淡路・若狭と並び、古くから御食国(みけつくに)のひとつであった「志摩」がある現在の三重県。紀伊半島の東に位置し、豊かな海と深い山々に恵まれた三重県は、伊勢志摩地域、北勢地域、中南勢地域、東紀州地域、伊賀地域に大きく分けられます。今回は伊賀地域の隠れた食を探すべく、ブランド牛やお米、調味料、お料理を引き立てる焼き物まで、食にまつわる旅を満喫してきました!
「はさめず」で知られる醤油蔵を見学
伊賀上野駅から車で西へ15分ほど。まずは、国の登録有形文化財に指定されている、歴史ある醤油蔵へ。福岡醤油店は、地元の料理人からも信頼が厚い醤油蔵で、商品名の「はさめず」が広く知られています。

外から見ると、蔵や隣接する建物の瓦が黒いのがわかります。これは醤油蔵の酵母の影響だそう。創業130年の老舗の風貌です。

蔵の中には「キリン圧搾機」という古い圧搾機が展示…、ではなく現役だそうです!! 福岡醬油店の醤油は今もこのキリン圧搾機の「てこの原理」でじっくり圧力をかけて手作業で造られているとのこと。もちろん蔵と同様、このキリン圧搾機も登録有形文化財に指定されています。

店内ではそんな貴重な醤油を味見することができます。使われているのは100%、三重県産丸大豆だそうです。ちなみに「はさめず」という商品名は、「箸でははさめない料理」という意味なのだとか。箸でははさめないけれど、おかずになるくらい美味しい醤油というわけですね。
複数の「はさめず」を味見させていただきましたが、それぞれに風味が異なり個性的。特に「いにしへ」という再仕込み醤油が、びっくりするくらい美味! 醤油を原料にして再度醤油を仕込むため、原料も熟成期間も2倍かかる贅沢な醤油だそうです。お味は濃厚で味わいが深く、お刺身(特に脂が乗ったブリやマグロのトロ)にピッタリ。
大量生産できないため、地元中心に消費されている模様。あと、人からいただいて、その後ネットでリピーター注文というのも多いみたいですね。私もすっかり虜になってしまって、特にお刺身はもう「いにしへ」なしでは食べられないかも…。

福岡醤油店では、蔵見学と2,000円相当のお土産が付いたプランが「じゃらん」から1,500円で申し込むことができます。価格設定が間違えているのでは…と心配になるほどお得なプランなので、是非というか絶対にこのプランの利用をおすすめします。
三重県伊賀市島ヶ原1330
伊賀牛と地域の食を赤目の「対泉閣」で堪能
続いては、赤目渓谷に佇む「対泉閣」へ。お宿の横からすぐに渓谷の遊歩道にアクセスできるので、赤目四十八滝目当ての観光客の宿泊にも便利です。

歴史あるお宿ですが、館内はモダンで寛げる雰囲気。

ロビーラウンジにはお茶やコーヒー、おつまみが用意されていて、自由にいただけます。それとは別にチェックイン時に手渡されるチケットで、アルコールドリンクもオーダーできます(1杯)。嬉しいことに、ノンアルコールのスパークリングも用意されていました。

夕食は、料理長渾身のガストロノミーコースとのこと。地元のみで消費されるこの地ならではの素材を中心とした、海と山に恵まれた三重県らしいオープニングです。お造りの新鮮さはもちろんのこと、春を感じさせる里山の味覚が季節感たっぷりで、目も舌も肥えたオトナ好みの構成。

伊賀の美食といえば、きめが細かく旨みの強い「伊賀牛」は外せません。伊賀牛とは、この地で肥育された黒毛和種の未経産牛のこと。牛は暑さに弱いので、県の中でも涼しい伊賀の気候は過ごしやすいのだとか。希少価値が高く、その8割は地元で消費されるそう。地元以外では出会う機会が希で、「幻の牛肉」と呼ばれています。比較的伊賀と近い大阪在住の私でも口にするのは初めてでした! その地域でしか味わえない食材を楽しめるのは、まさに旅の醍醐味です。

その他にも、地元野菜で作った花束サラダや、伊賀牛×名張産葱×青山玉子×伊賀茶塩で構成された「これでもかっ!」というほど地元食材を詰め込んだ一皿も。道中の道路標識などでよく目にしたこの辺りの地名が、ひとつのお皿に盛り付けられていました。

翌朝は、赤目地区限定特別栽培米の「伊賀米コシヒカリ」がごちそう。伊賀地域は県内の米どころ。流通量が少ないためあまり県外には出回りませんが、甘み、粘り、香りの良い美味しいお米です。
脇を固めるおかずも郷土料理を盛り込んだ内容です。ブッフェではなくお席に用意してもらえるのも何気に嬉しい。それでいて、ごはんやお味噌汁、サラダなどはおかわりできるので、存分に地元の食を堪能できます。
三重県名張市赤目町長坂682
お料理を引き立てる伊賀焼
伊賀といえば、「伊賀焼」も忘れてはいけません。主役を引き立て“前に出すぎない”伊賀焼は、昔は茶人から大変愛されていました。今でも、どんなお料理でも美味しく見せてくれると、人気が高い焼き物です。何を乗せてもお料理を引き立ててくれるうつわを探すなら、伊賀焼伝統産業会館に足を運んでみるといいでしょう。

手ひねりや電動ろくろなどの作陶体験もできますよ。自分だけのうつわをお土産として作るのもおすすめです。作品は、焼き上げて後日送られてくるので、旅が終わった後も旅の名残を楽しめますね。
三重県伊賀市丸柱169-2