卍の文字を見かけたら、あなたは何を思い浮かべますか? お寺の地図記号、家紋、弘前市市章から、2017年の流行語まで、返ってくる答えは様々かと思いますが、台湾ではこれは主に「素食」のマークとして知られています。
素食(スーシー)とは、台湾の菜食主義料理のこと。台湾は信教を始めとする様々な理由から、肉を食べないという食生活を選ぶ人がたくさんいる国です。小さな子供にお菓子を上げようとしたら「このお菓子、肉が入ってる?」なんて聞かれて、非常にびっくりしたこともあります。
今回は、そんな台湾の食生活に一定の地位を有している、素食についてご紹介致しましょう。
台湾の素食ってどんなもの?
人が素食を選ぶ理由は様々で、その分素食にも幾らか種類があります。ここでは、台湾の素食はどんなものがあるのか、その表示の方法についてご紹介しましょう。
1.全素(純素)
全素(チュェンスー)はすべての動物性の食品と、五葷と呼ばれる5種類の野菜を含まない食品ないし料理のこと。
五葷(ごくん)とは、地域や考え方によって異なる場合もあるそうですが、概ねネギ、ニンニク、らっきょう、にら、たまねぎの五つの野菜を指します。これは宗教的な思想に基づくもので、「気」が強くなりすぎて闘争心や煩悩が強まるため、心を平らかにするために適した食べ物ではない、などと言われているそうです。
2.蛋素
蛋素(ダンスー)の蛋とは卵のこと。卵以外の動物性食品と五葷を含まない食品ないし料理。
3.奶素
奶素(ナイスー)の奶は乳、つまり牛乳のこと。牛乳以外の動物性食品と五葷を含まない食品ないし料理。
4.蛋奶素
2と3を足したもので、卵と牛乳以外の以外の動物性食品と五葷を含まない食品ないし料理のこと。ケーキなんかはこの蛋奶素をよく見かけます。
5.五辛素
五辛とは、1で説明した五葷のこと。五葷は使用しているが、動物性食品(卵、牛乳も含む)食品ないし料理のことです。
レストランに入れば必ずと言っていいほど(素)という表示がある料理が見られますし、コンビニでお菓子をかっても、成分表にこれらの項目の記載があります。身近なところで、コンビニでコアラのマーチを買ったら裏にはっきりと「蛋素」と記載してありました。
しかし、菜食主義と言ったって、ただ黙々と野菜を食べているわけではありません。素食には素食の料理の工夫があるのです。
そんなわけで、台湾の素食料理のレストランにはどんなレストランがあるのか? いろいろ訪ねに行ってみました。
台湾らしい量り売りのお店「三來素食館」
目の前にたくさん並んだ料理の数々を好きな分だけお皿にとって、重さを測ってもらってお金を払う。「三來素食館」はそんな台湾らしいビュッフェ形式のお店です。
お店の中央にでんと置かれた大きなテーブルの上に、所狭しと料理が並べられています。お客さんは紙皿のプレートに食べたいおかずをよそい、お会計する時レジの人にお米を食べるか食べないかを伝えます。お米を食べる場合はもちろん、お米の料金も追加されます。スープは飲み放題で、カップをつけてもらいました(私は飲みませんでしたが)。
お皿の盛り具合は大体こんな感じ。これで120元くらいです。
台湾で日々生活していると、外食が多くついつい野菜を食べなくなってしまうので、たくさん野菜が食べられて、しかもお安いのは本当に助かります。
甘いものもありますよ。
お店に行ったのは閉店1時間前の7時くらいでしたが、まだ結構人がいて、おしゃべりしながらご飯を食べていました。
お店は9:00~20:00の営業です。
おしゃれなエリアのおしゃれな素食「KayaKaya cafe」
忠孝敦化駅近く、おしゃれなお店やデパートの立ち並ぶ通りを少し入ったところにあるのが「KayaKaya cafe」、こちらもベジタリアン料理のお店です。
店内は広く、木目調の家具が並べられていて、見る人に優しい印象を与えます。提供されている料理は洋風の料理で、ずっと台湾風の料理ばっかり食べていたから洋風の料理も食べたいなぁ、なんて時にもぴったりです。
私がいただいたのは、摩洛哥燉飯(モロッカンリゾット)、280元。
+90元でスープとサラダをセットにできたので、思い切って足してしまいました。生野菜、久しぶりに食べたなぁ。
リゾットを一口食べてみると、スパイシーな味!
