こんにちは、ライターの新田です。今回は「耳」を使って冷戦時代にタイムスリップしてみましょう。
「よくわからない!」という方が大半だと思いますが、「好奇心」さえ持ち合わせれば大丈夫! それでは、さっそく話を進めていきたいと思います。
そもそも、短波放送とは?
今回の主役は短波放送、つまり短波ラジオです。若い方ですと「短波ラジオ」と聞かれてもピンと来ないはず。まずは短波放送の解説から入りたいと思います。
パソコンやインターネットが発達する前、人々は世界のリアルな情報を知るために短波放送を聞いていました。短波放送は一般的に、世界各国が外国向けに流す放送のことを指します。
放送ではニュースはもちろん、音楽、文化の紹介、言葉を教える番組も。きっと、当時の人たちは短波放送を聞きながら、まだ見ぬ世界を想像していたことでしょう。
ところで、短波放送を聞くには「短波ラジオ」という機械が必要です。普通のラジオ(中波ラジオ、FMラジオ)では聞けません。
現在、日本の電気屋に行っても短波ラジオを見かける機会は減りました。しかし、東南アジアや中国の電気屋では、まだまだ短波ラジオが並んでいるそうですよ。
自分たちの放送を知らせる信号「インターバルシグナル」
短波放送は24時間、常に流しているわけではありません。放送時間は限られており、番組は1時間ごとです。そのため「これは自分たちの放送だよ」というのを教えるための信号「インターバルシグナル」を流していました。
まずは社会主義国の親玉、ソビエト連邦の短波放送「モスクワ放送」のインターバルシグナルを聞いてみましょう。「モスクワ放送」は日本語放送も行っていました。これは1970年代の放送です。
この哀愁漂うインターバルシグナルは「祖国の歌」から。インターバルシグナルの後に流れる曲はソビエト連邦国歌(今はロシア連邦国歌として使用)です。
次に、チェコスロバキアの「ラジオ プラハ」を紹介しましょう。「ラジオ プラハ」のインターバルシグナルは「左へ前身」という勇ましい曲。いかにも社会主義国らしいですね。もちろん、現在の「ラジオ プラハ」は別のインターバルシグナルを使っています。
短波放送をめぐる「世界戦争」?
短波放送は単に外国に情報を伝えるだけでなく、プロパガンダにも利用されました。それでは、ソビエト連邦がアメリカ向けに流した英語番組「平和と進歩放送」を聞いてみましょう。なんだか「平和」とは似つかわしくない好戦的なメロディーですね。
中には「怪しい」プロパガンダ放送もありました。これは1970年代に北朝鮮が流した英語放送「統一革命党の声」です。放送を聞いてみますと「ソウルから流しています」と言っています。
しかし、これは真っ赤なウソ! 韓国や米軍をかく乱するために、わざと「ソウルから流してる」ことにしたのです。
スパイが聞いていた乱数放送
「冷戦」と聞くと「スパイ」を思い浮かべる方も多いでしょう。短波放送の世界ではひたすら番号が読み上げる「乱数放送」がありました。
「乱数放送」の役割は国のある組織がスパイに指示を伝えること。スパイは読み上げられた数字を乱数表を照らし合わせながら、文字起こし。そして、メッセージに書かれた指示を忠実にこなしたのです。
これは東ドイツが流していた「乱数放送」です。きっと西ドイツにいたスパイに流していたのでしょう。なんだか、ゾクゾクしますね。
ちなみに、北朝鮮は今でも「乱数放送」を行っています。いったい、どこに向けて北朝鮮は数字を読み上げているのでしょうか? それは、わかりません。