止血・制汗・匂い消し。全部できるイタリアの「謎の石」とは?
イタリア

イタリア ミョウバン

突然ですが、欧米人って、髭が濃い人が多いですよね? 欧米から東南アジア、インドあたりのひとも濃い。髭が1本1本硬そうな人が多い。あれって、日本人のように電気カミソリでチョチョっと髭剃るレベルではないような?

イタリア人も顔も濃いけど髭も濃い! 南イタリアのおばちゃんなんか髭みたいなの生えてる人もいるし。イタリア男たちは毎朝、シェービングクリームを塗って、T字のカミソリで髭を剃るらしいのです。毎日大変そうだな……おや?あれは何?? 見つけてしまったのです。髭剃る洗面台にちょこんと置いてあった透明な奇妙な石を。

透明な石の正体は?

その前に、イタリア男と髭の関係

ローマ帝国時代、ローマ人達は髭は剃るか短く整えられていたと言われています。帝国以外の人たちは蛮族(=単数形barbariバルバリ、単数形はバルバロbarbaroとなる)と呼ばれていました。バルバロは辞書でも、1.(古代ギリシャ・ローマから見て)異国の 2.異民族の、非人間的な と書かれています。イタリア語でバルバは髭のこと。

古代ローマ人にとって帝国外の人である蛮族は髭を生やして野蛮なイメージがあったのです。理容室のことを英語でバーバーといいますが、ラテン語のbarberから来ているそうです。

ローマ帝国時代は髭は野蛮なイメージ。しかし現代、イタリア男達の髭人口が増える傾向にあるそうです。イタリアの新聞レプブリカ紙によると、スポーツ選手をはじめとして「体毛を脱毛する男達」が増えている中で「髭」だけは流行っているとのこと。特にイタリア人の男性は、薄毛になるとバッサリ坊主頭にするのですが、髭を生やしている人が非常に多くなってきています。

洗面台に光る謎のクリスタルの正体

朝の洗面台。現代的なスプレー式シェービングフォームや、ここ10年で刃の数が恐ろしく増えて最後は5枚刃まで進化した未来的デザインになったT字カミソリと並んで、そこだけ昔から時が止まってるかのように置かれている奇妙な石。

水晶のような透明なその石の名は、アルーメディロッカ(allume di rocca)もしくはアルーメディポタッシオ(allune di potassio)。日本語ではミョウバン、もしくはカリウムミョウバンと呼ばれています。
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日本人男性の多くはひげ剃りの際、電気カミソリを使っている人が多いと思いますが、イタリア人の硬毛はスッキリ剃れない人が多いらしく、シェービングフォームとカミソリで丁寧に剃るほうが好まれるようです。その際、ちょっと失敗した切り傷の出血を瞬時に止めるのがこのミョウバンの役目です。

使い方は、ミョウバンを水で濡らし、数秒傷口にあてるだけ。あっという間に止血することができます。

長い歴史の中で

イタリアにおけるミョウバンの歴史は古く、ローマ時代から布の染色の際の色止め剤や、防腐剤、皮なめし剤として使われていました。ポンペイ遺跡からは皮なめしに使われた場所からミョウバンが使われた形跡が残っているそうです。メソポタミア、エジプト、ギリシャが産地だった為、遠方から運ばれる非常に高価な輸入品のひとつでした。

しかし、ルネッサンス時代1480年ローマ北部近郊のトルファでミョウバン鉱脈が発見されます。当時は、トルファはローマ教皇の独占で巨万の富を得ることができました。しかも、当時輸入していたものより遥かに上質だったと言われています。特に羊毛業が盛んだったフィレンツェにとって、染色のためミョウバンを手に入れることは重要な意味がありました。

採れたミョウバンは、炉に入れて焼き、水に入れ不純物を沈殿させます。不純物を取り除いた溶液を加熱し、水分を取り除いて結晶化させたものがミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム)になります。ちなみに、トルファのミョウバン鉱脈は1941年に閉鎖となっています。日本でも、「明礬温泉」がありますね! 国が違ってもミョウバンと人間の関わりは昔からあったのですね!

女性には、制汗剤としても! 色々万能な使い方!

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ミョウバンは、男性が止血のために使うものだけではありません。制汗剤や、匂い消しとしても使われ、殺菌効果も高いのです。ローマ帝国時代も匂い消しに使用されたとされ、「世界最古のデオドラント」とも言われているようです。足の臭いや、加齢臭などの体臭が気になる方、汗かきの方にも使えます。

使い方はカンタン。水で濡らしたミョウバンを汗をかきやすい脇の下や気になる部分にあてるだけ。その他、手についたにんにくや玉ねぎ、魚の臭いなども消せるそうです。濡らしたミョウバンを肌に塗ることで蚊が近づくのを防ぐことも! 使用後は風通しの良いところで乾かして下さい。粒状にしたミョウバンを小さなカップに入れて冷蔵庫に入れておけば匂い消しになると書かれています。

実際に買ってみましょう!

コスパの良さが半端ない!

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写真は、ご協力いただいたフィレンツェの1561年創業の歴史あるサンティッシマアンヌンツィアータ薬局のもの。塊のミョウバンは良く見たら全部形が違いますが、価格は塊も、容器入りも値段は同じ8ユーロとなっています。

古代からのイタリア人が使う「ミョウバン」。髭剃りの後、男性が止血のためだけでなく、制汗剤や、匂い消しとしても使われ、殺菌効果も高いのです。しかも塊のものはたくさん使っても全然減りません!コスパ最高のイタリアのミョウバンをぜひお土産に持ち帰ってみては?こちらでは昔から扱っている商品だそうです。

こちらのお店からの注意で、使用後の塊のミョウバンは石鹸台などの上に置くこと。よく乾かすまでは、大理石や花崗岩でできた洗面台の上に直接放置しないことと言われました。
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他のメーカーのものでしたらイタリアの普通の薬局にも置いてありますし、もっと小さなリップクリームのような容器のスティック状のものもあります。とにかく、複合塩の大きな塊みたいなものなので使っても全然減らない。コスパの良さは他に類を見ない、しかもゴミも出ない! 広い意味でもエコなデオドラントとなっています。

これから、汗をかくシーズン、ちょっと変わった、見た目パワーストーン?なイタリア土産としていかがでしょうか?見た目が石なので、プレゼントする方には必ず使い方を説明してあげてくださいね!

全然減りませんよ

ローマ人って、お風呂に入ったり、アカスリしたり、匂い消したり、髭は剃るか短くしたりと、結構おしゃれな人々だったようですね。今よりも進んでいたこともあるようで、現在のイタリア郵便よりもローマ時代の郵便のほうが早かったと言われています! 確かにイタリア郵便は世界的に見ても遅いような……
ミョウバン、コスパどころか全然減りません。おみやげに面白いと思いますよ。サンティッシマアンヌンツィアータ薬局はフィレンツェ大聖堂のすぐ裏にあります。

この記事を書いた人

ゆきとさな

ゆきとさなフィレンツェ県公認ガイド

旅行業界で20年以上働いています。旅行の度にコロコロシステムが変わるイタリアですが、できるだけ最新の情報を心掛けます。歴史と魅力が沢山の国イタリアに来て下さいね!

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