一口食べてみてから、お米がちょっと歯ごたえがあることに気がつきました。お店の人に聞いてみたら、こちらの料理のお米は全て、玄米が使われているそうです。台湾はお米がよく取れるところだし、玄米は体にいい。じゃあ台湾の農産物であるお米を栄養価の高い状態で、かつ食べやすい形でお客さんに提供しようというのがお店のポリシーなんだそうです。
でも、消化の問題もあるから、よく噛んで食べてね、と、美人の店員さんが笑って言っていたのが印象的でした。
食事以外にもコーヒーやデザートもあるので、買い物の休憩がてらお店に入るのもいいですよ! 美人のお姉さんが素敵な笑顔で対応してくれます。
金、土曜日は10:00~22:00、その他の曜日は10:00~21:30の営業です。
素食だって食べ放題したい!「長春素食」
素食は野菜を使って作られた料理だけあって、比較的あっさりしています。結構たくさん食べても、あれ、そんなに食べたっけ?という感想をもつことが多いです。男性にしてみれば、ちょっと物足りないかも?なんて感じることもあるみたい。
そんな物足りなさを感じたくないなら、いっそ食べ放題なんてのはいかがでしょう? 台湾の食べ放題は「吃到飽(チーダオバオ)」と書きます。飽は、お腹がいっぱいになるという意味。食べ放題で、もう食べられない!って感じるくらい、素食をたべてみませんか?
長春素食は、台湾のツアー旅行に参加するとよく連れて行かれる、「金龍藝品」があるビルの2階にあります。金龍藝品の入り口から建物の壁に沿ってMRTのグリーンラインのある方にちょっと歩くとすぐ入り口があります。入り口の上に長春素食という看板がありますので、その下にある扉から2階へ上がりましょう。
伝統的な形の椅子とテーブルのとなりの階段を抜けて2階へ進みます。
階段を上がると小さな受付のようなところがあります。予約していなくて大丈夫かな!?と思わずドギマギしてしまいますが、人数を伝えると普通に席に案内してもらえます。お姉さんについて席まで行きましょう。
自分の席を確認したら、あとはもう、ひたすら食べるだけです。食べ物が並んでいるエリアへ言って、お皿にちょっとずつ(重要!)自分の食べたいものを載せていきます。欲張っていっぱい乗せすぎないよう注意してくださいね。
なるべく綺麗に並べてみたんですが、ごちゃっとしててすいません。(実はこれはふた皿目)
お肉みたいなのもありますが、食感が似せてあるだけで、ちゃんと素食です。すごい再現率!
