平安時代の京都―神仏であれ妖であれ、当時の人々は人力を超えた存在を当たり前のように受け入れていました。現代でも漫画・アニメで人気の高い、陰陽師・安倍晴明が活躍し、帝の庭園で弘法大師が雨乞いの儀式を執り行い・・・とにかく現代社会では考えられないことが京都の街を舞台に繰り広げられていたのです。
そんな古の面影を現代の京都に求めて、陰陽師の聖地「晴明神社」と弘法大師ゆかりの龍神スポット「神泉苑」を巡礼してきました!
摩訶不思議であふれる平安京に活躍した陰陽師・安倍晴明
「今宵は鬼が出るから、家の中に籠もっていよう」
そんな会話がその昔、人々の間で繰り広げられたといいます。平安時代は現代と異なり電気がないので、日が暮れたら本当の闇が広がっていました。さらに科学により解明されていないことも多く、怪奇現象は「物の怪」「妖怪」の仕業だと信じられていたのも頷けます。
そんな世の中にあって、人々が恐れる怪奇現象や物の怪と向き合う力を持つ人たちがいました。陰陽師の安倍晴明はその代表格として有名ですね。
陰陽師は本来、国家公務員的な役職として陰陽道をベースにした天文学のスキルをベースに、暦の制定や宮中の典礼儀式を司っていた集団です。しかし、安倍晴明は強い霊力を生まれながらに持っていたとされ、その能力を用いて人々の悩みを解決したと言われています。
陰陽師の聖地「晴明神社」
そんな安倍晴明の足跡をたどるべく、彼を祀った「晴明神社」を探訪することに。
京都御所からほど近い西陣織りで有名な西陣界隈に、晴明神社は鎮座しています。安倍晴明の功績をたたえた一条天皇の命令により、晴明の住居跡に神社が建立されたのだとか。
公式HPの御由緒によると、創建当時はかなり広大な敷地だったそうです。しかしながら、長い歴史の中で一度荒廃してしまったところ、後年氏子の方々の手で復興し現在に至るのだとか。京都の方々の安倍晴明に対する敬意が、脈々と受け継がれているのが感じられますね。
近年、小説『陰陽師』を皮切りとして、漫画・アニメ・映画など各メディアを通して安倍晴明の知名度が高まり、晴明様のお力で開運を願う参拝客も増えていき、現在では京都の寺社仏閣の中でも、人気のパワースポットになっています。
事実、筆者が訪れた平日の午前10時頃でも、たくさんの人で賑わっていました。
そんな晴明神社のご利益は「魔除け」。なんとも陰陽師らしい表現ですが、要は「厄除け」。ご参拝の際には、厄除け祈願をお願いするのもオススメです。
筆者は陰陽道を感じさせる、五芒星をかたどった「五行みくじ」を引いてみたところ、ありがたいことに大吉をいただきました! 晴明様、ありがとうございます!!
そしてここからは、晴明神社の見逃し厳禁開運スポットをご紹介。
ニの鳥居脇の「晴明井」
晴明の念力で湧き出た水と言い伝えられている井戸です。現在でも清らかな湧き水が流れ続けています。さらに吉方位を占う陰陽道らしく、水の湧き出し口がその年の恵方を向いているため、開運パワーあふれるお水をいただけます。
御神木
拝殿手前に決して巨樹とは言えないものの、エネルギーを放つ木が目に入ります。樹齢が推定300年のクスノキです。クスノキは元来虫よけの樟脳の原料ですが、虫だけではなく同時に災厄を払う力があるのかもしれませんね。
旧・一條戻橋と式神石像
晴明神社特有のスポットが、一の鳥居入ってすぐにあるこちら。小さな橋と晴明が使役していた式神(精霊)が参拝客を出迎えてくれます。
なんでも晴明の奥方が式神を怖がったことから、式神を自宅ではなく橋の下に封じ込めてしまったというエピソードを表現した石像とのこと。人知を超えたスキルの持ち主の晴明も、奥さんへの配慮を忘れなかったというところに、彼の人柄を感じます。
そして、安倍晴明の小説や漫画に触れたことがあれば、誰もが聴いたことのある一條戻橋。この橋は昔から、いわゆる「あの世とこの世の境目」として逸話が残っています。
現在でも整備されて晴明神社の近くに残ってはいるものの、訪れた人の感想では「独特な雰囲気」と不思議なオーラが漂っているとかいないとか…気になる方は晴明神社と併せて訪れて実際に確かめてみてください!
●晴明神社
京都府京都市上京区晴明町806(堀川通一条上ル)
帝の秘苑は龍神が宿るパワースポットだった!?
