これは勇者の剣では?岩に刺さった聖なる剣が実在する修道院がある
イタリア

世界中から観光客が訪れるイタリア。その見どころは、ガイドブックに載っている所ばかりではありません。

今回ご紹介するのは、廃墟やファンタジーの世界が大好きという方に特にオススメの、サン・ガルガーノ修道院です。サン・ガルガーノ修道院の特徴は、屋根の無い廃墟のような独特な雰囲気。そしてそのすぐ近くにある不思議な「聖なる剣」です。

外国人観光客があまり行かない、知る人ぞ知るスポットをご紹介します。

イタリア人観光客が多い場所

イタリアには世界中から観光客が訪れる国際的観光都市があります。いつも外国人がいっぱい。

でも、サン・ガルガーノ修道院は観光客の多くがイタリア人。日曜日に訪れたからでしょうか、駐車場だけでなく道端にも多くの車が駐車してあり、ツーリングのバイクもずらりと並んでいました。

イタリア人が多い理由には、公共交通機関では不便な田舎なので車が必要なこと、日曜日に海や田舎に行くイタリア人にとってちょうど良い場所であること、散歩やピクニックも出来、カフェ、バールがあることが考えられます。

実際に、サンドイッチ等を持参してピクニックをしている人もいました。もちろん、外国人観光客もいますが、車で旅行するヨーロッパ人か、個人でレンタカーで来ている人のようで、団体のバスなどはいませんでした。

駐車場から歩いて5分。遠くに教会が見えてきます。麦畑にぽつんと現れる廃墟がサン・ガルガーノ修道院です。上記写真の右端の森のあたりが農場風のレストラン・ホテルになっています。

屋根のない修道院の秘密


サン・ガルガーノ修道院は1218~1288年にシトー会の修道士達によって作られた、トスカーナ州の初めてのゴシック様式の修道院です。この場所が選ばれたのは、近くに川が流れ、耕せる平野と森があり、他の地域に行くための交通の便もあったからでした。

ところが、1329年に飢饉、1348年にペストの大流行、その周辺も当時の傭兵達からの略奪被害にあいました。15世紀の終わりには修道士達はシエナへと移り住みます。その後、1786年には雷が落ち、鐘楼と屋根が崩落してしまいました。

屋根がないから、美しい


1789年にはスコンサクラート(=神聖な用途に使うべき物や場所を俗事に用いること)されています。

これは密教の仏像の「魂入れ」「魂抜き」ととても良くにていますね。イタリアには修道院に限らず街中の教会でも、「魂抜き」されて、コンサートや、イベント会場として使われている場所が少なくありません。

サン・ガルガーノ修道院では結婚式も行われるようです。スコンサクラートされているので、日本人もロマンティックな結婚式ができそうですね。
(基本的にカトリックの教会では信者以外だと難しく、新郎新婦の片方がカトリックでも、もう一方は多くの教義を受けなければならないため)

日本の時代だと鎌倉時代の廃墟がそのまま残っている稀有な場所です。教会の開口部から見えるイタリアの青い空が印象的です。

観光客は写真を撮ったり、芝生で昼寝したり、散歩したりとのどかな雰囲気です。

モンテシエピの丘には不思議なサン・ガルガーノ剣が!


サン・ガルガーノ修道院から田舎道を歩いて10分。丘の上にはエレモ・ディ・モンテシエピがあります。エレモとは修道士などの世俗から離れて暮らす隠者の暮らす場所のことです。

ぶどう畑をぬけて丘の上まで上がると横縞模様の円筒形の建物が見えてきます。この円筒状の建物は礼拝堂になっており一見モダンにも見えますが1181~1185年に建てられた古いものです。建物の四角い部分は14世紀に増築された部分です。

ここはサン・ガルガーノ(聖ガルガーノ)の人生の最期を過ごした場所とされています。

サン・ガルガーノとは、この近辺にあるシエナ県の田舎キューディーノに、1100年代中頃に生まれたカソリックの聖人です。世俗では騎士だったガルガーノが天使聖ミカエルから啓示を受け、剣を捨て岩に刺したとされています。

つまり、騎士の象徴である武器の剣を捨てて、平和へと改宗した意味があるとされています。

この剣が、この礼拝堂の真中に保存されており、透明なドーム状のカバーを通して見ることが出来ます。剣の周囲は写真を撮る人々でいっぱいでした。

その礼拝堂の奥の部屋には奇妙な箱が飾られていました。ミイラ化した人間の手のようです。

伝説によると、1181年、聖ガルガーノが巡礼に出かけている最中に、彼を妬む3人の修道士がこの剣を引き抜いて壊してやろうと企みます。

しかし、神の罰により1人は川で溺れ、1人は雷に打たれました。最後の1人は狼に腕を噛まれ引きずられたものの、聖ガルガーノに助けられたと言われています。この腕は聖ガルガーノに助けられた修道士の腕とされています。

近年行われた研究調査によると、この腕は聖ガルガーノと同時代のものであることがわかりました。なんとも不思議なお話ですね。

映画の舞台にも


その美しさと独特な雰囲気から映画のロケ舞台にも使われています。
・アンドレイ・タルコフスキー監督 ノスタルジア(1983)
・アンソニー・ミンゲーラ監督 イングリッシュ・ペイシェント(1996)


外からでも美しいですね!

行き方とインフォメーション

ローマから車で約3時間余り。修道院から歩いて5分のところに無料駐車場があります。

公共の交通手段は、ローマから列車やバスでシエナまで移動した後、シエナからバスで行くことができます。サン・ガルガーノ行き帰り時刻表。ただし、時刻表によると殆ど半日に1本といった程度。

教会の横にホテルが一軒のみあり、レストラン・カフェ(小さなお土産も売っています)を併設しています。公共の交通機関を利用するなら、こちらのホテルに1泊してサン・ガルガーノの夜を楽しみ、次の日の朝に移動するという方法もあります。

サン・ガルガーノ修道院
Localita San Galgano, 53012 Chiusdino SI, イタリア
入場料は3.5ユーロ(2017年5月現在)
12月から3月まで9:00から17:30。
(4、5、10月は~18:00 / 6、9月は~19:00 / 7、8月は~20:00)

モンテシエピ
9時から日暮れまで。毎週日曜日11:30からミサを行っています。
詳しくはこちらのキューディーノ市HPでお確かめ下さい。

この記事を書いた人

ゆきとさな

ゆきとさなフィレンツェ県公認ガイド

旅行業界で20年以上働いています。旅行の度にコロコロシステムが変わるイタリアですが、できるだけ最新の情報を心掛けます。歴史と魅力が沢山の国イタリアに来て下さいね!

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