墓に行くと、しばらく佇んでしまう。
存在としての終着点だからだろうか。
葬られたその存在を前にして、生まれてからその役割を全うするまでの、栄枯盛衰に思いを馳せる。
今回は、タイ・バンコクにあるジャンボジェット機の墓場へと足を運んだ。
その現場は、なぜこんなところに? と問いたくなるような街なかの寂とした空き地だ。
そこへ葬られた機体の中には生々しい人々の生活があった。
飛行機の墓場へ入るには
飛行機の墓場となっている空き地を訪れるには、タクシー配車サービスのUBER(ウーバー)で場所を指定して、下記へと車を走らせるのが便利(その理由はこちら)。
多くの観光客がよく行くエリアからは外れているので、空港を起点とした行きか帰りに立ち寄ると効率よく時間を使える。
よく見ると、Googleマップにも飛行機の機体が確認できる。
柵の外からも飛行機は見える。しかし、中を散策するには自己の責任において中にいる方と交渉し、柵の鍵を開けてもらわなければならない(2016年2月現在)。
入場料のようなお金を請求され、最初は当然のごとくふっかけられる。
よくよく話をするとかなり安くなるが、このやり取りがトラブルを生みやすそう。日本人の感覚だとそんなに高くはないので、スムーズに入りたいときは言い値で払うことをオススメする。
無造作に転がるジェット機の翼や機体
もちろんここは観光用に作られた施設ではなく、ただ単に空き地に飛行機が野ざらしになっているだけ。気をつけないとケガをしそうな場所がいくつかある。
一体なぜここに飛行機が? 中はどうなっているんだろう?
慎重に機体に近づくと、胸の鼓動が高まってくる。
輪切りになった機体の下から中に入る。
飛行機って、こんなに天井低かったっけ? 座席を取り外すと意外と広く感じる。
初めてコックピットに入る。
別の機体は2階建てだった。
ポケモンジェット。
こちらのblogによると、かつてJALが使っていた機体もあるようだ。
飛行機のなかで生きる人々
廃墟の飛行機に興奮しながらも、さきほど柵の中へ入れてくれた人やその周りで寝転んでいる人々のことが頭の片隅で引っかかっていた。そこで、タイ語が喋れない私は簡単な英語やジェスチャーを使って、ここに住んでいるのか尋ねてみた。
質問に対して彼女が指差す先には、半ドーム状の宿舎のようなものがあった。よく見るとこれも飛行機の機体だ。
どんな生活環境なのかとても興味があったので、中を見せてくれてないかと尋ねるも、頑なに首を横に振られてしまった。
翼の上には、誰かが食事をした痕があった。
やっぱり気になるので、しばらく経ってもう一度交渉したが、面倒くさそうな顔をするだけだった。呆れたのか、住人は木陰に横たわってスマホゲームを始めた。
非常識が常識になる空間
いままで想像したことすらない世界が、すましたような顔をして鎮座していた。
ー飛行機がまちなかの空き地に棄てられている
ーそしてその飛行機に住んでいる
ただこの2つの現実があり、これが日常というだけだ。
ここに住む人は、飛行機に泊まることが欧米でどれだけ価値のあることとされているか知っているだろうか。
知っているからこそ、門番は私に入場料を求めるのだろうか。
遠く離れた欧米では、飛行機の内装をアレンジして宿泊できるある企業のキャンペーンが行われていたのを思い出した。
日本に帰国する飛行機の機内が、とても新鮮に映った。
まだまだ世の中は、知らないことばかりだ。
(このスポットは、いわゆる一般的なガイドブック等に載っている観光地ではないため、行かれる際は自己の責任において行動されたい。)
※マニラの墓の記事はこちらから!