前回の記事:無人の波を求めて 〜ギリSurf Trip vol1〜 – tripro VOICE
事前の話によると、高速船にて4時間でギリに着くということだった。インドネシアという国の大きな傾向として、いろんなものが大変に大雑把というか、おおらかというか、いい加減というふうなのだ。
ようするに、何事においても予定通りにはいかないということだ。
ボクの暮らす家の目の前の船着場から、ギリ往きの高速船が出るのは朗報だった。サーフボードは意外なほどお荷物なので、移動は楽なほうがいい。旅の相棒Mikiから「船は8時半に出るよ」と聞いていたので、その10分前には待ち合い場に着くように家を出た。
旅だー、久々の旅だー、とヨロコビつつ船着場に行ってみるが、どうも乗客の姿が見当たらない。Mikiも姿を現さない。
お、どーゆーことだ??心配になり、Mikiに電話してみるが出てくれない。寝坊か?本格的に心配になり、ソワソワし始めたときに電話が鳴った。
Mikiからだ。
「どこ? 寝てた?」
「オキテタヨ。トイレしてた。」
「おいおい、大丈夫? 8時半に出るっていってたけどもうすぐ9時だよ。」
「ダイジョーブヨ。」
あくまでも軽い呑気な声色だった。まあ大丈夫ならいいんだけど。気持ちを切り替えて、船着場の沖合に目をやってみた。
ここには珊瑚の棚で、水深が浅くなっている場所がある。そこにウネリがぶつかると、波が切り立ちやがて崩れる。
そこがサーフィンに適した、いわゆるサーフスポットとなっているのだ。しかもこのスポット、世界的に有名なサーフスポットとして知られている。サーファーでなくても名前くらい聞いたことがあるはずの、サーフィンのワールチャンピオン『ケリー・スレーター』でさえ、何度もこの場所を訪れている。
そこにまた大きなウネリが弾けた。
地元のサーファーたちが、その大波に向かっていく光景を眺めながら、今から向かう『ギリ』へと思いを馳せた。
ギリではどんな波がボクらを待っているのだろう。
胸の高鳴りを抑えることができなかった。
Mikiが姿を現し、悪びれる様子もなく「パギ〜(おはよう)」と言いながらバナナを差し出してくる。朝食を取っていなかったので、ありがたくいただいた。
船のスタッフが何やら大声で叫んでいる。どうやら船の準備が整ったようだ。
さあ、ギリに向けて出発だ。