韓国国内旅行先、人気ナンバーワンといえば済州島。韓国のハワイなどとも呼ばれ、中文リゾートを中心にリゾートホテルが充実。きれいな海、新鮮な魚、素敵なホテル、あふれる観光資源……。
国内外からの関心を集める済州島は観光特区に指定され、ソウルからも毎時間飛行機が飛び、ここがどれだけ人気なのかと思わずにはいられない一大観光地です。
が、ここにきて異変が起きています。なんと、この済州島が、国内旅行先として長く君臨していた1位の座から転落しそうなのです。一躍躍り出てきたのは、全羅南道・麗水(ヨス)。
何が起きているのかを、麗水と全羅南道の文化観光解説士であるkarinさんにお話を伺ってきました。
人気急上昇の背景とは?
人気リゾート地として名をはせている済州島。ソウルからの程よい距離感。近すぎないのに飛行機で簡単に行ける。南側のきれいな海。そして海の幸。済州島の魅力はそこがベースになっていたのでしょう。
麗水名物:カンジャンケジャン
一方、麗水を含む全羅南道は昔から、食が豊かでおいしいと評判でした。特に、麗水のある南海側は日本人にもおなじみのカンジャンケジャン(カニのしょうゆ漬け)やテンジャンケジャン(カニのみそ漬け)、ヤンニョムケジャン(カニのオリジナル辛みそ漬け)などが有名。
ソウルでもなかなか食べられないおいしいものの宝庫というイメージを持っていました。ただ、交通の便の悪さがネックでした。
しかし、2012年の麗水エクスポに合わせて高速鉄道KTXが開通し、ソウル・龍山(ヨンサン)から麗水まで3時間ほどで行けるようになりました。整備された駅や駅前は清潔で、気持ちよく観光できる街になりました。
そのおかげもあって、2015年と2016年は2年続けて、1,600万人以上の観光客が来る一大観光地となったのです。
見どころ満載の旧市街中心部
karinさんによると、やはり人気なのは旧市街の中心部。KTXの終点駅である「麗水エクスポ駅」から徒歩圏です。見どころが満載で、土地に不慣れでも歩いて観光できます。
イスンシン広場には亀甲船の模型が飾られ船乗り体験もできます。公園から山側に少し上ると、ジンナムカンという当時の麗水を管轄していた役所があります。
この建物は資料館を併設しているので、旅の初めに予習として行って見てもいいかもしれません。
お土産もありました。亀甲船カップケーキです。地方旅行のお土産に悩む韓国ですが、これなら手軽に渡せそうです。
これが売られていたあたりは、イスンシン広場といって、子供たちもよく来る遊び場になっています。そして、そのわきからはデートスポットに差異的なベイビューのカフェが並ぶ街になっています。
その並びに、おしゃれなカフェと並んで、面白いお店を見つけました。
煮干しの箱売りとか……
イカリとかです。ここは、海とは言っても、港に良い地形なのです。なので、観光地化したとはいえ、まだまだ漁業の盛んな街なのでしょうね。
壁画村も見つけました。海沿いの急斜面に沿って坂道や階段があり、人々が暮らしていました。
ここでの生活は階段とともにありですね。
バスを使えば少し足を延ばせます
在来市場も健在です。ソウルのように人口がものすごく多いわけではないので、人でごった返しているということはありません。並んでいるのは新鮮な魚や野菜たち。魚市場は魚市場で別に2か所ほどあるようですよ。
少し北東に上ったところに黒砂の海水浴場があります。この日もそれなりににぎわっていました。が、芋の子を洗うようではなかったので、快かったです。天気のせいで海の色がいまいちでしたが、水はとてもきれいでした。泳がなくても、水に触れに行くのもいいかも。
この、海水浴場に向かう道で不思議なトンネルを見つけました。ここだけ、非常に狭いトンネルなのです。なので通行する車やバスは信号の指示に従い、順番に通ります。
このトンネル。日本帝国時代(植民地時代)に朝鮮人の鉱夫たちが手彫りで堀ったトンネルなのだとか……。思わぬところで歴史の遺物に触れました。
伝説の亀甲船の製造場所もバスで1時間かかりません(これについては別記事をご覧ください)。
鉄道好き、古いもの好きの人にはこんなのもいかがでしょうか。KTXが開通したことで廃駅になった旧ヨチョン駅です。
特に何かに使われるわけでも、取り壊されるわけでもなく、新市街の中心部あたりにひっそりと残されています。駅前の非常にきれいに区画整理された町と対照的に、韓国の昔の田舎の町の様子が目に浮かびます。
着物着て風呂敷包み持ったおばちゃんが降り立ってきても違和感がないかもと思えるような駅でした。虹色のペイントが施された階段や壁画も見どころですよ。
麗水の食べ物といえば、カンジャンケジャンとカッキムチ
海に囲まれた麗水は海鮮の宝庫。ここに来たら何よりも食べたいのがカンジャンケジャン。
カンジャンケジャンとちょっとピリ辛のヤンニョムケジャン。心行くまでカニづくしできる定食は1,000円程度と驚きの価格。中央に置かれたピリ辛のスープがアクセントになります。
同じく麗水名物の、カッキムチ。からし菜のキムチです。からし菜の持つ風味がキムチの辛さとうまく調和しています。海鮮とよく合うんです。
もちろん、お刺身もあります。こちらは刺身料理屋さんでいただいたもの。韓国のお刺身は何といっても白身魚がおいしいです。
日本では高級なのでなかなか手が届かないヒラメが、こちらではわりと大衆魚という位置づけになっています。お刺身のコースをとると、こんなお皿2枚分くらいの刺身をはじめ、これでもかというほど次から次へと料理が運ばれてきます。
揚げぐあいが絶妙の天ぷらはいい箸休めになります。
最後は、魚のあらでだしをとった、メウンタンを。
こんなコースではなくて、刺身三昧したい人は、旧市街中心部にある魚市場へ行くことをお勧めします。大皿一枚分のヒラメ刺身が2,000円くらいから食べられますよ(その日の水揚げ状況やお魚の大きさなどによりますが)。
そして、呑兵衛さんにもそうじゃない人にも試してもらいたいのが、地マッコリです。そう、この地域でのみ飲める地元のマッコリ。
1つ目は麗水マッコリ。
もう1つは、麗水の新市街であるヨチョンエリアの地マッコリです。
マッコリはどんどん発酵してしまうので、新しければ新しいほどおいしいんです。なので、地元で作られたものを新鮮なうちに飲む。これが一番おいしい飲み方なんです。刺身と合わせてもよし、カッキムチと合わせてもよし。もちろん、カニに合わせたら最高ですよね。
食よし、酒よし、空気よし。田舎すぎず、都会すぎず、リゾートとしても楽しめる場所は、今、韓国人たちの注目を集めています。
ちなみに、Karinさん。日本のお客さんにもたくさん来てほしいということで、麗水市と全羅南道の文化解説士をしていらっしゃるようです。もっともっとこの町の魅力を知ってもらいたい、とあちこちに働きかけているそうです。
例えば、麗水の空港に日本直行便を飛ばしてほしいと要望したりとか……。これからますます魅力を増しそうな麗水。ブレイク半歩前をリポートしました。