時は824年。帝が住まう宮中の庭園(禁苑)で、雨乞いの儀式が繰り広げられていました。
儀式を行うのは、弘法大師として名高い空海。
当時はひどい干ばつにより国民の生活は貧窮を極めていました。万策尽きた帝が出した勅命が、名僧・空海による雨乞い。国家の最終手段が加持祈祷というのも、現代社会では考えられない話ですが、当時は皆真剣そのもの。
空海は庭園の池脇で、雨をもたらす善女龍王をインドから勧請し、そのおかげで三日三晩雨が降り続いたという逸話が、今昔物語に残されています。
この禁苑こそまさに、二条城の南に位置する「神泉苑」です。善女龍王が宿る池を中心に、真言宗のお寺と龍神ともつながりの深い弁財天などの神社が鎮座しています。そう、神泉苑は、京都の中でも神仏習合型の龍神スポットなのです!
龍神様を祀る「善女龍王社」と歳神様の「恵方社」
昔は広大な敷地を誇っていた神泉苑も、現在では区画整理などによりこぢんまりとした印象を受けます。御池通沿いの大鳥居から入り、真っ先に目に入るのは「法成就池」となんとも縁起の良い池に向かって建てられた「善女龍王社」です。
「善女龍王社」は先述のとおり、空海がインドから呼び寄せた龍神様が祀られています。
その手前にある小さなお社は、日本でここだけ! 歳神様を祀る「恵方社」です。歳神様がいらっしゃる方角=吉方位(恵方)は毎年変わるため、毎年立春の日に社の向きを恵方に変える儀式が執り行われます。
善女龍王社自体目を引くこともあって、一番先にこちらをお参りしたくなるのですが、それは早計です。あなたの開運を叶えるために、神泉苑でのお参りの順番をお伝えします!
①本堂でお参り
鳥居をくぐり左手の本堂でまずお参りをしましょう。現在の神泉苑は真言宗のお寺ですので、こちらの本堂には仏教の神様たちが祀られています。
・聖観世音菩薩(ご利益:病気平癒)
・不動明王(ご利益:所願成就)
・弘法大師(ご利益:学業成就)
②願いが叶う橋「法成橋」を渡る
本堂でのお参りの後は、真後ろを向いて大きな赤い太鼓橋を進みます。
これこそ神泉苑の目玉と言っても良いほど有名な「法成橋」です。「法成橋」の向こう側には「善女龍王社」が鎮座。つまり本堂で祀られる神様と、池の主である龍神様とをつなぐ役割を担っているのです。
「法成橋」は、願い事を一つ念じながら渡ると叶えられると言われているので、橋を渡る前にお願い事を一つに絞っておきましょう。強欲は厳禁です!
③善女龍王社で龍神様にお願い
最後に龍神さまにお参りです! 龍神様は池の中にいらっしゃるので、お堂を超えて池の龍神様に向かって願いを届けるように、心のなかで呟いていただくのがオススメです。
見逃し厳禁「増運弁財天社」
願掛けのお参りを終えたらすぐに境内をあとにするのではなく、庭園を一周し末社のお参りもお忘れなく。特に名前から開運度の高そうな「増運弁財天社」が筆者的にオススメです。
2025年は巳年にあたるので、白蛇と関係の深い弁財天をお参りする絶好のタイミングですので、神泉苑では龍神様と弁天様にご挨拶とお願い事をしてみましょう!
●神泉苑
京都府京都市中京区御池通神泉苑町東入る門前町167
徒歩での聖地巡礼なら京都御苑もオススメ!
今回ご紹介した2カ所のパワースポットは、それぞれ平安時代に活躍した空海と安倍晴明ゆかりの寺社です。筆者のオススメは、交通機関を使わずに、お散歩しながら巡っていただくこと。晴明神社と神泉苑は南北を貫く堀川通を歩いて約30分なので、ちょっとしたウォーキングですね。
というのも、当時の京都は現在の京都御所を中心に街が形成されており、何かと帝や貴族たちから頼られた安倍晴明も御所の近くに居を構えていました。先述の通り住居後がそのまま晴明神社になっていますし、神泉苑も古の時代には宮中のお庭でした。
時を経て様変わりこそすれども、土地自体は平安時代から変わっていません。つまり、現代を生きる私達も、当時の人と同様の距離感を体験できるのです。そのことが、私達の想像力を掻き立て、古の雰囲気を味わうきっかけになるのでは、と筆者は思うのです。
そして、さらにもう一つ提案させてください! あえて烏丸通に出て、京都御所を擁する広大な京都御苑を通過するルートで歩くと、より一層平安時代の雰囲気を感じられるはず。古都・京都だからこそできる、エアートリップをお楽しみいただけたら嬉しいです!