様子はウェブカムで見ることが出来ます。現在は雪のようですが、春にかけて花が沢山咲きます。
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村の中には行けなくても、その絶景は健在です。

車か、スポレートで1泊するのがおすすめ!

約3時間で行ける車がベストですが、公共の乗り物でも移動は可能です。
公共の交通機関を使う場合、以下の全行程で5時間かかるので、スポレートで一泊されることをおすすめします。
①ローマからスポレートまでイタリア国鉄で移動(1時間半)
②スポレートからノルチャまでバスイタリア社のバス(50分)
③ノルチャからはバスイタリア社のカステルッチョ行きに乗り換える(50分)

小さな村の大きな変貌

今回の写真はすべて2016年5月のものです。偶然ですが、地震前のわずか5ヶ月前に訪れました。イタリア中部とは思えない絶景にビックリしました。村ながら、ドライブやツーリングを兼ねて来た人々が沢山いました。観光客にレンズ豆などを売る小さな店が数件とレストランが数件だけの静かな小さな村でした。花が咲く頃になると、この風景を見るために、もっと車の数が増えるようです。山裾に広がる平原は、九州阿蘇の草千里を思い出しました。イタリアは何でも対応が遅い国ですが、村の人々のためにできるだけ早くの復興を望みます。

この記事を書いた人

ゆきとさな

ゆきとさなフィレンツェ県公認ガイド

旅行業界で20年以上働いています。旅行の度にコロコロシステムが変わるイタリアですが、できるだけ最新の情報を心掛けます。歴史と魅力が沢山の国イタリアに来て下さいね!

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