東京の有名な高級住宅街、田園調布の隣町の東急池上線の御嶽山駅。駅前にはスーパーや昔ながらのお団子屋さんがひしめき合う景色が広がっていますが、他とは違うところが1つ・・・なんと駅前スーパーには、霊水がこんこんと湧き出ているのです! その真横に鎮座するのが御嶽神社。こちらは山岳信仰の神社ということもあり、堂々としたたたずまいから厳粛な空気が漂っています。・・・というわけで今回は、大田区指定文化財に指定された壮麗な彫刻や本殿裏の不思議空間など、見どころいっぱいのパワースポットをご紹介します!
スーパーに湧き出る「御嶽の霊水」とは!?

五反田と蒲田を結ぶ東急池上線の御嶽山駅を下車し、五反田方面のホームにある改札を出ると、そこは人と自転車がひっきりなしに行き交うアットホームな商店街。少し左へ歩くとスーパー・イオンスタイル御嶽山駅前が見えてきます。何の変哲も無い町のスーパーなのですが、これこそ正にいにしえの時代から湧き続ける霊水スポットなのです!

スーパーの前には隙間無く自転車が停められているので、何とかすり抜けるようにガラス張りの壁へ向かうと・・・ありました! 「御嶽の霊水」と表示されています。
現代的なデザインで底には水草に戯れるように金魚が泳ぐ姿も見られ、オシャレなモニュメントのような趣。
気になるお水も透き通っていて、都会のスーパーとは思えないくらい清らかな印象。(飲用水ではありません)

説明書きによれば、現在イオンがあるこの土地は19世紀当時は田ノ原屋という御嶽神社門前のお店だったそうです。そしてその主人が参拝に訪れる信者の禊ぎのために築いた井戸水が、現在でも枯れることなく湧き続けているのだとか。
当時この井戸水で禊ぎを行った信者から「この水は霊験極めてあらたか」と評判になり、近隣からお水取りにやってくる人も増えたことから「御嶽の霊水」と呼ばれるようになりました。200年近い時を経た現在田ノ原屋はスーパーに替わったものの、この霊水が神社の崇敬者や地元民の手で脈々と大事にされてきたのが伝わってきます。
●御嶽の霊水
東京都大田区北嶺町32-14
霊水の水源「御嶽神社」とは?

御嶽の霊水―その源を探るとお隣の御嶽神社に行き着きます。ここで一つ社名について注意が必要です。「御嶽神社」は読み方から2種類に分かれており、今回ご紹介の御嶽神社は「おんたけじんじゃ」と読み、岐阜県と長野県境にそびえる御嶽山(おんたけさん)を中心とする山岳信仰の神社を意味します。他方で「御嶽」を「みたけ」と読むのは、東京都青梅市の御岳山(みたけさん)山頂の「武蔵御嶽神社」を指しています。
どちらも山岳信仰由来の神社ではありますが、それぞれ系統と読み方が異なっているので区別できればあなたもパワースポット通の仲間入り。

東京都大田区の御嶽(おんたけ)神社は、1535年頃小さな祠を起源となり、1831年には木曽の御嶽山で修行した一山(いっさん)行者により増加した信者の力もあって、現在の立派な社殿に改築された歴史があります。当時の地名にちなんで「嶺の御嶽神社に三度参拝すれば、木曽御嶽山へ一回行ったのと同じ」とまで称されるほど有力な神社に成長しました。
【ご祭神】
・国常立尊(くにのとこたちのみこと)
・大己貴命(おおむなちのみこと)
・少彦名命(すくなひこなのみこと)

ご祭神については御嶽神社の公式HPには明記されていませんが、神社庁のサイトや諸々の情報源から判断して、総本山の木曽御嶽神社の主祭三神と同一と考えて問題ないでしょう。
【ご利益】
・耕作豊穣・子宝・開運
・知恵・才能授与
・長寿・病気平癒
・魔除け・厄除け
●御嶽神社
東京都大田区北嶺町37-20
見逃し厳禁! 本殿裏の装飾

山岳信仰の神社らしく堂々たるたたずまいの拝殿でお参りを済ませたら、必ず本殿裏へ回りましょう。本殿には1831年に宮大工・藤原篤意の手で彫られた和漢の物語・故事にちなんだ彫刻が施されており、躍動感あふれる仕上がりは一見の価値ありです。

彫刻は儒教の9つの美徳「鎮・義・仁・智・信・忠・礼・孝・悌」がモチーフとなっており、一枚ずつ意味を考えながら見ていくのも美術館感覚で楽しいです。
境内のパワースポットはここ!

そして、気になる御嶽神社のパワースポットですが、外とはがらりと雰囲気が異なるため、境内一帯が神域になっているというのが筆者の印象です。中でも注目すべきは「杜の霊神水」と「霊神の杜」でしょうか。
杜(もり)の霊神水

杜の霊神水は社殿の左後ろ側に残されている古井戸ですが、木曽御嶽山で修行後この地で布教活動を進めた一山行者が水行を行った場所と伝えられています。冒頭の御嶽の霊水ともつながり、神域で湧き出て、神域を守護する水として2008年氏子の方々の手により再整備されました。

御嶽神社に限らず神社を流れる水は結界の役割を果たすと同時に、境内を清める作用があるように思います。参拝の際にはぜひこちらも立ち寄ってみてください!
霊神の杜

本殿裏に小さな鎮守の森が広がっています。森の中には木曽御嶽山長崎稲荷大明神に加え、30基ほどの霊神碑が立ち並び、一般の参拝客の立ち入りが禁じられていることも手伝ってかこの空間の異世界感がとにかく強いのです。

木曽御嶽山の形状をモチーフにしたレイアウトと言うことで、まさに木曽御嶽山信仰のエッセンスが凝縮された場所なのでしょう。

他にも水行堂の龍の彫刻も迫力がありますし、一山行者をご祭神とした「一山神社」なども御嶽神社の見どころなので、ゆっくり時間をかけて参拝したい神社ですね。
お団子屋さんでお腹も心も満たされる!

山岳信仰の厳かなエネルギーが都内だと忘れるほどの別世界を創りあげている。そんな御嶽神社ですが、参拝の後には甘いもので小休止というのはいかがでしょうか。駅前のお団子屋さん「だんごのたかの」では種類豊富なおだんごのみならず、アイスクリームも購入可能。季節に合わせて体が求めるスイーツを気軽にゲットできます。ちなみに私はみたらし団子とさくらあんのお団子2本平らげてしまいました・・・
霊水と森に守られ、山の神様のエネルギーを都内で感じられる御嶽神社は、山の神社が大好きだけど、なかなか木曽山中まで足を運べない方にもオススメです!