料理のほか、スープや自分で材料を選んで作ってもらう滷味もあります。
調理風景を写真に撮っていたら、滷味を作ってくださっていたおばさまが「最近はみんな写真を撮るのが好きよね~、うちの娘も、私が料理を作ると食べる前にまず写真を撮るのよ! 」なんて話しかけてくださいました。
店内は本当にホテルのビュッフェみたいなのですが、こうして気さくに話しかけてもらったりすると、ああ、やっぱりここは台湾だなぁ、なんて実感します。
お店の営業時間は、11:45~14:00、14:30~16:30、17:45~21:00の3つに分かれていて、食べ放題の料金がそれぞれことなります。11:45~は600元、14:30~は396元、17:45分~は650元です。私は月曜の14:30に行きましたが、平日のその時間で結構テーブルが埋まっていました。土日に行きたい場合は予約した方がいいかも。
他に類を見ないくらいオシャレな滷味「VEGE CREEK 蔬河」
個人的に台湾で絶対食べるべき台湾料理といったら、滷味(ルーウェイ)という野菜やら豆腐やら肉やら具材を選んでつゆで煮込んでもらう料理だと思っているんですが、台湾にはそんな滷味の素食の店も存在します。それがこの「VEGE CREEK 蔬河」です。
滷味といったら通常、ちょっと庶民派なイメージがあるのですが、「VEGE CREEK」は違います。一見オシャレなインテリアの店かと見まごうほど綺麗な店内には、奥の方にカウンターがあって、そこで店員さんが滷味を調理をしています。
具材は壁の横に取り付けられている木製の棚の中に並べてあって、一つ一つ丁寧に袋詰めがされています。その野菜の小袋をとって緑のトートバックの中に入れていき、麺も選んでまとめて店員さんに渡します。
店員さんからは番号のついたクリップを渡され、しばらくすると番号を呼ばれて、自分で出来上がった滷味を取りに行くのです。ちなみに、辛味などの調味料は自分で好きなように追加します。
壁に取り付けられているオシャレな植物のインテリア……ではなく、これも滷味の食材。食べたい葉物を取って、袋の中に入れてください。取って大丈夫ですよ。
出来上がった滷味! 具材の配置もほんとおしゃれ……。具材を5つと麺、壁の野菜で全部で155元でした(具材は大体1パック20元くらい)。
麺はこの金属の板を一つとっていきます。こんなおしゃれな店にもある王子麺にふっと笑いがこぼれました。
食事ができるのは大きな木製のテーブルひとつで、空いている席に腰掛けて滷味を食べます。大きなテーブルをみんなで囲むので、なんとない温かな気分で食事をすることができました。みんなで食卓を囲むっていいですね。
野菜だけの滷味でもOK! な方は、是非とも訪れてみていただきたい、超オシャレ滷味店でした。自分的に今年の最おすすめレストランです。
営業は12:00~14:00と17:00~21:00の二つの時間に分かれます。私が訪れたのは土曜日の夜でたくさんお客さんがいましたが、回転も速いので大人数でなければすぐ席に座れると思います。
誠品敦南や微風松高、新光三越などにもお店が入っている模様です。
ケーキやパンにだって素食はあります「卡帛素食烘培‧義式厨房」
ケーキを作るのに欠かせない材料の一つ、卵。でも台湾にはそんな卵を食べないという主義の方もたくさんいらっしゃいます。そんな方々のために、卵を使わないパンやケーキを提供するお店だって存在します。「卡帛素食烘培‧義式厨房」は、素食主義の方も食べることができるケーキやパンを提供するお店です。
お店をはいるとすぐ、棚にいっぱいに並べられたパンや、カウンター前にいっぱいに並べられたお菓子が目に飛び込んできます。こんなにたくさんのお菓子が全て素食なんて、ちょっと信じられないですよね?
そんなわけでショーケースに並べられたケーキをいっぱい選んできました。チーズケーキやレモンケーキ、茶色はチョコレートでコーティングされたケーキです。
またこちらのお店でぜひお試しいただきたいのが、美味しい紅茶! しかもただの紅茶ではなく、体や心の悩みをほぐしてくれるハーブティーなのです。種類もとっても豊富で、選ぶのになかなか時間がかかってしまいます。店員さんに3回くらい「決まった?」と聞かれてしまいました。
パンやケーキのほか、普通にお食事を食べることもできます。温かみのあるインテリアと照明で、落ち着いた気分でご飯やデザートを食べられるお店です。ケーキは1つ50元程度、紅茶は1ポット180元程度です。
営業時間は、8:00~22:00までです。食事をするついでに、次の日の朝ごはんにパンを買って帰るのもいいかも?
ちなみにこちらの店はレストランですが、台北小巨蛋の近くにパン屋さんだけのお店もありますよ!