前回の記事はこちら:無人の波を求めて 〜ギリSurf Trip vol3〜 – tripro VOICE
我々はギリ3島の中でもっとも小さいギリ・アイルを寝床に選んだ。
理由は簡単だ。
アイルの波がスバラシイという噂を聞きつけていたからだ。
あくまでの波至上主義。
我々サーファーというのはそういう生き物なのである。
太陽が傾きかけたころにアイルに上陸し、すぐに波を探してみたがこの日は残念ながら潮が引きすぎてしまっていてサーフィンができるコンディションではなかった。
潮が引いてしまうと海面の所々から岩が剥き出しになりサーフィンをするには危険であった。こういう時は自然の流れに合わせて行動するのが一番だ。海に入れないのであればビンタンビールでも飲みながらのんびりと時を過ごすほかない。
砂浜は果てしなく白く、空はどこまでも青かった。
浮かんでいる雲が少しずつ形を変えていく様をいつまでも飽きずに眺めることができた。ぼんやりと過ごしているといつの間にか夕暮れ時を迎えていた。徐々に色を濃くしながら色彩を変化させていくギリの夕焼けは息を飲むほど美しかった。なんだか地球に生まれきて本当によかった、などとややスケールの大きな思いが浮かんできたりしたのだった。
翌朝、旅の相棒Mikiに「ケイ、波アルヨ。ハヤクイクヨ」と体を揺すられた。彼の興奮した様子から波が素晴らしいことを悟ったボクは素早くサーフィン用のトランクスに履き替えサーフボードを抱えてビーチに向かった。波はアウターリーフと呼ばれる沖合の珊瑚の棚でブレイクしていた。1kmほど沖合で波が弾けている様子が肉眼でもはっきりと確認できた。
いかにもサーフィンをするには適した波の崩れ方をしていた。
はやる気持ちを抑えつつボートにサーフボードを積み込んでサーフスポットへ向かった。「ボートよ、早く走れ走れ」と心の中で叫んでいた。
ボートにはボクとMikiの他にも数人のローカルサーファーたちが乗り込んでいた。彼らとは前夜にアルコールセッションをしていたのでもう十分に打ち解けた関係になっていたのだ。波が近づいてくると誰からともなく「ひゅーひゅー」と歓喜の声を上げた。ボクも合わせて「ひゅ〜ひゅ〜」と声を鳴らした。
美しい波が無人の海で弾けていたのだ。
すぐにボートからサーフボードを海に落とし、波に向かってパドルアウトした。『バレル』と呼ばれる波のトンネルに何度も体ごと包まれることができた。
波は最高であった。
世界のサーフアイランドと言われているバリ島で暮らし日々そこでサーフィンしているボクにとってもギリ・アイルの波は特別であった。他にサーファーの姿がなかったので我々は仲間たちで波を分け合い、最高な一時を過ごすことができたのだった。
ギリ3島にはそれぞれにサーフスポットがあり、初級者から上級者までが楽しめるサーフアイランドだ。しかし波はコンスタントとは言えず、外洋からのウネリがしっかり反応したときにのみその本領を発揮するということだった。
今回の旅ではサーフィンの神様が我々に微笑んでくれたようであった。