しつけにコツがある?「京都のフクロウの森」のフクロウが穏やかで触れ合える理由とは
日本

自他ともに認める大の動物好き。犬猫にまつわる本やコラムも書く私が、ちょっと前から気になっている店があります。それは各地で急速に店舗数を増やしている「フクロウの森」。聞くところによると、世界中の珍しいフクロウたちと触れ合えるというのです。京都に新しい店が出店したと聞き、さっそく行ってみました。

フクロウのいる場所は商店街のど真ん中!?

それにしても驚くのはそのロケーション。商店街のなかに店があるというのです。

阪急京都線・河原町駅から2~3分ほど歩くと、新京極商店街があります。ホントにこんなところにフクロウがいるのかな?

しばらく商店街を歩くと、たしかにフクロウのイラストの看板が出ています。

矢印をたどると「美松会館」に到ります。「フクロウの森」と書かれていますね。「ヒョウ猫の森」も隣接しているようですが、今回はフクロウに特化したいのでヒョウ猫は次回にでも。

ここが入り口……?

入口を発見! まるで遊園地のアトラクションのようなつくりです。河原町、商店街、雑居ビルと続き、この入り口を見た時点でかなり微妙な気持ちになっていました。ペットショップ風室内で、ケージに入れられたフクロウが切なげに鳴いていたらイヤだなあ、なんて。

とはいっても百聞は一見に如かず! とりあえず入ってみましょう。

店内は別世界!まるで森の散歩道みたいです。

入って驚きました。そこには柔らかい光のもと、美しい森が広がっていたのです。フクロウという猛禽類を扱っているのに、動物臭がほとんどしないことにも気づきました。

入館料を払い、スタッフさんから説明を受けます。フクロウには手の背中で触れること、首やおなかは嫌がるので避けること、そして休憩中とカードの掲げられた子はスルーすることなどを伝えられました。最後に手指をシュッと消毒したら、さあ入場です!

時間は無制限!フラッシュ無しならカメラ撮影もOK

店内の滞在時間は無制限。撮影もフラッシュをたかなければOKです。ふと見上げるとお昼寝中のメンフクロウがいました。あまりにも静かで、背後の森にとけこんでいるので、気づきませんでした。

映画のワンシーンのような光景です。

シロフクロウです。触れるかな。

映画「ハリーポッター」でおなじみのシロフクロウがいました。
第一印象は、可愛いというより神秘的。この子ならではの、強い個性も感じます。

最初はにこやかな顔つきだったのですが、触りたい私が、手をヒラヒラ出したりひっこめたりしていたら、

見て、この目! この口。煮え切らない私の態度にイラッとしたのでしょう。軽く威嚇してきました。さすがに怖くって触れず。

トトロみたい!シベリアンワシミミズクです。

少し歩くと、ふわふわっとした後姿を発見しました。

トトロみたいな顔立ちだったら、今度こそ触れるかも!

ふり返ったその顔は、トトロどころかハンターの顔でした。シベリアンワシミミズクです。凶器のような爪も気になります。しかし今度こそ、よしよしをしたい!

一瞬、視線がよそに離れたすきに、そっと触れました。
さらさらの美しい毛並み、大感激です。
よしよしよし!
 
フクロウたちの毛並みは良くなめらかです。「ふん、触らせてやってもいいよ」という感じで超然としています。私が興奮したり何度も触れたりするとギロっとにらみますが、それでも逃げようとしたり大きな声で威嚇したりは絶対にしないのです。
 
正直、このしつけの良さには驚きました。我が家の小さな文鳥でも、機嫌が悪い時や、知らない相手が近づいてきたりすれば大げさに騒いで下手するとかみつきますから、猛禽類のフクロウがここまで力を制御し、しつけられていることにビックリしたのです。いったいどんなしつけと教育をしているんだろう?

厳しいしつけは逆効果!忍耐と協調のフクロウ教育とは?

そんな私の質問に答えてくれたのは、京都店の赤山直矢店長です。
店長のお話しによると、フクロウに、強いしつけや厳しい訓練は逆効果だというのです。

アカアシモリフクロウ。訪れるゲストをじーっと凝視してきます。吸いこまれるような、ひとみ。
 
「フクロウに不自然な馴らし教育をすると、すさまじく反発します。そしていったん僕への信頼を失ってしまうと、次から僕が近づいただけで羽を広げて逃げようとしたり、とにかく手がつけられなくなるんです」なるほど、飴とムチじゃあ、ムチ教育はぜったいにダメなのが、フクロウなんですね。

生体のすぐ近くには種類や生息地などを書いたパネルが。
 
店長いわく、幼少期から手でエサを与えて育てつつ、ひたすら時間をかけて、この店を訪れるゲストたちは安全であり、危害を加える存在ではないとフクロウたちに実感させるしか方法はないといいます。だからこそ、休憩中のフクロウにはゲストが触れないよう配慮するなど、人間の側もマナーを徹底する必要があるんですね。
 
それにしても猛禽類のフクロウが、ここまでゆったりと静かなことは驚きでした。

フクロウのあしもとにあるのは、トイレ。
ときどき静寂のなかで、ぼっとん!と大きな音が響きます。

お昼寝中のメンフクロウがいました。


こっくりこっくり、穏やかに寝てます。メンフクロウさん。
シェイクスピアの舞台衣装のような羽。さわりたいっ。

触れたら一瞬だけ目をあけて、また静かに眠りに落ちました。

超然として人に媚びない、フクロウの魅力

しっぽを振って近寄ってくる子犬、身をすり寄せてくる猫たち。彼らは愛や反応を欲するので、触れ合う私たちにもリアクションや責任感が生まれます。しかしこの森のフクロウは、私たちに何も求めません。サービスなく、愛嬌なく、ひいきなく、誰にも分け隔てなく、媚びないのです。

静かに佇み、ただフクロウと見つめ合うゲストたち

あまり近づきすぎない、親しくなり過ぎないがモットーという赤井店長
 
店長、赤山直矢さんは動物取扱主任者です。彼もまた、フクロウとの熱いスキンシップを客に見せたりはしません。抱っこしたり顔を近づけたりといった姿をゲストに披露することはなく、遠くから客とフクロウをじっと見守るという姿勢でした。そして、一見怖そうなフクロウのなかにある、不思議と人を寛がせるパワーをもっと知ってほしい、そう笑顔で話してくれました。

ジャンボ!大きなカラフトフクロウもいます。


最長では80センチ台もあるというカラフトフクロウ。大きな動物の多くがそうであるように、とても穏やかで落ちついていました。
 
噂の「フクロウの森」は、人とフクロウが森のなかで静かにむきあう不思議な空間でした。帰宅して写真を整理していると、子供からボクも連れていってと熱心にお願いされましたが、私は、興奮して走り回るであろう幼児を連れて行く場所じゃないなと感じました。
 
あの森はやはり、町の喧騒から離れてちょっと自分と向き合いたい、大人のための癒しの森のように思えるのです。

京都のフクロウの森
電話番号 075-708-3847
営業時間 11:30 ~ 19:30
【入場料】大人:600円(中学生以上)、小人:400円(4歳~小学生)、3歳以下無料(要保護者同伴)
※ひょう猫の森との共通券あり 大人:1,300円、小人:900円

この記事を書いた人

菅原こころ

菅原こころ取材ライター

取材ライター。同志社大学文学部卒。広告代理店の製作ディレクターを経て独立。戦争、宗教、芸術、政治など、人の祈りや欲望が生み出すいろいろな現象世界に興味がある。「柴犬まるのワン若心経」(星雲社/リベラル社)など本も執筆。

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