白鳥が暮らす美術館、DIC川村記念美術館をご存知ですか?
ここでは現在「レオナール・フジタとモデルたち」という展覧会が行われています。
自然豊かな敷地内の大きな池に暮らす白鳥たちは、白く細い線で描かれたフジタの絵画作品のイメージとぴったり。そんな美術館の自然と共に、展覧会で私が特に気になった作品を取り上げてご紹介します。
画家からの手紙
第1部では、渡仏先からフジタが妻の「とみ」に送った手紙・絵葉書など貴重な資料が展示されています。興味深いことに、洋裁教師のとみのために、フランスのファッション誌を送ってあげていたんですね。手紙もまめに書いていたようで、ある手紙の結びには「又々出すよ、すぐ出すよ」と書かれていました。
面白いのは、フジタ本人のキメ顔のポートレートや、街で見かけたパリジェンヌの服装のスケッチ、辛口コメントを書き込んだ雑誌など。きっと本人もオシャレ好きで、ファッションチェックを欠かさなかったのだろうと思いました。
レオナール・フジタの名前や作品がすぐに思い浮かばなくても、マッシュに丸眼鏡のこの風貌に見覚えはありませんか? 今の日本にいてもお洒落だと思います。本人のポートレートの中には白髪マッシュ姿の物もあり、カッコいいです……!
展覧会後半にはフジタが収集していた古いテキスタイルも展示されており、ここでもファッションへの興味関心が伺えます。
魅惑の初期作品
「乳白色の下地」で名高いフジタですが、そのスタイルを確立する以前の小作品も素敵でした。
1917年に描かれた《ダンス》という作品。
3人の女性が笛を吹き踊る様子が描かれた水彩の作品です。女性たちの顔や手、地面に配された岩の表情にハーフトーンの美しい日本画のような雰囲気をたたえつつ、服装はパリの風を受けたかのようなモダンなもの。腰につけたスカーフにセンスが光ります。ぜひ実物をご覧ください。
画家とモデル
今回の展覧会は、描かれたモデルたちの人物像にも注目です。
パンフレットの表紙を飾る《アンナ・ド・ノアイユの肖像》。
黄色のドレスの模様、レースの細やかな描き込み、そしてまっすぐ見据える視線から、繊細なものが積み重なってできたこわれそうな強さが感じられます。この作品のモデル、ノアイユは詩人。
「私たちはふたりとも天才です。この絵もいずれルーヴルに飾られるでしょう。」この言葉は彼女のものです。このほか作品の両脇にはフジタとノアイユのやりとりが文章で示されていたのですが、フジタも閉口してしまうくらい、強烈な女性だったようです。肖像画は未完ということですが、すでに感性豊かなモデルの内面が表されていたように思いました。
アート熱は外に出てからも。
企画展、常設展も堪能し、ほくほくした気持ちで外に出ると、これまた見事な景色。
可憐なホトトギスの花。
コロンと丸く生えた葉の中からすっと伸びるススキの仲間。
屋外展示も。
15時過ぎでしたが、レストランでは見た目も美味しい食事もいただけました。
大変な混雑もなく、1日中ゆっくり楽しめるのが魅力でした。モミジの紅葉は11月下旬から12月にかけて楽しめるそうです。
秋のお出かけに、いかがですか?