栗城史多(登山家)の旅路。「SLUSH ASIA」にて

(Photo by Slush Media from Slush Asia)
空港から海外に旅立つ人々。
その胸には、一人ひとり様々な想いがある。
2015年9月、成田国際空港から飛び立つであろう登山家・栗城史多(32)。
彼のプレゼンテーションを目の当たりにして心が震えたので、実際のプレゼンテーションで使われた動画をご紹介しながら、その様子をお伝えしたい。

起業家向けイベントに登山家が登壇

栗城さんは、2015年4月にアジアで初めて開催された世界最大級のスタートアップ(起業)イベント「SLUSH ASIA」のステージに登壇した。
起業は、よく登山と喩えられることが多い。
私自身起業家であり、登山も好きなのでその理由はよく分かっているつもりでいたのだが、彼の話を聞いてそれをさらに実感した。



(Photo by Jussi Hellsten from Slush Asia)
ちなみにこの「SLUSH ASIA」というフィンランド発のイベントは、ビジネスパーソンだけでなく、一般の人々も楽しめるイベントとなっている。
世界最先端のテクノロジーを使った製品のデモが行われていたり、ベンチャー起業家のプレゼンテーションコンテストが行われているので、会場の熱気を感じるだけでも刺激的。
屋台も多数出ており、参加者は思い思いにビールやワインを飲みながら楽しんでいた。

(Photo by Petri Artturi Asikainen from Slush Asia)

エベレストに4回挑戦、全て失敗。

登山家・栗城史多さんの名前を知っている人は多いだろう。
単独無酸素というスタイルで、標高8,000m級の山を次々と登頂。
だが、まだ彼が登れてないのが世界最高峰の山「エベレスト」。
4度目の挑戦で、両手・両足・鼻の計10ヶ所が凍傷となり、結果的には両手の指を9本切断。
このプレゼンテーションでも、その壮絶な挑戦の痕が見て取れた。
栗城

しかしここからが彼の強さ。
靴紐が結べないほど指は損傷してしまい、登山家としては絶望的という状況でも、彼は登山家であることを諦めなかった。
2年後の2014年、標高8,000mオーバーのブロードピークに単独無酸素で登頂し、見事登山家としての復帰を果たす。
その時の動画がこちら。時間のない方は2分55秒あたりから見て欲しい。

逆境からの挑戦、そして成功。
その想いは、画面を通じても十分に伝わる。

「夢はゴールではない。スタートだ。」

「夢はゴールではない。スタートだ」
こう語る彼の眼差しは、エベレストの頂上を見据えているように見えた。
2015年9月、彼は単独無酸素かつ生中継で5度目の挑戦をする。

旅とはなんだろう。
非日常であることか? 新しい文化や見たことのない風景を目にすることだろうか?
私は、感じたことのない感情を通して、新しい自分に出会うことだとも思う。


例えば彼は、5度目の挑戦でどんな自分に出会うのだろう。
空港は、そんな人々の期待や不安でこれからも満ち満ちているだろう。


〈付記〉
プレゼンテーション後、場所を変えて行われたSLUSH CAFE(Q&Aセッション)での一コマ(筆者要約)
ープレゼンテーションを終えて
 「英語でのプレゼンテーションはエベレストよりも高い山でした(笑)」
ー登山中辛いときは?
 「苦しみといかに友達になれるか。成長させてくれてありがたいという感謝の気持ちを持つ。」
ー下山を決断するときは?
 「気持ちが楽しめなくなったとき。山の事故は登山家の精神的な要因が多い。」
ー今後の目標は?
 「火星にある、太陽系で1番高い山に登りたい。」


ブラボー!

この記事を書いた人

甲斐 考太郎

甲斐 考太郎Orange株式会社 代表取締役

85年宮崎生まれ。旅によって人生を大きく変えられた経験から、旅が世界中の人々を幸せにすると確信している。この人生は、旅のことだけしかしないと決めています。旅先では、川を見つけたら季節に関係なく必ず泳ぐ。好きな色はオレンジ。特に、インターナショナルオレンジ!

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