石川・金沢の主計町茶屋街(かずえまちちゃやがい)。浅野川に沿って並ぶ古い町家や石畳が特徴で、伝統的な茶屋建築が風情ある景観を保つ観光名所です。
そんな主計町茶屋街に近いエリアに、ひっそりと佇むブックカフェ「あうん堂」があります。
静かで落ち着く、ほっと心が休まるような雰囲気の場所に今回はお邪魔してみました!
古本とカフェが共存する温かな空間
茶屋街のメイン観光地から少し離れ、住宅街を歩くこと数分。
「美味しい本とコーヒーあります」という小さな看板が。こちらがブックカフェ「あうん堂」の目印です。
築年数を重ねた町家を改装したあうん堂。お店ができる前、この建物はお花屋さんを営むおばあさんが住んでいたそうです。
オーナーご夫妻は隣にお住まいだったそうで、声がかかり建物を譲り受けたのだそう。聞くところによると、金沢では物件を手放す際にまず顔なじみの方に声をかけるケースが多いのだとか…! 地元コミュニティの温かさも感じられるエピソードです。
こちらの写真の通り、本とコーヒーが共存するブックカフェのスタイル。
ブックカフェは今でこそ見かけることが増えましたが、あうん堂はなんと20年以上も前から続いている場所。当時は非常に先進的だったのでは想像しました。
古本を選ぶのがご主人、カフェをメインで担当するのは奥様。
壁でゆるやかに分けられた本のエリアとカフェスペースは、それぞれ独立しながらも程よい距離感で繋がっており、どちらにいても居心地のよさを感じられる絶妙な設えでした。
ご主人選書の本棚は、「住まう」「働く」など、ジャンルごとにグルーピングされており、触れたいテーマに合わせて重点的に見る場所を決められるのが見やすかったです。
小さなコメントがついているものもあって、思わず頬が緩みました。
カフェメニューにほっこりするひととき
一通り本を眺めて楽しみコーヒーのお供にする本を手にしたところで、お次はドリンクとフードを。
メニューが絵本みたいになっていて可愛い…! ブックカフェならではの遊び心にキュンとしました。
今回、チョイスしたのは、地域にゆかりのあるブレンドコーヒーとチョコレートケーキ。
東出ブレンドは、近江市場内で焙煎しているというコーヒー。
最初の一口は軽やかでありながら、あとからしっかりと深みのあるコクが感じられる一杯。コーヒーの豊かな香りが口の中に広がり、五感を心地よく刺激してくれます。
お店特製のクッキーには店名が刻まれていて、生地はやや硬めのタイプ。カリッという心地よい音と共に、小麦の香ばしい香りと砂糖のほんのりとした甘みが感じられ、コーヒーとの相性も抜群でした。
さらに、しっとりとした食感のチョコレートケーキも。ミルクチョコレートの甘さがちょうどよく、濃厚ながら優しい甘さがコーヒーのほろ苦さを引き立ててくれます。
温かみのある空間とゆったりと流れる時間
カフェスペースの温かな雰囲気も、あうん堂の魅力のひとつです。
地元の常連さんや観光客がふらりと訪れ、ご近所の方も顔なじみのオーナーご夫妻と和やかに談笑していることも多いのだとか。この日も観光で訪れた方と地元の方が同じ空間で自然に溶け込み、のんびりとした時間を過ごしていました。オーナー夫妻の温かいお人柄も、まるで誰かの家にお邪魔しているかのようなアットホームな雰囲気を引き立てているように感じました。
古き良き空間で本とカフェを楽しむ贅沢
あうん堂は、長年の時を経た町家の温もりと、本とカフェが共存する魅力的な場所。
地元とのつながりを大切にしたオーナー夫妻が営むこのブックカフェは、近隣の方にとっても観光客にとっても憩いの場として愛されています。本の紙の香りとコーヒーの香りが混ざり合う店内では、心地よく音楽が流れ、静かに流れる時を楽しめる贅沢な空間が広がっていました。
金沢で長く愛される、アットホームな温かい空間の「あうん堂」。
歴史ある建物の中で、本とコーヒーに囲まれ、ゆったりとしたひとときを過ごすのはいかがでしょうか。
●あうん堂
石川県金沢市東山3-11-8